平成19年5月 第2273号(5月16日)
■私大等経常費 補助金事務研修会開く 19年度の変更点・検討の方向など解説
特別補助の改革ゾーン化メニュー化など説明
日本私立学校振興・共済事業団(鳥居泰彦理事長)は、去る五月九日から三十一日まで、東京会場(文京学園「仁愛ホール」)のほか全国五会場において「平成十九年度私立大学等経常費補助金事務担当者研修会」を開催している。同研修会は、学校法人の補助金事務担当者を対象に毎年開かれているもので、同事業団及び文部科学省から経常費補助金に関する改正点・見直しのほか、申請事務の留意点などについての解説が行われる。特に平成十九年度は、これまで文科省の直接執行分であった「私立大学教育研究高度化推進特別補助」が同事業団の特別補助と統合されるとともに、その特別補助の項目がゾーン化、メニュー化されるほか、変更点等も多岐にわたることから、会場は補助金事務担当者で満席となった。
はじめに、同事業団の長井孝介助成担当理事が挨拶に立ち「今年度は特別補助等のゾーン化、メニュー化をはじめ大きな変更があり、未だ検討中の部分も多いが、十分にご理解いただき会計検査院からの指摘等を受けることのないようにご留意下さい」と述べた。
研修に入り、まず、文科省私学部私学助成課から、「私立大学等に対する補助金制度の概要」として、(1)最近の高等教育行政と私学を巡る動向等について、西村敏信助成係長が解説した。
同氏は、「知」の世紀をリードする大学改革(大学の自主性・自律性の一層の向上、大学の質の保証と国際競争力の強化、産学官連携・知的財産戦略の推進など)やその推進のための財政支援(競争的経費、基盤的経費、学生支援経費など)を中心に説明した。
次に、(2)私学助成予算と私立大学等経常費補助金について、助川 隆課長補佐が解説した。
同氏は、平成十九年度の一般補助及び特別補助の変更点を中心に、(1)一般補助では、定員割れ大学に対する助成の見直しについて説明。「定員割れ等が続いている大学等について、一定期間で改善傾向が見られない場合に減額を強化」とされていたことに関連して、@学部単位で収容定員が五〇%以下の場合は、その学部の補助金は不交付とし、変更の予定はない。A収容定員の七〇%ぐらいを目安にして減額を厳しくする方向である。(現在、定員割れと帰属収支差額との関係を分析中)。Bしかし、七〇%を割り込むと経営状態が問題であるということではなく改善を促すに過ぎず、経営が良好、あるいは改善が見込まれる場合には減額率を下げる措置も検討する。なお、減額となる定員割れについては、現在の学部ごとに加え、大学全体でもみるか、入学定員か、収容定員かについては検討中。(2)特別補助では、まず、ゾーン化・メニュー化について説明。@各大学はA、B、Cの各ゾーンのいずれか一つを選択する。(A:地域の知の拠点としての高等教育機関の地域貢献を支援、B:個性豊かで多様な教育を行う大学等を支援、C:教育研究活動の高度化を図る大学を支援)=各ゾーンには該当する従来の予算項目等が網掛けして示されている。Aなお、今年度に限り、すべてのメニュー項目の申請を可とする(来年度以降は原則、申請ゾーンの網掛け項目しか選択できない)。B配分は網掛け部分を優先するが、合計が前年度分を下回る場合、網掛け以外の部分に申請があれば圧縮等の調整をかける。
なお、Cゾーンにある「学術研究高度化推進」については、どのような扱いにするか今後検討する。
次に、定員割れ改善に取り組んでいる大学等に対する支援として約二〇校程度に二〇〇〇万円を五年間補助していくことなども説明した。
昼食休憩の後、同事業団助成部の今福康夫部長が一般補助について、平成十八年度の主な変更点(認証評価経費、教職員福利厚生費関係、情報の積極的な提供に対する増額措置等の新規項目事項のほか、既定項目の変更など)を説明した。
また、平成十九年度の主な変更点については、@教員組織の見直しにより、准教授が従前の助教授と同様の扱い、助教は従前の助手と同様の扱いであること、専任教員の高額給与調整(適用除外あり)、教員経費等の単価改定(大学院の有無や実験系・非実験系の分類の撤廃や学部の種類は「医・歯学部」と「その他の学部」程度の分類)などのほか、補助金の不交付となる収容定員超過率は一・五八倍以上、また入学定員超過率は医・歯学部一・一倍以上、その他の学部一・四三倍以上(平成二十年度以後は検討中)、さらに調整係数表の見直しなど検討中であることなどを解説した。
引き続き、特別補助について同事業団助成部補助金課の吉田秀樹課長補佐が説明した。
同氏は平成十八年度の特別補助の執行についてのほか、平成十九年度の変更点について詳細に説明した。@各大学の特色を活かせるきめ細かな支援のメニュー群のほか、各ゾーンに共通のA新たな学習ニーズ等への対応、B高等教育機関の質の確保、C特定分野の人材養成支援、D定員割れ解消等の改善に取り組んでいる大学等に対する支援など平成十九年度の特別補助項目について解説した。
次に採択科目では、「新規学習ニーズ対応プログラム支援経費」について、補助基準額(所要経費×1/2以内)×調整率で算定し、一校当たり一件の申請とする。その他の新規項目等(地域の子育て、ものづくり支援、地域教育コンソーシアム支援、研究連携コンソーシアム形成支援、定員割れ改善促進特別支援経費)についての算定方式を説明するとともに、後日、計画書にて案内することとした。
また、算定方法等の変更予定について、就学機会の多様化推進メニュー群や学部教育の高度化・個性化支援メニュー群の項目について学生総数に基づいて「新たなキザミ表」による増額措置を講ずること、最後に調査のスケジュール(予定)を説明した。
研修の最後に、同事業団助成部補助金課の佐藤克則課長補佐が「会計検査院の実地検査状況について」と題し、平成十九年度(七月までの予定数)の実地検査件数四七大学法人・五一大学のほか、一般補助、特別補助に関する検査状況等についての事例を紹介するとともに、不正を指摘され、私立大学全体に大きな影響を及ぼすことのないように注意を促して研修会を終了した。