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平成19年7月 第2281号(7月18日)

教育学術充実協議会開く 192大学263名余が熱心に研究・協議

 メインテーマ 学士課程教育の質の確保と向上

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)の平成十九年度(通算第三五回)教育学術充実協議会(担当理事=森本正夫北海学園大学理事長、福井直敬武蔵野音楽大学理事長・学長)が、去る七月十日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷において、加盟三七四大学から一九二大学の学長を中心に二六三名が出席して開催された。「学士課程教育の質の確保と向上」をメインテーマに、「大学改革の諸動向と教育研究の発展策」と題しての磯田文雄文部科学省高等教育局私学部長からの講演をはじめ、三名の講師からの「大学等の設置認可の動向と教育の質の保証」、「学士課程教育の思想とその設計」、「教育の質の確保と向上にかかわる政策動向について」と題するそれぞれの講演の後、情報交換会が行われた。

 はじめに小出秀文同協会事務局長からの開会の辞に続いて、大沼会長が「教育基本法が改正され、それらに基づく諸々の改正が進行しております。教育再生会議では、高等教育についてどのようにするか動きだそうとしています。変革期にさしかかっているこの時期にそれぞれの大学が社会的存在を強くしていく、その基盤を築いていかなければなりません」と述べ、続いて、森本担当理事から「私立大学の教育と学術研究の質の充実を高める議論の中から同協議会が発足し今回で三五回目を迎えました。それぞれの大学の教育と研究の発展の一助となれば幸いです」と挨拶が行われた後、協議に入った。
 はじめに、磯田私学部長は、一八歳人口が平成二十年から一二〇万人台と、しばらく安定的に人口が推移するこの時期に将来を見据え、中期展望をもった経営をお願いしたいなどと述べた。さらに地方における私立大学の厳しい状況に国としての支援として、省内でコンソーシアムについて検討中であること、改正前後の教育基本法第七条の「大学」の規定で、大学の存在が社会の発展にとって、なくてはならないものという現実認識の変化が記述されていること、第八条の「私立学校」では、自主制の尊重や国及び地方公共団体の努力義務が示されたことなどについて、また、教育再生に関する特別委員会での附帯決議に関しての説明のほか、「私立大学・短期大学の入学定員充足状況」など多項目にわたって解説が行われた。
 昼食・休憩の後、「大学等の設置認可の動向と教育の質の保証」と題して、講師に永田眞三郎関西大学理事を迎えて講演が行われた。
 まず、大学改革に向けてのいくつかの政策提言として、教育再生会議等での政策提言を経緯に沿って解説し、大学・大学人としての立場から政策提言をどのように受けとめるべきか、必要な点を挙げた。教育組織のための、その中で完結する改革ばかりではなく、社会や学生のニーズをうまく取り入れる力こそ、大学改革には必要ではないかとまとめた。
 続いて、設置認可と大学の質保証のための評価の仕組み、設置認可の弾力化と問題点、対話のなかでの「大学づくり」、設置認可について検討を要する事項、新しい「大学づくり」のための視点、と近年の設置認可を巡る動向から、大学教育の質の保証問題についていくつかの事項を挙げて論じた。
 休憩の後、黒田壽二金沢工業大学学園長・総長が「教育の質の確保と向上にかかわる政策動向について」と題した講演を行い、「学士課程の在り方」など教育の質の維持向上に向けた中教審の審議動向と、大学設置基準の運用と設置認可後の質保証に関わる政策動向を踏まえての、私立大学における学士課程教育の強化策について詳細に解説した。
 これまでの学部教育(学士課程教育)政策に係る答申、提言について報告し、第三期中教審で審議された学士課程教育の現状と課題、いまなぜ「学士課程教育」か、学士課程教育の再構築に向けて(中間報告)の課題、具体的な改革方策、といった内容でとりまとめられた事項を挙げた上で、質保証システムの構築については国が実施する必要のあることや、地域におけるコンソーシアム構想の必要性について述べた。
 続いて、「学士課程教育の思想とその設計」と題して、絹川正吉国際基督教大学名誉教授・前学長から講演があった。
 絹川前学長は、講演の中で「学士課程教育」の定義を試み、この教育の源は「リベラル・アーツ」であるとした。リベラル・アーツは、基礎的学問分野の総体であり、学生がカリキュラムを作る自己教育であり、「専門科目」も教養的位置付けにする教育である。現在の日本の大学に見られるように早期に専門を固定し専門知識を獲得することではなく、基礎能力や自己形成を支援することが重要であり、具体的には初年次教育や授業評価ポートフォリオ、アクティブ・ラーニング等がある。しかしながら、こうした支援手法が「目的化」し、カリキュラムにフィードバックされていない取組事例が多いので、ディシプリン(学問領域)を基盤とする「学術基礎教育」を中核におくことが必要だ、と述べた。
 福井担当理事の閉会の辞の後は、講師を交えての情報交換会が行われた。

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