平成19年7月 第2281号(7月18日)
■学生相談における全学的な取り組みについて
事務組織改編とワンストップサービスの現状と課題 −3−
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は平成十八年七月五日から七日まで、兵庫県神戸市内のホテルにおいて、平成十八年度学生生活指導主務者研修会を開催した。当日は二一一大学から三〇〇余名が参加し、「人間力を育てる」をメインテーマに講演や報告、班別討議等が行われた。本紙では岡地 功札幌大学事務局次長の事例発表「学生相談における全学的な取り組みについて」―事務組織改編とワンストップサービスの現状と課題―を三回に分けて掲載する。
一方、学生関係と国際交流関係については、別な事務長が担当していますが、担当事務長が不在のときは、私が対応しております。例えば、迷惑駐車等の苦情対応や学内での盗難等学生関係の対応も行います。
教務関係は、学部運営のため学部長及び教務委員と連携を図りながら処理し、就職、学生、システムの担当者もそれぞれの学部の仕事をできるようにしています。
各学部に配置された教務、就職、学生、システムの担当者は、それぞれ専門の業務について打合せを行いながら、作業を進めていきます。日常的な業務でない作業については、特別チームを編成し、専門領域を越えて行います。
入学式や卒業式等の大学行事は全学的な対応をしますが、そのようなことがいろいろな場面で行われます。例えば、定期試験は、試験本部班、特別試験班、レポート班、成績班等、四〇人でスケジュールや担当者を決めて対応します。
四〇人で対応することでこれまで課の応援を依頼して行っていた定期試験が学生支援オフィス内で対応できるという、すばらしい結果を生んでいます。何より良かったのは、他の部署の業務を把握でき、みんなで作業することで特定の人に業務が偏らないことだと思います。しかし、逆に仕事ができる人、頼みやすい人、信頼される人、積極的に仕事してくれる人に仕事が集まる傾向にあります。
とかく○○課は、残業が多い、という批判ではなく、仕事が見えるようになったのです。
経済学部を例に取りますと、経済学部の担当者は教務担当、学生担当、就職担当そしてシステム担当者がおります。その担当者が、横列の方にも所属しリーダーとサブリーダーを中心に業務を行っています。例えば、教務担当者は、試験、時間割、試験判定までリーダーとサブリーダーが企画を提案し、具体的に検討し、オフィス全体に係るような案件については担当事務長に相談し調整します。学生・就職担当も同様の対応をしております。リーダーとサブリーダーについては、担当者間の話し合いで決め、特に係長が担当するということも決めておりませんので、職階を越え職員がリーダーとサブリーダーとなるようなケースも出てきております。しかし、リーダーとサブリーダーには手当ては支給されません。
また、いろいろな質問に答えるためには、いろいろなポジションを経験することが重要と考えており、学生支援オフィスでは半年毎に業務の配置換えをしております。ただし、継続的な業務、例えば学部教授会担当、奨学金、教職担当者は、一年〜二年のスパーンで業務を変えております。
「学生生活をサポート」する体制を学生支援オフィス全体で網羅できないだろうかという発想で、職員全員の意識改革が最も重要と考えております。
業務は個人が独占したり専有するのではなく、業務をグループでそしてオフィス全員で処理することを目指しております。
しかし、学術情報オフィス、運営事業オフィスでは、専門業務が多く、まだマトリクスの体制にはなっておりません。
九、アイトスとは(総合学生支援システム)
旧組織でそれぞれの課で管理していた学生情報を学生支援オフィスの編成にともない、集約しなければなりませんでした。
教務課では、成績や学籍簿、学生課では、学生個人の情報、課外活動の状況や奨学金。就職課では、企業情報、就職面談情報、卒業生データ等、学生支援オフィスの職員が指導するためには、多様な情報のデータベース化、いわゆる学生個人カルテの作成が必要不可欠となりました。これらの情報を活用して、学生一人ひとりに対し「きめ細かい教育支援サービス」を提供し、個々人の可能性を伸ばすために、導入しました。
一〇、出欠確認について
本学でGPAを導入し、また成績評価方法において不合格者を試験受験者と未受験者を分けて評価したところ、不合格者に多くの未受験者が含まれていることが判明しました。また、試験の未受験者を調査したところ、授業欠席が多く試験を受けなかったことも分りました。
