平成19年6月 第2275号(6月6日)
■アジアの環境リーダー育成など 21世紀環境立国戦略を閣議決定
政府は、去る六月一日、環境省の中央環境審議会二十一世紀環境立国戦略特別部会(鈴木基之部会長)がとりまとめた「二十一世紀環境立国戦略」を閣議決定した。同戦略は、安倍内閣総理大臣施政方針演説において、「『二十一世紀環境立国戦略』を六月までに策定する」と盛り込まれたことを受け、同特別部会が審議を行ったもの。同戦略は、@地球環境の現状と課題、A「環境立国・日本」の創造・発信、B今後一、二年で重点的に着手すべき八つの戦略の三部で構成されている。Bの概要は次のとおり。
今後一、二年で重点的に着手すべき八つの戦略
地球温暖化を始めとする環境問題の深刻さにかんがみれば、迅速かつ着実に取り組みを進めることが必要で、特に今後一、二年で着手すべき地球温暖化対策等の重点的な環境政策の方向性を八つの戦略として概要を次に示す。
戦略1 気候変動問題の克服に向けた国際的リーダーシップ
「世界全体の排出量を現在に比して二〇五〇年までに半減する」という長期目標「美しい星50」及びその実現に向けての「革新的技術の開発」とそれを中核とする「低炭素社会づくり」という長期ビジョン、二〇一三年以降の国際枠組み構築に向けた三原則(@主要排出国が全て参加し、京都議定書を超え、世界全体での排出削減。A各国の事情に配慮した柔軟且つ多様性のある枠組み。B省エネ等の技術を活かし、環境保全と経済発展を両立)、京都議定書の目標達成に向けた国民運動の展開からなる新提案を行い、新たな国際的な枠組み作りに貢献するとともに、京都議定書の目標達成のための国内対策の充実を図る。
戦略2 生物多様性の保全による自然の恵みの享受と継承
里地里山など自然共生の智慧の再興と発展による自然共生社会づくりを世界に提案し、我が国の生物多様性の総合評価等を行い、将来像を国民に提示し、自然の恵み豊かな美しい国を将来世代に引き継ぐ。
戦略3 3R(リデュース・リユース・リサイクル)を通じた持続可能な資源循環
我が国の3Rの制度・技術・経験を国際的に展開しつつ、更なる高度化に取り組み、地球温暖化対策への貢献、G8での3Rイニシアティブの推進を図る。
戦略4 公害克服の経験と智慧を活かした国際協力
我が国の深刻な公害克服の経験と智慧、環境・エネルギー技術を活かし、「環境汚染の少ないクリーンアジア・イニシアティブ」や中国等との水環境パートナーシップなどの国際環境協力を展開する。
戦略5 環境・エネルギー技術を中核とした経済成長
省エネルギー、再生可能エネルギー、原子力等の環境・エネルギー技術に磨きをかけ、創造的な技術革新を図るとともに、エネルギー効率の改善、バイオマス等再生可能エネルギーの利用等により、新たな環境ビジネスを創出することなどにより、環境問題への対応を経済成長の新しいエンジンとする。
戦略6 自然の恵みを活かした活力溢れる地域づくり
郷(さと)、都市(まち)、水辺、森林(もり)といったそれぞれの地域の特性や相互のつながりを踏まえ、自然の恵みを活かしながら、幅広い関係者の参加と協働により活力溢れる美しい地域づくりを進める。
戦略7 環境を感じ、考え、行動する人づくり
環境保全への意欲、智慧、行動力溢れる人材を育て、活かし、地域の環境保全活動の輪を全国に広げ、力強く後押しすると共に、アジアに向けて発信していく。特に、「国連持続可能な開発のための教育の一〇年」の取組を政府をあげて展開し、アジアの環境リーダーを育成する。
戦略8 環境立国を支える仕組みづくり
環境保全の取組が市場で適正に評価される仕組みづくりや政府の率先した取組の推進等により、環境立国に向けた人々の自主的積極的な取組や創意工夫を最大限に引き出す。