平成19年9月 第2288号(9月19日)
■新刊紹介
小さな塵の大きな不思議 ハナ・ホームズ著 岩坂泰信監修/梶山あゆみ著
息を吸うたび、何千という塵の微粒子が体に入っていく。鼻の奥の迷路で止まるもの、のどに張りつくもの、または大切な肺の奥深くまで入り込むものもある。
塵はあまりに小さく、つかまえにくいため、正確なu数はいまだに把握できていないが、砂漠からは、一年で一〇億から三〇億トンの砂塵が巻きあげられている。海からは三五億トンもの塩のかけらが、また植物も一〇億トンの有機化合物を吐きだす。プランクトンから、または火山や沼地から漏れだす硫黄化合物のガスは、二〇〇〇万から三〇〇〇万トン。
山火事で草木が燃えたり、火山が噴火したら、火山灰はどれだけ飛びちるだろう。生物の塵はどうだろう。さらに一億トンもの硫黄酸化物が石炭や石油などを燃やすことで生じている。自動車などからは窒素酸化物のガスが一億トン以上も立ちのぼり、硫黄酸化物の場合と同じように細かな粒子となって空を漂う。
また塵には、地球とその住人の健康を脅かす一方で、人間や動植物の役にも立っているその不思議さで人をとりこにする塵もたくさんある。
同書は、こうした塵の謎に興味を抱いたサイエンス・ライターが「塵の科学最前線」をまとめたもので、小さな塵が宇宙や地球の歴史と深く関わっていたばかりか、今も地球や人間をめぐる意外とも思えるほどの多くの事象と関連していることを教えてくれる。
小さな塵の大きな不思議
四六判 四三二頁、定価二九四〇円(本体二八〇〇円+税)、発行所(株)紀伊國屋書店出版部、TEL:〇三―五四六九―五九一九。