平成19年4月 第2271号(4月25日)
■医学教育の改善・充実 文科省の協力者会議が報告書
医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(座長:高久文麿自治医科大学大学長)は、このたび、最終報告をとりまとめた。同会議では、平成十七年五月から医学教育の改善・充実や地域医療を担う医師の養成の在り方等について検討してきたが、医学教育全般の残された課題をまとめた。
同報告は、入学者選抜の改善からカリキュラム改革、女性医師の増加に伴う環境整備など幅広い課題について触れている。概要は次のとおり。
1. 入学者選抜の改善
学力検査のみに頼ることなく、地域でのボランティア活動の感想文の提出等、選抜方法の多様化、評価尺度の多元化が必要である。また、高等学校での出前講座、高校生の大学講義等の受講等、高等学校教育と医学教育との接続の改善が必要である。
2. 教育者・研究者の養成等の医学教育の改善
学部教育については、「医師として求められる基本的な資質」や「学部教育における研究の視点」についてのモデル・コア・カリキュラムを改訂し、また、学部生の研究室配属、選択制カリキュラムの充実等による研究マインドの育成が必要である。
大学院教育については、研究目的の診療従事カリキュラムへの位置づけ、複数教育の指導体制の確立等、教育内容の実質化が重要。また、公衆衛生大学院の整備、修士課程の活用、秋季入学の実施とともに、臨床医、臨床研究者、基礎医学研究者それぞれのキャリアパスの明確化とキャリア形成支援が必要である。
教育者の教育能力開発の推進等の関連する取り組みについては、FDの充実、能力評価の検討・導入、教育実績の優れた教員へのインセンティブ付与など、教員評価を充実させる。また、若手研究者・教員への支援も重要である。
3. モデル・コア・カリキュラム改訂に関する恒常的な体制の構築
医・歯学教育モデル・コア・カリキュラム改訂の恒常的体制で、@国家試験出題基準の改正、法制度等の変更に対応した改訂等当面の改訂、A定期的な全面改訂に必要な準備や検討を実施する体制を構築する。
4. 診療参加型臨床実習の在り方
「地域医療臨床実習」の学習内容を新設し、患者の理解と同意を得るための取組、侵襲的医行為等に関するプロセスを徹底すること、学外の医療機関での実習を推進、実習終了時、卒業時の評価・指導を充実させることが重要である。
5. 大学病院における新医師臨床研修の充実
研修体制やプログラムの工夫・改善、指導医等へのサポート体制・卒後臨床研修センター等を整備する。また、基本研修科目等以外の研修期間の取り組みの工夫・改善が重要である。
6. 専門医養成の在り方
大学病院と地域の医療機関間のローテート式の医師養成システムの構築や新医師臨床研修と連動した研修プログラムが必要である。
7. 臨床研究の推進
全国的な拠点の整備や、大学間ネットワークの構築等臨床研究の基盤整備、治験依頼者への対応の一元化等ワンストップオフィスの設置、学部教育の充実などが必要である。
8. 教育研究病院としての大学病院の役割を適切に果たすための組織体制の在り方
大学病院としての教育・研究の目的を明確にした上での疾病別・臓器別の診療組織の構築や意思の役割分担とコメディカルとの連携体制、医師不足分野の人材養成・救命救急体制の整備などが重要である。
9. 女性医師の増加に伴う環境整備
短時間勤務等女性医師が働きやすい環境整備や、復帰訓練等育児休業からの円滑な復帰、退職した女性医師の復帰支援などが必要である。