平成19年5月 第2274号(5月23日)
■私立大学振興研究会開く 文教関係国会議員と協議
日本私立大学団体連合会(安西祐一郎会長)は、去る五月十五日、東京・千代田区のホテルにおいて、私立大学振興研究会を開いた。
教育再生を掲げる安倍内閣の下、各種審議会等において高等教育を中心とする議論が巻き起こっており、政府は、それらの最終的な意見集約を教育再生会議(座長=野依良治(独)理化学研究所理事長)が取りまとめることにしていることから、同連合会は、教育再生に関する特別委員会の委員等の文教関係国会議員に、今後の平成二十年度の私立大学関係予算・税制への理解はもとより、高等教育への公財政支出の対GDP比の拡充などを訴えた。
はじめに安西会長から、「平成十九年度は私学助成の減額はもとより、規制改革等の各種審議会から大学改革等を求められるなど、厳しい状況下にあります。しかしながら、昨年末の教育基本法の改正によって、私立学校教育の振興が明確に位置づけられ、“国・地方公共団体はその振興に努める”とあることから、現実の問題としてどのようなことがもたらされるのか大いに期待しているところです」との挨拶があり、引き続いて同特別委員会の保利耕輔委員長は「平成十九年度の私学助成は骨太の方針に押し切られてしまった。安倍内閣では教育にスポットが当っていることから、力を結集して押しもどしていきたい。先生方のご意見をいただいて対処していきたい」と挨拶した。
協議に移り、はじめに、同団体連合会から白井克彦副会長(早稲田大学総長)が、(1)教育基本法を踏まえた私学助成等拡充、(2)科学技術創造立国推進に向けた支援拡充、を中心に理解を求めた。また、(3)国内総生産(GDP)に対する学校教育費(私費負担)の国際比較や(4)私立大学の地域振興への貢献などを示し、私立大学への支援を訴えた。
(1)では、国公私立大学が共存した高等教育のあり方を強調し、公財政支援の強化(対GDP比〇・五%から一・〇%の国際的水準へ、教育振興基本計画への高等教育に対する投資目標額の明記など)、高等教育の多様な発展、地域振興と活性化の観点からの「私学助成▲一%」の見直しなど、適性な競争環境の実現に向けた私学助成(国立大学の役割の明確化と「教育」にかかる経費の国公私のイコール・フッティング、国費負担のあり方)などについて説明した。
また、(2)では、多様な科学技術人材の育成、地域貢献などの観点から、「民」の活力が重要であること、また、競争的資金における間接経費の優遇措置などを訴えた。
議員からは「今日は教育再生特別委のメンバーもいる。我々は高等教育の在り方を根本的に考え直さなければならない。私学に対しては、私学助成法の後退について公財政支出の在り方とともに議論しなければならない、『教育再生』を掲げた内閣として欠かせない」「教育三法が間もなく審議入りする。学校教育法の改正も視野に入っているが、大学の質について欧米に比してレベルが低くないか。単位認定等厳しくし、きちんと勉強しなければ進級できないようにすることも必要ではないか。また、地方にある大学は、地域振興等において、“こんな役割を担っている”といった特色を鮮明に出していってよいのではないか」「これからも、現場からの改善の方向をお示しいただきたい」などといった意見が相次いだ。
同連合会では、平成二十年度の政府予算等のシーリングとも言える骨太の方針の取りまとめに向けて、今後とも文教関係国会議員等との研究会・懇談会を持つなどして、私学への理解を求めていく。