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平成19年7月 第2280号(7月11日)

学生生活指導主務者研修会を開催 学生の全人的発達を支援

「人間力を育てる」パートIIがメインテーマ

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)の平成十九年度(通算第五三回)学生生活指導主務者研修会(担当理事=高柳元明東北薬科大学理事長・学長、委員長=濱田勝宏文化女子大学理事・副学長・服装学部長・教授)が、同協会の六つの研修会のトップを切って七月四日から六日まで、静岡県浜松市の「オークラアクトシティホテル浜松」を会場として開催された。今回の研修会は同協会加盟三七四大学から二〇七大学三〇六名が参加(一般参加者の過去五年間の参加者のうち初参加が約六〇%)し、「人間力を育てるパートU」をメインテーマに報告、講演、事例発表、班別討議・情報交換など三日間にわたって熱心に研修が行われた。

 一日目は小出秀文同協会事務局長の開会宣言に続いて、小出忠孝同協会副会長(中部支部支部長、愛知学院大学学院長・学長)が、「学生に関わる多種多様な問題解決に向けて、この研修会での内容を、それぞれの大学に持ち帰り、それぞれの大学で研修会を開いていただきたいと思います」と述べ、続いて高柳担当理事が、「大学での学生生活指導の果たす役割は、年々、重要性を増しております。ぜひ心に残る研修会にしていただきたい」と開会の挨拶を行った。続いて濱田委員長から「日本私立大学協会学生生活指導研究委員会の活動報告と本年度研修会の研修目標等」について、昨年の研修会報告と委員会での検討課題及び内容について説明が行われた。
 午後からは、「私立大学を取り巻く諸情勢と今日的課題」と題して、小出事務局長から、全入時代の到来、高等教育をめぐる共通的な背景、私学団体が問題とする基盤整備の主なる課題、安倍内閣の高等教育改革について概説が行われた。この中で特に、日本の高等教育に対して、公正な教育費の支出を実現することが私学団体創立以来の重要課題であること、耐震関係の平成十八年度補正予算では国立大学・高専法人施設に一二〇八億円であるのに対し、私立学校施設には二〇億円という現実、安倍内閣の改革でのまとめ役の教育再生会議には、教育の問題は拙速を避け、現場の混乱なきよう要望していることなどについて述べた。
 次に三浦真琴静岡大学大学教育センター教授から「『育ち』と『学び』の共有」―『学生中心の大学』を実現するために―と題してSPS(Student Personnel Services)を中心に講演が行われた。
 三浦氏は学生中心の大学は『ボローニャ大学』を発祥とし、学生中心とは、学生の総合的・全人的発達を支援することでSPSといわれ、これは戦後の教育改革時にアメリカからきた考え方であるが、以前から日本の高等教育にあったこと。今、改めてSPSが大事という背景には、廣中レポート(平成十二年六月)があるが、現代の若者の一部には、青年期までに消化すべき発達課題を未消化の部分をもって入学してくる学生がいる現実を共有し、きっちりサポートすることの重要性を指摘した。
 続いて第一班から第一四班に分かれて、班別討議・情報交換が行われた。
 夕刻からは情報交換会が行われ、浜松市近郊の加盟大学(浜松大学、静岡文化芸術大学、静岡理工科大学)より学長等が駈けつけ、研修会参加者を激励し懇談を行った。
 研修二日目は、二つの事例発表と前日に引き続いて班別討議と情報交換が行われた。事例発表ではまず「ボランティア活動の実践」と題して浅野英一摂南大学外国語学部准教授から、六年前までは、地域の人々から学生マナーの悪い大学、まともな学生がいない大学との評価を受けていたが、大阪府内の公立小・中学校の要請に応じて学習支援活動を行うまなびングサポート事業に、五学部の学生が参加し子どもたち一人ひとりに責任を持って担当させるシステムを開講したこと、そのことで、現在では近隣の学校への活動のほか、青年海外協力隊員として、開発途上国で活躍するなど、教職員と学生ボランティアが数々の失敗を乗り越え、大学の主役は自信と責任感をもった大学生という地点にたどりつくまでの活動事例が紹介された。
 続いて「学生と向き合う二五の提案」―人間力を高めるために―と題して、桐山雅子中部大学学生相談室教授・臨床心理士から、「教職員は、悩んでいる学生と接するときは、話しを(1)聞く(話の内容を聞く)、聴く(耳を傾け、心を聴く)、訊く(質問する)こと、(2)相手の立場で聴く、(3)体験知からくる先入観に注意する、(4)相づち、繰り返し、質問する、(5)「なるほど」と納得する、(6)聴くこと(アドバイスより「きく」こと)などいずれも時間をかけて対応することがポイントになること。さらに話す力の育成が大切で、このことによって、考える力がつき、相手が聞いてくれると興味がでて、それが自信となることなど、体験を交えての事例発表が行われた。
 三日目は講演と事例発表が行われた。はじめに「学生支援に関する諸問題について」と題して、村田善則文部科学省高等教育局学生支援課長から「大学における学生サービス」について廣中レポートの説明や学生支援は大学全体で対応することについて述べた後、「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム(学生支援PG)」の目的等について、さらに奨学金事業の概要と日本学生支援機構奨学金の返還促進について、貸与事業は先輩から後輩へ引き継ぐ返還金で成り立っていることの説明、留学生交流関係の平成十九年度予算、さらに大学等における学生の消費者啓発の推進についてそれぞれ解説があった。
 続いて、「大学の危機管理・大学生の安全・安心」―学生の多様化がもたらす新たな危機管理の視点―と題して百合野正博同志社大学商学部教授・二〇〇四―〇六年度学生支援センター長から「大学生を取り巻くリスク」について、マルチ商法の手法としてネットワークを使ったもの、ゼミや先輩、後輩等の学生の「きずな」を利用したものや甘い言葉に乗ってしまったものなど緊迫感ある事例の紹介があった。また、多様化した学生に刺激を与える試みとして、人があるグループに所属することで生じる、他のグループとの接触機会の減少を「コミュニケーション・デバイト」と捉え、キャンパスというひとつのコミュニティを自覚的に形成していく行為を通じて、現在の大学生が共通的に抱える課題を克服させていく、大学コミュニティの創造について述べた。
 最後に閉会式が行われ、濱田委員長の総括の挨拶に引き続き、小出事務局長から六一年目の先陣にふさわしい研修会だった旨の挨拶の後散会した。

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