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平成19年9月 第2289号(9月26日)

筑波学院大のオフ・キャンパスプログラム
   つくば市がキャンパス社会力育成教育 -2-

筑波学院大学OCP推進室社会力コーディネーター 武田直樹

 筑波学院大学(門脇厚司学長)の教育目標は、「社会力」豊かな人間を育てることである。社会力とは、誰からも好かれ、社会の役に立ち、社会作りやその運営に積極的に貢献できる力である。同大学では、社会力を育てるために、学生一人ひとりを様々な社会参加活動に参画させ、学生は社会の動き等を学ぶ。この取り組みは、オフ・キャンパス・プログラムとして、文部科学省の現代GPにも採択された。この取り組みについて、同大学社会力コーディネーターの武田直樹氏に寄稿してもらった。

 前回、実践科目として説明したOCPは、「多様な仕組み」の中で機能しているからこそ、より効果的な取り組みが可能となっている。二回目はこの多様な仕組みについて説明することとしたい。
 《OCP取り組みに当っての仕組み作り》
 1. つくば市との連携協定の締結
 つくば市をキャンパスに学生が社会参加活動を行う上で、つくば市の理解と協力なしには、円滑なOCP運営はままならない。そのため、平成十七年五月に本学とつくば市が「筑波学院大学とつくば市との連携に関する協定」を締結し、OCPの活動を行うに当たり協力を得、つくば市の各部署の活動にも学生が参加できる体制を整えた。
 2. NPO法人つくば市民活動推進機構との連携協定の締結
 学生の受入れに関する協力先探しや、市民活動団体で学生が社会参加活動を行うに当って、大学の持つ繋がりや、ノウハウだけでは、学生のニーズに十分に応えきれない。そのため、市民活動に関する外部アドバイザーとして、つくば市を中心とした市民活動団体を中間支援する目的で設立されたNPO法人つくば市民活動推進機構(通称「つくばEPO」/平成十七年十月設立、平成十八年一月認証)と平成十八年五月に連携協定を締結した。なお、つくばEPOの代表理事には、大学とつくばEPOとの連携を密にして行うために、本学の門脇学長が就任した。
 これまで、つくばEPOには、受入れ団体の開拓や調整、オリエンテーション時の出前講座、マッチング時のデータベース作成のための団体ヒアリング、後述するOCP学生スタッフに対するアドバイス等の面で協力をいただいている。
 受入れ団体の開拓に当っては、社会力コーディネーターの繋がりや教員が外部団体と協力して立ち上げたプロジェクト、学生自ら探してきた団体のみならず、つくばEPOの協力が非常に大きく、昨年度は九六もの団体が学生受入れの協力に賛同して下さった。
 そのほとんどが任意団体やNPO法人格を持つ、いわゆる市民活動団体であった。他にも、つくば市の各部署や、つくば市を拠点とする財団法人、独立行政法人等の行政機関、社会貢献に力を入れている民間企業、教育機関、筑波大学のクラブ・サークルからも協力をいただいた。
 また、活動エリアは本学が位置するつくば市が中心となったが、中にはつくば市以外の茨城県南地域や、学生の実家のある県央地域(水戸市周辺)、県西地域(古河市)、さらには福島県の会津若松市にまで及んだ。その中で、一年生は三八団体、二年生は四九団体、合計七〇団体(延八七団体)で活動し、学生は受入れ協力団体の約三分の二の団体で活動を行った。
 つくばEPOは、本学に対するこのような協力も一助となって、議会での承認を受け、平成十九年四月から、つくば市の指定管理者としてつくば市市民活動センターの運営を行っており、本格的に市民・大学・行政が一体となった取り組みが実現し始めた。なお、本学の学生二名も、市民活動の勉強も兼ねた非常勤スタッフとして運営に関わっている。
 3. OCP推進室の設置
 OCPを全学的な取り組みとして、迅速な決断の下、プログラム運営していくためにOCP推進室を設置した。OCP推進室長を学部長が兼任し、二名の学科長、学務課長を含む八名の教職員に、社会力コーディネーター三名を加えたメンバーで構成されている。
 また、学生の視点からプログラム運営に意見を反映させるために、OCP学生スタッフを編成し、現在二五名の学生スタッフが活動に取り組んでいる。
 なお、OCP推進室での決定事項は、必要に応じて、担任会議や教授会で報告し、承認を受け実行に移している。
 3―1. 社会力コーディネーターの採用
