平成19年9月 第2288号(9月19日)
■20年度科研費 公募要領等の説明会開催 研究種目など制度改正中心に
体制整備等の実施報告書など
文部科学省は、去る九月十三日、東京・千代田区の日比谷公会堂において、「平成二十年度科学研究費補助金(以下、科研費)公募要領等説明会」を開催した。公募に係る制度改正のほか、諸手続、不正使用等の防止及び繰越、更に「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」に基づく体制整備等の実施状況報告書(十一月十五日提出)についても説明した。従来は各地区ごとに開催されていたが、今回は東京のみの開催となり、全国から千数百名が参加して行われた。
初めに、研究振興局の磯貝桂介学術研究助成課長が「科研費は本来、研究者の自由な発想に基づく研究に対するものであり、早急に成果を競うものではない」と述べるとともに、「懐の深い研究を目指して欲しい。但し、不正使用等で社会の批判を受けて科研費全体に悪い影響を及ぼすことのないように」と管理の充実も訴えた。また、よりよいシステムに向けた制度改正も行っていること、平成二十年度の予算要望額は対前年度二六二億円増であることなど、科研費をめぐる動きについて語った。
次に、同課企画室から「科研費制度の概要及び平成二十年度公募に係る制度改正」について説明が行われた。
科研費の位置づけ、予算額の推移、応募件数と採択件数の推移、拡充と改革等を概説し、公募に係る制度改正のポイントを解説した。
〈制度改正のポイント〉
(1)系・分野・分科・細目表の改正=五年ごとに改正しているもので、五年目に当たることから、現行の二七八細目から六細目増えて二八四細目に充実。
(2)研究種目の見直し=@「特定領域研究」の研究領域、「学術創成研究費」、「研究成果公開発表(A):シンポジウムの開催」については新規募集を停止。A「基盤研究戟vにおける応募総額の引き上げ:五〇〇〇万円以上一億円程度まで↓五〇〇〇万円以上二億円程度まで(これまで「特別研究」との差が大きかったので上限を引き上げ)、B「基盤研究(A・B・C)」の研究期間の延伸:二〜四年間↓三〜五年間(こま切れでなく安定的支援を行う観点から)、C「若手研究(S)」における応募総額の目安を明記:一億円程度まで↓概ね三〇〇〇万円以上一億円程度まで(下限を設定)
(3)研究分担者の在り方の見直し=@「研究分担者」の定義を明確化:(ア)研究代表者と協力しつつ、研究遂行責任を分担して研究活動を行う者で、補助金適正化法上の補助事業者に該当。(イ)分担金の配分を受ける(ただし、研究代表者と研究分担者が同一研究機関に所属する場合には、分担金の配分は生じない)。(ウ)研究代表者や他の研究分担者が不正な使用等を行った場合は、応募資格の停止(交付対象からの除外)の対象となる。A新たに「連携研究者」を位置づけ=(ア)研究代表者及び研究分担者の責任の下、研究組織の一員として研究計画に参画する者(応募資格を有する者でなければならない)。補助金適正化法上の補助事業者には該当しない。(イ)分担金の配分を受けられない。(ウ)研究代表者への交替は認められない。(エ)研究代表者や研究分担者が、不正な使用等を行った場合であっても、応募資格の停止(交付対象からの除外)の対象とならない(当人が共謀した場合を除く)。
(4)応募書類について
「研究機関の公的研究費の管理・監査のガイドライン(平成十九年二月十五日通知)に基づく体制整備等の「実施状況報告書」を提出することを応募要件化する。この「実施状況報告書」は十一月十五日に文科省へ提出しなければならない。その後、書面による確認及び現地調査(原則的に資金配分の多い大学等で実施など)を平行して行う予定である。
なお、「実施報告書」の内容については、十月初旬に開かれる委員会で決定され、文科省科学技術・学術政策局調査調整課から通知される。また、「実施報告書」の構成は、@ガイドラインに沿った内容を記述する、A根拠規程等(添付資料)、B全体的な傾向等の分析の基礎資料となる取組状況整理票でまとめることが考えられている。
その他、今後、平成二十年度へ向けて制度改正を予定している事項についても次の三点を解説した。
(1)研究種目の新設
従来の「特定領域研究」と「学術創成研究費」を発展的に見直し、新興・融合領域や異分野連携などの意欲的な研究を推進することにより、革新的な学術研究の発展を促すことを目的とする研究種目として、「新学術領域研究(仮称)」を新設する方向で科学技術・学術審議会で検討中であり、「新学術領域研究(仮称)」には、従来の「特定領域研究」のメリットを活かした「研究領域提案型」と課題単位で従来の細目の範疇に収まらない挑戦的な研究提案を支援する「研究課題提案型」の区分を設定する。なお、平成二十年度予算案の編成及びそれに関する国会審議等の状況を踏まえつつ公募する。
(2)評価の充実及び評価結果を踏まえた支援(平成十九年十二月頃通知予定)
@原則として、全ての研究種目において、三年目に自己点検による中間評価を実施し、評価結果をインターネット上で公開する。A現在、中間・事後評価を実施している大型の研究種目において、両評価を統一し、研究期間の最終年度の前年度に課題評価を実施する。B「特別推進研究」において、研究期間終了後三〜五年目程度に研究成果等に関する追跡調査を試行的に実施する。
(3)研究成果報告書の見直し(平成十九年十二月頃通知予定)
「研究成果報告書(冊子体)」を廃止する。「研究成果報告書概要」を充実させた新たな様式を提出させ、インターネット上で公開する。
その他、「科研費の不正使用等の防止及び繰越」、「平成二十年度科研費の公募」などについても説明した。