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平成19年5月 第2272号(5月9日)

地域で学ぶ国際文化 プール学院大学のサービス・ラーニング −3−

プール学院大学国際文化学部 教授 中島智子

 プール学院大学(井上修一学長)の国際文化学部国際文化学科は、サービス・ラーニングという科目を置いて、単位認定している。サービス・ラーニングは、サービス(貢献)とラーニング(学習)をつなげ、ボランティア活動を学外で行い、その体験を通して学びを獲得することを目指す教育である。大学の地域貢献活動と、教育をどのようにリンクさせるかについて、同学科の中島智子教授に執筆してもらった。三回連載。

 連載三回目は、サービス・ラーニング・プログラムを実施して得られたことを中心に述べたい。
《教員の巻き込みとFD》
 新しいことに取り組むとき、誰がそれを担うのか、他の教員にどのように拡げていくのかは常につきまとう課題である。今回のプログラムの場合は、すでに述べたように、声を掛け合った四人でスムーズに始まった。
 本学の教員には、もともと「協働」の文化があると思われる。小さな大学なので、さまざまな学内業務を全員で分担し協力し合わないことには進まず、日頃から協力し合う関係が築かれてはいる。ただ逆に、誰かが担えば任され、分業化しやすいことも事実である。四人の教員の中でもそれぞれ専門や年齢、個性も違うので、「協働」していくことはわれわれにとっても重要な目標である。
 教員を巻き込む最も良い方法は、それが単なる義務でなく、そこから得られるものが多いことに気づく(気づかせる)ことである。例えば、成人日本語教育が専門だった教員は、学生を送り、小中学校を訪れて現状を知り、教員と意見交換する中で、自身の新たな研究分野が拡がっていった。しかも、大学での日本語教育の授業とリンクするので、相互の課題をつなげた授業の検討にも発展していくことになる。
 もう一つの方法は、地域からのニーズである。インドからの留学生に対して、地域の小学校から英語活動をしてほしいという要望があり、英語教育専門の教員に協力を求めると快く受けてもらえた。他にも、小学校での情報教育の支援を求める声もあり、情報系の先生につないでいる。
 サービス・ラーニングとは一つの教育方法なので、アメリカ合衆国の大学では実に多くの科目でおこなわれている。例えば、文学が専門の教員には無縁だと思われやすいが、シェークスピアを学んだ学生が、図書館や病院などで読み聞かせをするという活動が行なわれているという。学科会などでサービス・ラーニングの現状報告をできるだけきめ細かくおこなう中で、そのようなことにも触れ、他の教員の理解を促進するように心がけている。
 実際、この取り組みは学生だけでなく教員にとっても得られるものが多い。まず、通常の授業だけでは知り得なかった学生の力や個性をよく知ることができ、それぞれの個性や学習スタイルの違いを踏まえた指導のための錬磨の場となる。また、ふだんの授業へのフィードバックとして、学校や福祉現場の現状に常に触れることができ、その情報を取り込むことで、学外活動をしていない学生にもよりリアリティのある授業を行えること、学生の活動に資するように、関連の授業内容を点検し改善に活かせることなどがある。
 さらに、教員の研究活動も拡がっていく。サービス・ラーニングの実施方法の調査研究や、それぞれの専門分野での必要な知識やスキルの開発のために研究を進めていくことで、研究活動も活発になり、研究成果も増していく。実際、新しい研究事業に誘われるということも起きている。このように、FD効果が高いということも注目してよいだろう。
《地域との連携・共創》
 サービス・ラーニングは、大学と地域との関係、特に地域における大学の位置に大きな変化をもたらしている。
 もともと本学では、学生が地域の学校での国際理解教育に協力したり、大学祭を地域に開いて幼稚園や小学校、地域の人々を招待してきていた。このような下地があってこそではあるが、サービス・ラーニングを実施することで、受け入れ先と継続的で幅広い連携を保つことができるようになった。本学の場合、立地がニュータウンの住宅地ということで、このような活動がなければ学生も通学路以外に地域を知ることもない。
 地域の受け入れが順調に進んだ背景には、特に学校現場が人手を必要としていることと、以前に比べると学校が外に開かれるようになったことがあろう。なかでも中国からの子どもの編入学が多い地域であることもあって、本学の留学生への期待は高い。渡日して間がなく心を閉ざしがちな生徒がいる中学校から、できるだけ「ぼわ〜んと優しそうな留学生を」と具体的に頼まれることもある。学校や保育園からの手紙や教材の翻訳、保護者への通訳などには、教育委員会からの人材派遣もあるが、回数が限られることもあって、留学生は重宝がられている。とはいえ、留学生に十分その力を付けるのは大学側の責任であるし、学生が何でも補完することが本当の解決にならず問題があることも事実である。
 それでも、地域の中にある大学が、地域の状況をよく知り、地域の一員として関わること、地域から学ばせてもらうことの意味は大きい。具体的な課題解決に関わる中から学びを発展させていければ、学生はやがて市民として地域を担っていく力と使命を身につけるだろう。
《大学にとっての成果と今後》
 本プログラムは、文科省の補助金を受けて推進されている。コーディネーターの人件費や調査研究の実施、学生や受け入れ先の評価測定など、補助金なしには成り立たない。また、補助金を得ていることが、われわれの動機をさらに高め、プログラムを改善させているといえる。
 最後に、本学では二〇〇七年四月から子ども教育学科を新設し、小学校と幼稚園の教員免許状取得課程をもつことになった。この構想は、サービス・ラーニング・プログラムから直接出てきたものではないが、準備過程において、サービス・ラーニングを通して築いた地域の教育現場や教育委員会との信頼関係が果たした役割は大きい。大変好意的な受けとめと支援協力の申し出を頂いている。このことは、筆者が新学科の準備に責任のある立場であったので、直接肌で感じることができた。新学科においては、サービス・ラーニングの精神を受け継いで、教育現場と協力し、現場で育ち合う関係のなかで学生を学ばせることになる。
 この新学科に留まらず、今後も大学の改革は進められていくと思われるが、本学の「異文化間協働」という教育理念がある限り、サービス・ラーニングの精神と手法は受け継がれていくだろう。(おわり)

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