 OCPの実施に当たり、一番重要なことは、本学の教育目標である「社会力の豊かな人間」を育むために、学生の興味や関心に応じた社会参加活動を行うことのできる最適な受入れ団体との橋渡しを行うことである。但し、この橋渡しを学内の教職員だけで行うことは非常に困難である。そこで、この橋渡し役を担う「社会力コーディネーター」を業務委託契約として採用した。OCPでは一年生から三年生までが三年間に亘り、必修科目として実践科目A、実践科目B、実践科目Cを行うため、数百人の学生と約一〇〇に及ぶ受入れ協力団体との間を橋渡し、更に、数十人の担当教職員との調整を行う必要がある。そのため、OCPがスタートした平成十七年四月から一人目の社会力コーディネーターとなる西機真氏が、平成十八年六月から筆者が、平成十九年四月から高橋優子氏が順次加わり、現在は三名の社会力コーディネーターが役割分担をしながら、業務を行っている。
 社会力コーディネーターの役割は、大きく以下のようにまとめられる。
 @学生の興味や関心を把握し、受入れ団体の発掘・調整を行い、両者のマッチングを行う。
 A学生がOCPの意義を理解し、活動に対してより高い動機付けを図るために、学生に対するオリエンテーションやガイダンスを計画し、実施する。
 B学生の活動に対するモニタリングを行い、必要に応じて、アドバイスやフォローアップ、受入れ団体との調整を行う。また、活動中間時と活動終了時にふりかえりの場を設定する。
 C教育プログラムとしてのOCPをより良いものにするために、改善に向け提言する。
 D学生の活動状況を共有し、クラス担任・担当教員や担当職員との調整を行う。
 EOCPに関する学生の活躍を学内外へ広く情報発信するための広報・宣伝活動を行う。
 FOCP学生スタッフに情報提供やアドバイスを行い、活動を支援する。
 3―2. OCP学生スタッフの編成
 学生の主体的な参加がOCPには不可欠である。そのため、学生の視点からプログラム運営に意見を反映させるために、平成十八年十月からOCP学生スタッフを編成し、現在二五名の学生スタッフが活動に取り組んでいる。
 学生スタッフは、OCPのより良い推進のために欠かせない存在となっているが、以下の三つのチームで構成されている。
 @「企画・運営チーム」:プロジェクトの企画立案や運営を行う。
 A「コーディネートチーム」:地域と学生の橋渡しを行う。
 B「広報チーム」:OCPに関する学生の活躍を学内外へ広く情報発信する。
 各学生スタッフは、いずれかのチームに属しながらも、必要に応じてチームを横断しながら活動を行っている。まだ発足して一年足らずであるため、試行錯誤を繰り返しているが、これまで、主に以下のような活動に取り組んできた。
 学生スタッフ全体としては、二回の研修会(筑波大の野外施設を利用してのチームビルディング研修、つくばEPOの協力の下、平成十九年度の目標設定のためのワークショップ)と平成十九年七月に行った現代GPフォーラムでの交流会の主催が大きな成果である。
 また、各チームとしては、これまで、主に以下の成果がある。
 @企画・運営チーム:平成十八年度の実践科目A・実践科目Bに対する学生アンケートの実施(作成・実施、データ分析、学生への公表)、現代GPフォーラムの交流会の企画立案・実施
 Aコーディネートチーム:約一五団体・イベントでの活動を通した研修、また、つくばEPOに同行し、約二〇団体に対してマッチングシステム作成のためのヒアリング実施
 B広報チーム:地元新聞紙への活動記事連載(平成十九年八月末現在、二二回)、OCPプロモーションビデオの作成、現代GPフォーラムのためのOCPロゴ及びポスターの作成
 4. 地元新聞社との連携
 地元新聞社と連携し、平成十八年十月から毎月二回隔週で、学生の活動発表の場、OCPの広報・宣伝の場として、学生のレポートを中心にOCPに関する記事を定期的に連載している。学生の活動が学外に広く報道されることで、学生のモチベーションアップに大きな効果を挙げていることは言うまでもない。
 5. 社会力診断テストの実施
 学長自ら、学生の社会力の程度を測定するため「社会力診断テスト」を開発し、入学直後、二年次終了時、卒業直前の計三回実施し、教育の効果を数値で示すことができるようにした。
 6. OCP外部アドバイザーによるパネル会議の実施
 つくば市、教育機関、受入れ団体、つくばEPO、社会貢献に力を入れている民間企業、地元新聞社等の方々に、OCPの外部アドバイザーを依頼し、平成十八年十一月から三ヶ月に一回の頻度でパネル会議を実施しており、OCP推進のために様々なアドバイスや意見をいただいている。(つづく)

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