平成19年7月 第2279号(7月4日)
■大学分科会大学設置基準等改正案を答申
学部段階での教育力向上へ基準明確化
生涯学習分科会 制度問題小委で集中審議へ
中央教育審議会生涯学習分科会(田村哲夫分科会長)は、去る六月十八日、東京・青山のホテルフロラシオン青山において第四三回会合を開き、今後の生涯学習・社会教育の在り方について審議した。また、大学分科会(安西祐一郎分科会長)は、二十九日、東京・神田の学士会館において第六二回会合を開き、大学設置基準の改正についての諮問に対する答申案を審議するとともに、今後の大学改革の在り方について同分科会制度・教育部会の学士課程教育の在り方に関する小委員会の審議経過等が報告された。
生涯学習分科会
はじめに、改正された教育基本法を踏まえ、今後の生涯学習・社会教育の在り方の検討に際し、これまでの審議内容を整理した次の“検討の論点”が事務方から示された。
【生涯学習関連】
▽改正教育基本法の第三条に『生涯学習の理念』として「国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない」と規定されたことから「生涯学習」と「社会教育」の関係をどのように整理するか。
▽生涯にわたる学習成果を適切に生かすことのできる社会を実現するために、どのような方策を行政として民間支援の面も含めて講ずる必要があるか(理念の普及啓発、学習機会の提供、学習成果の評価・活用など)。
▽生涯学習の振興を図るための国・都道府県・市町村の役割をどのように整理するか。また、現行法の都道府県生涯学習審議会や地域生涯学習振興基本構想の意義・役割・成果をどのように考えるか。
【社会教育関連】
▽社会教育の果たすべき役割、範囲やその定義を、生涯学習、学校教育、首長部局の行う行政との関係の中で、どのように考えていくか。また、「社会の要請」に応える社会教育をどのように具体化すべきか。
▽学校、家庭、地域住民が連携し、地域住民等が学校教育や家庭教育を支援する新たな体制構築の必要性について、どのように考えるか。
▽公民館等の社会教育施設や社会教育主事の在り方について、どのように考えるか。
▽生涯学習の理念の実現に貢献する博物館の在り方について、どう考えるか。
▽博物館登録制度の在り方については、どのように考えるか。(対象博物館を拡大、登録要件に活動内容を勘案するなど)
▽博物館活動を支える学芸員制度の在り方についてどのように考えるか。
▽生涯学習の理念の実現に貢献する図書館の在り方について、どのように考えるか。
▽図書館サービスの改善方策について、どのように考えるか。
これらの主要な検討の論点に沿って全委員から様々な意見が出された上で、田村分科会長より「当分科会の下に制度問題小委員会を置き、これまで出された意見等を集中審議して取りまとめ、八月下旬に当分科会に上げていただくことにしたい」との意向を示し了承された。
大学分科会
平成十八年の大学院設置基準の改正を踏まえ、これまで学部段階でも教育力向上のための措置を講じるとともに、基準を明確にする観点から大学設置基準の見直しについては、去る五月十一日の同分科会制度・教育部会でも了承されるなど審議されてきた。
会合では、伊吹文科大臣の「大学設置基準等の改正について」の諮問に対する次の「大学設置基準等の一部改正案」が原案どおり了承され答申されることになった。
T、学部段階等の教育力向上を図るための改正
(1)大学は、教育研究上の目的を学則等に定め、公表するものとすること。
(2)大学が、一の授業科目について講義と実習など二以上の方法の併用により行う場合は、その組み合わせに応じ、授業方法ごとの基準を考慮して当該大学が定める時間の授業をもって一単位とすること。
(3)大学は、学生に対して、授業の方法及び内容並びに一年間の授業の計画をあらかじめ明示するものとすること。また、学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たっては、客観性及び厳格性を確保するため、学生に対してその基準をあらかじめ明示するとともに、当該基準にしたがって適切に行うものとすること。
(4)大学は、授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施するものとすること。
U、基準をより明確化し大学教育の質を保証するための改正
(1)大学は、科目等履修生等を相当数受け入れる場合においては、教育に支障のないよう相当の専任教員等を増加する等とすること。
(2)大学が二以上の校地において教育研究を行う場合は、それぞれの校地ごとに必要な専任教員や施設・設備を備えるものとすること(校地が隣接している場合を除く)。
(3)大学は、その目的を達成するために必要な授業科目の開設は、自ら行うものであることを明確化すること。
(4)大学は、専用の施設を有することとし、一定の条件を満たす場合に、他の学校、専修学校及び各種学校との間で施設を共用することができることとすること。
(平成十三年文部科学省告示第五一号の改正)
▽大学が、多様なメディアを高度に利用して行う授業の要件について、毎回の授業の実施に当たって設問解答、添削指導、質疑応答等による指導を併せ行う形態をとる場合には、インターネットその他の適切な手段を利用し又は指導補助者を配置することにより、十分な指導を行うものとすること。
V、施行期日
平成二十年四月一日
なお、答申の文科大臣への提出は安西分科会長に一認された。
そのほか、同分科会の“骨太の方針二〇〇七”を踏まえての今後の審議方針については、国際化の審議、教育振興基本計画の中間まとめへの審議、制度・教育部会の学士課程教育に関する審議、高等専門学校の充実に関わる審議等を推進するとともに、専門職大学院の在り方、法科大学院部会や評価機関の認証に関する審査委等に係わる諸問題の審議を深めていくこととした。
なお、学士課程教育に関する小委(黒田壽二主査)での審議では、同小委の中間報告を八月中に取りまとめるべく、大学で取り組むべき課題とそれに対する国の支援、さらに国際的通用性等について議論を重ねているとの報告があった。