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平成19年9月 第2287号(9月12日)

大学図書館司書主務者研修会開く 大学図書館の教育力を考える

  メインテーマ 大学図書館における教育活動

 開会式では、同協会副会長・中国四国支部長の石田担当理事より、地方の私立大学は定員割れに悩みながらも地域におけるそれぞれの役割を担っている現状と、大学においてアカデミズムの香りを発するのは図書館であり、図書館が教育研究のためのサービスを提供し大学全体を牽引する力をもつことが、これからの地域における大学の強みとなるとし、この機会に参加者の理解と結束が強まるよう期待するとの挨拶があった。
 また、今年度で同委員を退任する吉村委員長からは、三二年間担当してきたこれまでの歴史を振り返りながら、館長主務者研修会から始まり、司書研修会に主務者を加えて行う現在の研修会のかたちになった経緯、図書館員が書誌に通用するようにという研修から、大学図書館のコンピュータ導入による機械化対応の研修、ニューメディアへ移行するにあたっての影響が協議されるという時代の流れを説明した。さらには一八歳人口の減少など私学の多様な問題に取り組むという現状を各人が踏まえた上、大学図書館の在り方を考え、司書の立場をそれぞれがしっかり確保するように激励し、最後に参加者にお礼を述べた。
 研修に入り、最初に広島経済大学経済学部准教授の濱田敏彦氏による「芸備地方の歴史〜『海』からの視点〜」と題する記念講演が行われた。今回会場となった広島を中心とする瀬戸内地域の歴史と、海運の盛衰、「潮の流れを読む者が時代の流れをも読む」ともいえる、まさに「海」からの視点に立って史実を裏付ける印象深い話だった。
 続いて同協会の小出秀文事務局長より、「私立大学を取り巻く諸情勢と今日的課題」について詳細な解説があった。
 かつてIT化をすれば図書館は教育研究施設として大変高度なものになると思われていたが、eラーニングなどに対応できるのか、図書館の相互協力などの諸課題はどうなったのか、まだ課題は多く存在し、大学の心臓部たる大学図書館の今後の活躍に期待したいと締めくくった。
 基調講演では、大阪教育大学名誉教授・日本図書館協会理事長の塩見 昇氏が「大学図書館の教育力について考える」と題して、大学と大学図書館の在り方について、図書館蔵書を使った授業を行うこと、IT環境に対応した設備を整え、ディスカッション用のスペースを提供すること、カリキュラムへの積極参加、などを図書館が取り組むことにより研究と教育に奉仕する機能を果たしていることをあげた。
 初日を締めくくる情報交換会が夕刻より行われ、参加者は和やかな雰囲気の中、親交を深めた。
 研修二日目は、メインテーマ「大学図書館における教育活動」に基づき、三つの事例報告と班別研修が行われた。
 事例報告の一つ目は、「大阪工業大学図書館の展示・講演会活動から〜図書館は大学のDNAである〜」と題して大阪工業大学図書館事務室長の勘川捷治郎氏が、機関リポジトリーの形成、博物館的要素を取り込むこと、安らぎの場としての役割を担ってもよいのではないか、など同大学図書館としての取組の根底にある考えを述べた。
 続いては、「神戸女子大学図書館における『チャットルーム』の取り組み」と題して、神戸女子大学図書館課長の平井陽子氏より学生と社会人とのコミュニケーションの場を図書館が提供するという取組について報告があった。
 このチャットルームでは、社会人のゲストを招いてゼミ形式・講義形式で学生の社会教育の場を提供している。
 事例報告の最後は、「追手門学院大学附属図書館における『宮本 輝ミュージアム』」と題して、追手門学院大学附属図書館事務長の川ア昭一氏より、ミュージアムの企画を通してマスコミなどに働きかけ、図書館が直接外部とのつながりをみせるようになる過程について紹介があった。
 「宮本 輝ミュージアム」は社会連携活動の一環として、OBである作家の宮本 輝氏の全著作や愛用品を展示・一般開放しており、同氏とともに発展するミュージアムと位置づけている。ミュージアムを核として企画展の開催や講演会などを行うことで地元の茨木市および商工会議所との協力体制を図ったことや、伊丹市との協力関係を結び出張ミュージアムを展開するなど、積極的に図書館自らが外部に働きかけている取組の様子が語られた。
 昼食の後に、「大学図書館における外部資金の活用〜文部科学省関係各種補助金のあらまし〜」と題して、文部科学省高等教育局私学部私学助成課助成第一係長の西村敏信氏より、私学助成を中心に大学図書館が活用できる文科省の各種補助金について解説があった。
 また、大学全体の取組に参画しているのであれば、図書館として補助金を申請することもでき得るということで、参加者からは多くの質問が寄せられ、予算申請に大いに関心が集まった。
 二日目までの研修のまとめとして、日本医科大学図書館事務室長・教育推進室の殿ア正明副委員長から、図書館員として競争的資金を積極的に取りにいく姿勢が大事であり、これからの活躍に期待したいと研修を総括する挨拶があった。
 休憩をはさんで、大学図書館の管理運営と実務について六班別れての班別研修が行われ、二日目の日程が終了した。
 研修最終日は、広島経済大学図書館の視察研修も行われた。班別に図書館内からメディア情報センター内の情報機器・スタジオなどを見学し、研修のすべての日程を終了した。

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