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平成19年9月 第2286号(9月5日)

[新刊紹介]
  昭和教育史  天皇制と教育の史的展開 久保義三 著

 同書は旧版の構成を一新し、第一章「大正デモクラシーと教育の再編成」をはじめ、第三章「天皇制ファシズム教育を支える社会的基盤」、第四章「軍部の教育支配系列」、第七章「教育制度改革と戦時体制」、第一一章「占領軍と教育改革」、第一四章「高度経済成長下の学校と教育統制の強化」等の新増補分との対比で、国家政策と教育との相克・矛盾を鮮明に抽出している。
 第一章では、昭和の教育の在り方に、大正デモクラシーと呼ばれた日本近現代史の稀有の時代に展開された教育遺産がどのように継承されていったのかを明らかにする必要があった。第三章では、教員の団体である帝国教育会や県教育会が存在し、活発な活動を行った。旧著『日本ファシズム教育政策史』で論じたものが主となっている。第七章では、教育審議会の答申のなかに、国民学校令の施行規則において、第一学年にのみに限定され、そして名称も綜合授業に変更してしまった実際について述べている。第一一章では、イデオロギーの源泉である教育勅語は天皇の分身で、それらは占領目的の遂行に役立つと判断された。こういった側面の分析は、戦後教育改革の性格を規定するうえで、重要であるとしている。第一四章では、経済の成長に伴って大学等への進学率が上昇し、それによって経済成長が一層促進される循環過程が繰り返され、経済界が教育に要求し、それが政策に反映された教育行政の方向は、教育基本法が示す教育の在り方に歪みを与えたと記述している。
 これら増補分のほか、随所に加筆・修正が加えられている。

新版昭和教育史 ―天皇制と教育の史的展開
 A5判 全16章 1,232頁
 定価 本体18,000円(税別)
 発行所(株)東信堂
 TEL:03-3818-5521

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