平成19年９月 第2286号（９月５日）
■イノベーション柱に人材へ投資 科技・学術政策、研究振興、研究開発局
1面に記載の通り、文部科学省は八月末に、平成二十年度予算概算要求を財務省に提出した。科学技術・学術三局は、本年六月に閣議決定された「イノベーション25」等による科学技術の振興を目指し、次世代の人材への投資の充実・強化や基礎研究の充実と研究環境の整備、国家機関技術等の着実な推進を重点的な柱としている。主要事項の概要は次のとおり（カッコ内は前年度予算額との比較増減）。なお、項目には再掲・一部再掲も含まれる。
成長力の強化―「イノベーション25」等による科学技術の振興―
1、次世代を担う人材への投資の充実・強化
一、次世代を担う若者への理数教育の充実 一一五億二六〇〇万円（二八億五九〇〇万円）
○概要：次世代の科学技術関係人材育成に向け、子どもが科学技術に親しむことができる環境の充実と、理数に興味・関心の高い子どもの能力を伸長する効果的な環境を提供する理数教育の充実を図る。
▽理数好きな子どもの裾野の拡大：理科支援員等配置事業 三〇億円、理科教育等設備整備費補助 二〇億円
▽理数に興味・関心の高い生徒・学生の個性・能力の伸長：スーパーサイエンスハイスクール 一五億六〇〇〇万円、未来の科学者養成講座【新規】 二億円、国際科学技術コンテスト支援 三億九二〇〇万円、理数学生応援プロジェクト 二億五〇〇〇万円
二、大学における人材育成機能の強化と産学が協働した人材育成 一一一二億四四〇〇万円（三八七億六六〇〇万円）
○概要：大学院教育の抜本的強化や世界的な卓越した教育研究拠点の形成、人材養成面での産学官連携の強化などで、社会ニーズ対応の人材養成を行う。
▽大学における人材育成：大学院教育改革支援プログラム 八五億九七〇〇万円、グローバルＣＯＥプログラム 四六九億五八〇〇万円、原子力人材育成プログラム 二億四三〇〇万円
▽産学が協働した人材育成：産学連携による実践型人材育成事業 九億九〇〇万円、先導的ＩＴスペシャリスト育成推進プログラム 九億四八〇〇万円、地域産業の担い手育成プロジェクト 一一億二二〇〇万円
三、イノベーション創出の担い手となる若手・女性研究者等への支援の強化 一〇二九億四七〇〇万円（二七四億四一〇〇万円）
○概要：若手・女性・外国人研究者など多様な人材が能力を最大限発揮できる環境を整備する。
▽若手研究者等の活躍促進：優秀な博士課程学生への経済的支援の充実 一五一億三二〇〇万円、イノベーション創出若手研究人材養成プログラム【新規】（科学技術振興調整費） 三〇億円、若手研究者の自立的研究環境整備促進（科学技術振興調整費） 八四億円、「若手研究」等の充実（科学研究費補助金） 四〇三億五一〇〇万円、戦略的創造研究推進事業（さきがけ） 八六億四七〇〇万円
▽女性研究者の活躍促進：女性研究者支援モデル育成（科学技術振興調整費） 一四億円、出産・育児等による研究中断からの復帰支援（特別研究員事業） 四億四〇〇〇万円
▽外国人研究者の活躍促進 六七億一四〇〇万円
四、科学技術に関する理解と意識の醸成 一〇六億五一〇〇万円（一九億五〇〇〇万円）
○概要：国民に分かりやすく親しみやすい形で科学技術を伝え、対話を通じて説明責任と情報発信を強化する活動を推進する。また、国民が適切な判断の下に行動していくことができるよう、科学技術に関する基礎的知識や能力向上に資する取り組みを推進する。
▽地域の科学舎推進事業 九億八二〇〇万円、▽国立科学博物館 四九億一二〇〇万円、▽日本科学未来館 二八億五九〇〇万円
2、基礎研究の充実と研究環境の整備
一、学術研究の振興
（ⅰ）大学・大学共同利用機関等における独創的・先端的基礎研究の推進 一五三五億八〇〇万円（三三六億九六〇〇万円）
○概要：研究者の自由な発想に基づく、世界をリードする研究成果を生み出す基礎研究を推進する等。
「スーパーカミオカンデ」によるニュートリノ研究の推進、アルマ計画の推進、大強度陽子加速器（Ｊ―ＰＡＲＣ）計画の推進、「大型ヘリカル装置」による核融合科学研究の推進
（ⅱ）科学研究費補助金の拡充 二一七四億八一〇〇万円（二六一億八一〇〇万円）
（ⅲ）人文・社会科学の振興 一一億三一〇〇万円（一〇億二八〇〇万円）
○概要：人文・社会科学分野において、政策的・社会的ニーズに対応した研究を推進し、豊富な学術資料やデータ等を有する組織のポテンシャルを活用し、国公私立大学を通じた共同利用・共同研究拠点の整備により当該分野の新興を図る。
