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平成19年6月 第2277号(6月20日)

産学官でイノベーションの推進を 第6回産学官連携推進会

 1面に既報のとおり、内閣府、日本経済団体連合会、日本学術会議などは、第六回産学官連携推進会議を開催した。平成十三年の小泉内閣で第一回が開催され、産学官の共同研究は平成十二年から五年間で金額はおよそ三倍になるなど、産学官の連携はここ数年で飛躍的に進んだ。しかし、人材育成、双方のコミュニケーション不足等、解決すべき課題も多い。このたびは、第三期科学技術基本計画やイノベーション25の策定等を受け、イノベーションの創出に向けた産学官連携の新たな展開がテーマとなった。

 基調講演では、高市早苗内閣府特命担当大臣(科学技術・イノベーション)が、「イノベーション〜未来をつくる、無限の可能性への挑戦」と題して講演した。イノベーション25とは、成長に貢献するイノベーションの創造に向け、医薬、工学、情報技術などの分野ごとに、二〇二五年までを視野に入れた、長期戦略指針。今後世界の潮流として、@人口減少・高齢化の進展、A知識・情報化、グローバル化の進展、B地球の持続可能性を脅かす課題の増大が起こる中、主要国は成長の鍵としてイノベーションを掲げている。
 高市大臣は、最後に、「イノベーション25に描く日本を実現するためには、基礎研究の源を豊かにし、その成果を切れ目なく産業界へ繋ぐ連続的なイノベーションの創出が不可欠である。そのために、産学官の本格的な協働を期待する」と述べた。
 続いて、岡村 正株式会社東芝取締役会長から、「二十一世紀のイノベーションと産学官連携への期待」と題して特別講演があった。まず、二十一世紀に求められるイノベーションとは、物の豊かさよりも心の豊かさ、つまり、安心、安全、快適、感動などであることを述べた。その後、日本の産学連携の現状に触れ、連携の枠組みが整ってきていて、産業界は急速な進展を高く評価している。しかしながら、海外の研究機関への研究費支出は国内大学の約二・四倍と、海外大学との産学連携が進められている。国内の産学連携が促進されるためには、現場のコミュニケーション、技術経営人材の必要性、分野別の目標設定と特性に応じた施策が必要であるとした。
 続いて、分科会に分かれてディスカッションが行われた。分科会@では、イノベーションについて議論があった。主査の坂村 健東京大学教授が、「イノベーションの定義は何か?分野は?範囲は?そして誰がやるのか?今のままでは漠然とし過ぎている」と問題提起。パネリストからも、「成長(既存モデルの拡大)」と「発展(新規モデルへの不連続的移行)」の違いを説明できる経営者が少ないとの意見があった。イノベーションは何のためにするのかについては、日本が豊かになり世界に貢献するためだという議論も行われた。また、人財育成は大事だが、育成する教育手法そのものにもイノベーションが必要だとの意見も出た。会場からの質問では、イノベーションに関わる研究の評価はどうするのか等の発言があった。
 分科会Aでは、「地域から世界を目指す地域クラスターの強化」と題して、地方分権とイノベーション25の推進を進めていくための方策について議論された。新しいビジネスモデルを創造していくためには、人脈や信頼、情報を持ち地域を発展させていけるクラスターマネジメント人材が必要との意見があった。
 分科会Bでは、「第二期を迎える大学の知的財産戦略」と題して、大学知的財産本部や技術移転機関(TLO)等の現状や今後の役割について議論された。これからは、知的財産の管理や技術移転にとどまらず、イノベーションの担い手としての役割が求められるとの議論がなされた。
 分科会Cでは、「求められる高度理工系人材」と題して議論が行われた。人材育成については、産学連携の最も重要なテーマでもあり、どのように育成するのか、理工系離れの現状をどうするか、博士人材のキャリアパスをどうするかなど、解決すべき課題は多岐にわたる。この理工系人財の育成・活用に向けて、産学官がそれぞれどのような役割を果たすかが議論された。
 分科会後の全体会議においては、相澤益男東京工業大学長を座長に分科会報告が行われ、会場とのディスカッションでは、技術革新のみが目的になっているようで人文社会科学からの話がない、第一次産業である農林水産業のイノベーションも必要である、企業は現在のポスドクをもっと採用すべき、等の意見がある一方で、四〜五年前と議論が変わらないことや、産業界からの会議への出席が減少していることに対する批判もあがった。
 閉会後には交流会が催され、産学官の関係者が意見交換を行い、翌日は出展団体等によるプレゼンテーションが行われた。

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