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平成19年6月 第2275号(6月6日)

私大関係予算・税制改正要望案を協議
  文科省杉野私学行政課長が「学校債」を解説

  "骨太の方針"に関わる諸会議審議動向注視

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る五月二十五日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷において、第五七五回理事会を開き、平成二十年度私立大学関係政府予算要求の基本方針並びに私学関係税制改善実現の推進対策のほか、二十年度予算編成の骨格とも言える“骨太の方針”に関わる経済財政諮問会議や教育再生会議等のほか、中央教育審議会の審議動向と大学改革問題等への対応を協議した。また、報告事項として、「学校債の有価証券指定」について、文部科学省の杉野 剛私学行政課長が説明した。

 開会に当たり大沼会長は「最近は、大学・大学院改革について、教育再生会議をはじめ、経済財政諮問会議、総合科学技術会議、イノベーション25、アジア・ゲートウェイ構想、規制改革会議などで、色々な人が様々な発言をしている。我々はそれらの議論も視野に入れつつ、私学振興、高等教育の発展に向け、誤りのない対応をしていかなければならない」と挨拶。その後、協議に先立ち、去る五月一日に逝去された谷岡太郎同協会元副会長・関西支部長(大阪商業大学総長〈前理事長・学長〉)に対し、全員が黙祷を捧げた。
 協議事項に入り、平成二十年度私立大学関係政府予算要求の基本方針並びに私学関係税制改善の推進対策等について、同協会等で構成する団体連合会が取りまとめた要望案を小出秀文事務局長が提案説明した。
 平成二十年度の政府予算編成は、「大学」及び「私立学校」が新たに規定された教育基本法改正後初めてであり、“対前年度▲一%”を押しもどすこと、定員割れ私学への助成額を一律削減しないこと、高等教育に対する公財政支出の対GDP比を欧米諸国並みの約一%(現状は約〇・五%)に近づけること、地域振興に貢献する大学に対し必要な支援を措置すること、など要望の概要を述べた上で、次の重点要望事項を挙げた。
 (1)私学助成(基盤的経費)の拡充…@地域に根ざした私立大学の教育研究活動に対する支援(同協会の加盟校アンケートの取りまとめなど活用)、A教育研究施設の耐震等緊急を要する整備事業に対する支援、B教育研究の高度化推進事業に対する支援。
 (2)人材育成の推進に向けた支援(競争的経費)の拡充…@私立大学が特色を活かし中心的な役割を担っている分野への支援、A再チャレンジ可能な環境の構築と人材育成に対する支援。
 (3)科学技術創造立国の推進に向けた支援(競争的経費)の拡充…@私立大学が国の最先端分野へ参入するための条件整備に対する支援、A国の知的財産戦略の推進に向けた支援、B国公私立大学で取り組める新たな学術支援スキームの構築
 (4)その他…@認証評価機関の基盤整備にかかる支援
 一方、税制改善要望では寄附文化醸成とともに、私立大学の活性化促進と基本財産の拡充を図り、経営基盤を強化させるとともに国際競争力の向上をも目指すため、教育及び科学技術研究の第一線で活躍できる環境を整備する必要があるとして、次の項目を掲げた。
 @学校法人に対する寄附促進のための措置の拡大、A教育費にかかる経済的負担軽減のための措置の拡大、B再チャレンジ支援寄附金税制の創設、C現行特例措置の維持・拡充、D消費税に対する優遇措置など。
 これら予算要望案、税制改善要望案とも、協議の上了承された。今後、全私学連合の要望案として取りまとめられることになる。
 次に、経済財政諮問会議及び中教審等の審議動向と大学改革問題等への対応では、教育再生会議をはじめ政府等の各会議などから、高等教育関係の議論の内容が検討された。
 ▽教育再生会議=大学卒業認定厳格化、ダブル・ディグリー取得推進、奉仕活動の推進、入試多様化、九月入学推進など。
 ▽経済財政諮問会議=文系・理系区分の撤廃、国大の複数受験・合格の実現、国大の運営費交付金の配分ルールの見直しなど。
 ▽規制改革会議=高等教育機関における教育と研究の会計分離の検討、国大法人と私立大学のイコールフッティングなど。
 小出事務局長は「いずれにしても、これら様々な意見・議論があるが私学の自主性を損なうことのないように、適宜適切に意見具申等していく」と強調した。
 さらに、中教審の審議動向については、同審議会大学分科会の臨時委員の黒田壽二同協会副会長が、同分科会制度・教育部会の「学士課程教育の在り方に関する小委員会」(黒田壽二主査)で審議中の学士課程教育の改革を中心に解説した。
 次に、同協会への加入申請のあった(学)近畿大学弘徳学園の設置する近大姫路大学について、協議の上、加入が承認された。
 また、大学院大学等の会費についても五月二十二日開催の本年度第一回企画財務委員会で検討された案について協議が行われ算定方式案が決まった。
 報告事項に移り、同協会の中・四国支部春季総会(五月十一日・広島市)、九州支部春季総会(五月十八日・福岡市)〈2面に掲載〉がそれぞれ盛大に実施されたことのほか大学等関係団体「就職問題懇談会」委員並びに団体連合会「就職問題委員会」委員の一名欠員分について、それぞれ浦田雄司日本福祉大学キャリア開発部次長、渡部雅俊国士舘大学就職センター事務部長が後任者として推薦され、承認された。
 また、(独)大学評価・学位授与機構「国立大学教育研究評価委員会」専門委員候補者の推薦については、役員校中心に検討していくことになった。
 報告事項の最後に、学校債の有価証券指定について文科省の杉野私学行政課長が説明した。
 「特に投資性の強い学校債」については、金融商品取引法の規制の対象となる(みなし)有価証券と位置づけることとされたが、指名債権であって次の要件を満たす学校債は、引き続き、従来どおりの募集が可能であるとして、▽無利息であること、▽募集の対象が卒業生等の利害関係者に限られていること、▽第三者への譲渡が禁止されていること、等を説明した。

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