近未来の課題解決を目指した実証的社会科学研究推進事業【新規】 四億八五〇〇万円、世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業 一億四〇〇〇万円、▽人文学及び社会科学における共同研究拠点の整備の推進事業【新規】 五億六〇〇万円
二、競争的資金の拡充等による研究開発の推進 四五二〇億円（八二九億六〇〇〇万円）
▽競争的資金の拡充：科学研究費補助金 二一七四億八一〇〇万円、戦略的創造研究推進事業 五三八億七二〇〇万円、科学技術振興調整費 四二三〇億円、グローバルＣＯＥプログラム 四六九億五八〇〇万円
▽研究費の効果的・効率的運用の一層の徹底：研究費の適正な執行に係る指導等を強化するための体制整備 二二〇〇万円、府省共通研究開発管理システムの運用 四億二四〇〇万円
三、産学官連携などによるイノベーションを生み出すシステムの強化
（i）世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラムの推進 九一億六七〇〇万円（五六億六七〇〇万円）
（ⅱ）基礎研究からの技術シーズの創出 六四五億七二〇〇万円（一一五億八六〇〇万円）
○概要：基礎研究の成果からイノベーションの種となる技術シーズを創出するため、実現可能性よりも独創性を重視した研究を推進する制度を整備する。
戦略的創造研究推進事業 五三八億七二〇〇万円、未来挑戦研究（ハイ・ターゲット研究）【新規】 一〇億円、先端融合領域イノベーション創出拠点の形成 九七億円
（ⅲ）産学官連携の戦略的な展開 三一一億一〇〇〇万円（九八億八九〇〇万円）
▽産学官連携戦略展開事業【新規】―四八億三九〇〇万円、大学等の研究成果を基にした共同研究等の推進―一五〇億三八〇〇万円
（ⅳ）地域イノベーション・システムの強化 三二六億四六〇〇万円（七三億七五〇〇万円）
○概要：地域の大学等を核に、産業ニーズ等を踏まえた新技術シーズを生み出すための産学官共同研究。
▽「地域クラスターの形成」の支援 一六九億四一〇〇万円
▽地域イノベーション創出総合支援事業 一四三億八四〇〇万円
四、科学技術振興のための基盤の強化 七八二億六九〇〇万円（二五五億二〇〇〇万円）
▽特定先端大型研究施設の整備・共用の推進 四九一億一七〇〇万円
▽先端研究施設共用イノベーション創出事業 四〇億九九〇〇万円
▽先端計測分析技術・機器開発プロジェクト 一〇七億三〇〇〇万円
五、科学技術の国際活動の戦略的推進 二七六億五五〇〇万円（八六億二〇〇万円）
▽アジア諸国等との協力 四三億一三〇〇万円
▽戦略的国際科学技術協力推進事業 三〇億円
▽若手研究者への国際研鑽機会の充実 七億五六〇〇万円
▽大学国際戦略本部強化事業【拡充】 四億八七〇〇万円
3、国家基幹技術などの着実な推進
一、各分野別研究開発の戦略的推進
（i）ライフサイエンス 八二九億五三〇〇万円（一四一億九五〇〇万円）
（ⅱ）情報通信 六八三億六五〇〇万円（一八一億八七〇〇万円）
（ⅲ）環境 八九六億三九〇〇万円（一七八億一四〇〇万円）
（ⅳ）ナノテクノロジー・材料 四七〇億七一〇〇万円（一三五億九一〇〇万円）
（ⅴ）原子力 二八九五億一〇〇万円（二三一億三〇〇万円）
（ⅵ）宇宙・航空 二三五四億六五〇〇万円（五一四億六三〇〇万円）
（ⅶ）南極観測・海洋地球科学技術 六二九億四〇〇万円（一〇九億八六〇〇万円）
（ⅷ）地震・防災 三三五億一二〇〇万円（一三三億二七〇〇万円）
（ⅸ）ものづくり技術 八一億一三〇〇万円（二六億二〇〇万円）
（ⅹ）新興・融合分野 四三〇億六一〇〇万円（一三〇億八二〇〇万円）
二、国家基幹技術への集中投資
（i）宇宙輸送システム 五五七億八六〇〇万円（一七九億二七〇〇万円）
（ⅱ）海洋地球観測探査システム 四〇一億一〇〇〇万円（一八九億一三〇〇万円）
（ⅲ）高速増殖炉サイクル技術 三三〇億九四〇〇万円（三四億一七〇〇万円）
（ⅳ）次世代スーパーコンピュータの開発・利用 一九五億二九〇〇万円（一一七億九三〇〇万円）
（ⅴ）Ｘ線自由電子レーザーの開発・利用 一七七億五七〇〇万円（一〇二億八四〇〇万円）
三、安全・安心に資する科学技術の推進 三〇八億九二〇〇万円（一三四億七五〇〇万円）