本学の学則では、「授業欠席時間数が授業実施時間数の三分の一を超えた者」には試験の受験資格がない、と明記されております。
しかし、授業における出欠管理は科目担当教員が行っており、厳密に学則を準用している教員は少ないのが現状であります。そこで本学は、教員とは関係なく学生自身が授業出席を管理・確認するために出欠確認を厳密に行うシステムを開発し、アイトスに連動し、その情報は科目担当教員と学生そして事務も共有することにしました。
また、学生証をICカード化しまして、学生は講義の始めと終了時に各教室に設置してあるカードリーダーにICカードを近づけ反応(非接触型)させることにしました。
このシステムは、本学独自にシステム開発メーカーを共同開発して導入しましたが、他大学でも出欠を重視する動きがあり、全国でも約五〇大学は導入していると伺いました。
さらに、神奈川県の大学では、学生証をカード式から携帯電話に変更し、その携帯電話で出欠確認するシステムを導入しています。
本学では、出欠確認のシステムを導入後、授業に出席する率は確実に高まっていますし、学生が出席にかなりシビアになり、機械の不具合により欠席になっている場合の問い合わせも多くなりましたが、その多くは機械の不具合ではなく、打刻時間を超えているケースがほとんどです。
しかし、学生証を他人に預け、代返している学生もたまに見かけますし、授業に出席するだけで単位が認定されると思い込んでいる学生もいます。そういう学生は、教室の後部に座り私語が多く、授業運営に支障をきたしているという声もあります。
一一、セミナーハウス
セミナーハウスは校友会(同窓会)が建設し、大学に寄贈されました。数年前まで海の家を保有しておりましたが、市町村の保養施設の充実とホテルが便利になり利用率も低く、特に冬期期間はほとんど使わない状況が続きましたので、廃止しました。
したがって、学生が利用しやすいという観点からキャンパス内に施設を建設ということで、大学と校友会で検討し、学内での建設に踏み切りました。各大学でも、学外に宿泊施設を保有されていると思いますが、セミナーハウスは、教職員、学生そして高校生にも開放しており、キャンパス内に建設したということもあり、利用率は非常によく大変人気があります。このセミナーハウスは、研修施設としてセミナー室と宿泊施設があり、宿泊できる収容人数は約八〇人です。
また、セミナーハウスの横には、バーベキューコーナーを作りました。これまで学内のいろいろな場所でコンロを持ってきてバーベキューを楽しんでいました。このことについては、ある程度黙認をしていましたが、火災等の関係から危ないという指摘がありましたので、バーベキューコーナーを作りキャンパス内での火気使用を禁止しました。
バーベキューコーナーは五〇人まで座れ、調理するスペースも設置してありますので、学生は食材や飲み物等を持参すると使用することができます。炭や網、鍋はセミナーハウスで貸出ししています。大変人気がありゼミ生やクラブの学生の嬉しい悩みとなりました。
さらに、このセミナーハウスは、町内会にも開放しおり、囲碁の集まり等、いろいろ使っていただいているようです。
終わりに
本学が取り組みました「学生中心の大学つくり」そして「多用な学生の対応」を行うために、事務組織全体と事務局改編を行った内容について、ご説明をさせていただきました。
この取り組みについては、やっと四年が経過しようとしており、長所と短所がまだ整理できておりませんが、本日は長所を少々過大に評価してご説明いたしました。しかし、どのような改編をした場合でも、短所はあるわけで、これがベストではなく、これから総括をして学生にとってさらに良いサービスが提供できるよう再編・成長していきたいと思っております。
ただ、四年間経験していえることは、教職員の意識改革が重要であると痛感しております。朝出勤し与えられた業務だけを行うというような指示待ちの職員は、大学には不要ですし、職場では改革をしようという雰囲気でつつまれているときに邪魔になります。
もちろん私たちは事務職員ですのでデスクワークも大切ですが、これからは学生とのコミュニケーションを積極的に行い、適格な相談やアドバイスができる教職員が必要であるといっても過言ではありません。現在の状況を打破できる大学は、学生相談や学生と真剣に相談に乗れる教職員とどれだけの時間を確保できるかが問われると思います。
学生支援オフィスでは、毎週のように勉強会を開催し、日常的な業務についてミーティングを通して意思統一を図っております。(おわり)