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平成19年8月 第2284号(8月8日)

科学館・博物館の特色ある取組みに関する調査

 文部科学省科学技術政策研究所(木村 良所長)ではこのほど、科学館・博物館の特色ある取組みに関する調査―大人の興味や地元意識に訴える展示及びプログラム―の結果を発表した。
 同調査では特に科学技術に関心の低い層を喚起し、サイエンスコミュニケーションを活性化する観点から、@地域の特色を活かした展示・プログラムの実施状況とA大人を対象とした展示・プログラムの実施状況を中心に調査を行った。
 全国の六二三の博物館・科学館に対して調査を行い、三六八館から回答があった。概要は次のとおり。
 (1)、回答館の六六・三%の館が既に何らかの「地域の特色を活かした取組み」を行っている。
 最も取りあげられているテーマは、展示・プログラムの両方とも地域の自然、動物、植物、昆虫など、自然に関するものだった。
 一方、展示やプログラムであまり扱われていないテーマは、生活に使用されている科学技術、地域の科学者、医学だった。今後、博物館・科学館で扱うテーマには、日々の生活に関連する科学技術の内容を充実させていくことが期待されている。
 (2)、博物館・科学館の八〇%以上の館が大人を主要な来館者と考えている。
 自館を大人向けの施設として認識している館は全体の三一・三%で、大人・子どもの両方の施設としている館は、五二・二%だった。両方を加えると、回答館の八三・五%の館が大人を主要な来館者として位置づけている。科学館は子ども対象のものであるという通念とは異なり、博物館・科学館側の意識は必ずしもそうでないことがわかった。
 大人を呼ぶために工夫している主な要素は、@時間の調節、Aオーダーメイド企画、B誰れにでもアピール度の高い要素、C季節に合った企画、Dユニークなテーマ、E来館者のニーズに合ったテーマ、Fボランティア制度、G周辺施設(駐車場、託児所、空間演出など)。これまで子どもに効果的だとして導入されてきた「ハンズオン」の手法は、大人の興味を引く手法でもあった。
 (3)、日本独自のタイプのサイエンスとアートの融合が進んでいる。
 今後のサイエンスコミュニケーション活性化を進める上で、重要な取組みとなるサイエンスとアート融合事例が明らかになった。そのひとつが、日本独自のタイプのアートとサイエンスの融合事例、例えば文学と鉱物(展示)は、「銀河鉄道の夜」:宮沢賢治作「銀河鉄道の夜」にでてくる岩石や銀河系を紹介、などサイエンスとアートの融合型の展示・プログラムは大人に人気がある。
 科学館・博物館において、エントランス・展示室にアート・オブジェがあると回答した館は、三六八館のうち一三三館だった。オブジェは館のコンセプトをシンプルにうまく表現しているものが多いため、オブジェを利用した展示解説やオリエンテーションの実施も科学に関心の低い層を巻き込んでいく方策として可能性がある。
 アンケート結果を踏まえた上での提案として、盆栽などの事例(東山植物園など)に見られるように日本的な「文化としての科学」を提唱し、広めていくことができそうであり、その題材は、自然科学とともに共存してきた日本文化や歴史の中にヒントを見つけられるかもしれない。大学と連携プロジェクトを組んで展示やプログラムを開発するなど、予算面や人材面を外部からサポートする仕組みも効果的である。

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