平成19年8月 第2283号(8月1日)
■地球観測でアジア連携強化を
平成20年度の我が国における地球観測の在り方
科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球観測推進部会では、このたび、「平成二十年度の我が国における地球観測の在り方」が決定された。同部会は、地球観測の推進に関する重要事項を調査審議するために発足、これまでに関係府省の地球観測等事業のヒアリングを含めて、六回にわたって同「在り方」について調査審議してきた。概要は次の通り。
第一部:地球観測の基本戦略に基づく地球観測等事業の推進
まず、限られた資源の下で効率的・持続的・効果的な地球観測を実現する「利用ニーズ主導の統合された地球観測システム」を構築するため、地球観測システムが担っている各府省・機関の相互連携が重要である。特に地球温暖化分野と地震及び火山分野に関する連携の推進が期待される。
具体的には、観測データや観測システムの共同利用・共同実施を促進したり、リモートセンシングや観測技術衛星等の観測技術の共同開発利用、データ収集・共有・提供システムの開発等が挙げられる。
続いて、国際社会における気候変動の問題に対する関心が一層高まる中、我が国は、地球観測に関する政府間会合専門委員会等の活動においてリーダーシップを発揮することが必要である。また、地球温暖化分野や生態系分野については、多くの大学において全球地球観測システムの構築に貢献し得る観測を実施している。こうした大学の観測を同システムに位置づけるため、国は同システムの普及啓発を一層進める。また、各国際観測計画や世界気候研究計画などに対して、各関係府省・機関が協力して、貢献することが望まれる。
将来、南アジア、東アジア、東南アジアの沿岸地域において風水害による被害の規模が拡大したり、東アジア酸性雨被害が予測されている。このようなアジア・オセアニア地域の間で共有する課題に対処するため、我が国は、アジア・オセアニア地域との連携の強化による地球観測態勢を確立することが期待される。
具体的には、@災害分野(リアルタイムでの現地防災機関に情報を提供できる体制整備)、A水分野(メコン川流域など観測データの空白地域の水利用や水管理観測データ収集)、B生態系分野(アジアフラックスや日本長期生態学観測研究ネットワークを構築・運用、日本とアジア地域の森林生態系を広域に観測する戦略の策定)、C農業分野(農作物の作付け、作況、干ばつ・洪水被害を早期に把握する常時監視体制を確立)、D地球観測の共通基盤(全陸域の地球地図データの普及を図り、地球地図プロジェクトに不参加の国への働きかけ)など。
第二部:各分野などにおける地球観測の推進
まず、我が国の地球観測において、@国民の安心・安全の確保、A経済社会の発展と国民生活の質の向上、B国際社会への貢献の観点から、喫緊のニーズに対応した重点的取組を戦略的に行うことが重要である。我が国における地球観測の課題は、@地球温暖化にかかわる現象解明・影響予測・抑制適応、A水循環の把握と水管理、B対流圏大気変化の把握、C風水害被害の軽減、D地震・津波被害の軽減である。続いて、我が国における基盤的研究開発と地球観測の現状と課題とし、基盤的研究開発については、観測技術及び情報技術の開発と共通基盤情報の整備の二つに整理、地球環境については、地球環境、生態系、大規模火災、エネルギー・鉱物資源、森林資源、農業資源、気象・海象、地球科学など課題を整理した。
今後は、この「あり方」を踏まえて、地球観測推進部会において、「平成二十年度の我が国における地球観測の実施方針」を作成する予定である。