平成19年4月 第2270号(4月18日)
■"消費者契約法"施行後の評価・検討ヒアリング
永田眞三郎関西大教授が意見発表
日本私立大学団体連合会(以下、団体連合会)は、去る四月十日、東京・霞が関の中央合同庁舎で開催された内閣府の「第四回消費者契約法評価検討委員会」のヒアリングで、同法施行後の状況に対する評価等について意見発表した。
このたびのヒアリングは、平成十三年に施行された同法が消費者トラブルの解決に相応の効果をあげ、本年六月七日から導入される消費者団体訴訟制度によってもさらなる法の実効性の確保が期待されているものの、近年、依然として消費者取引は多様化、複雑化しており、従来の消費者取引に関するルールの隙間をつく様々なトラブルが発生し、消費者の被る被害もより深刻なものとなってきていることから、これらの被害を救済する方策を検討すべく、同法の施行後の状況を評価・検討を行う必要があり、同法制定の附帯決議、消費者基本計画においても実施するよう整理されている。> こうしたことから、第二〇次国民生活審議会消費者政策部会の下に消費者契約法評価検討委員会が設置され、同法の評価・検討が進められている。同委員会では、同法に関係する団体から意見を聞くことになり、同連合会を代表して永田眞三郎関西大学(理事)・法学部教授がヒアリングに臨んだ。
(1)同法施行後の状況に対する評価
平成十四年に入学辞退者からの学納金返還訴訟が全国的に提起されたが、ほとんどの地裁判決及び高裁判決において、さらに、平成十八年十一月の最高裁判決において、私立大学の学納金徴収制度の現状をほぼ肯認する判断がなされた。私立大学の公共性・公益性を担保し、教育サービスの質を確保・維持するための定員管理の重要性、私立大学の財政構造の特質を踏まえた学納金徴収制度の必要性に対する理解が示され、現在の学納金徴収制度の根底を覆すことなく、実務処理の方向性をも含む司法の基本的な判断が示され、学納金返還問題についての一定の収束をみたといえる、などと永田氏は意見発表した。
これらの訴訟では、入学を辞退した入試合格者に対する納付済みの入学金及び授業料等の返還義務の有無について争われたものであった。最高裁判決では、@在学契約にかかる消費者契約法第九条一号の適用として、同法施行後の在学契約は、同法の適用を受けることの判断のほか、A納付済みの入学金を返還しない旨の在学契約上の特約の有効性として、入学金は当該大学に入学し得る地位取得の対価であることから、返還義務は無いとの判断、B納付済みの授業料等を返還しない旨の在学契約上の特約の有効性として、三月三十一日までに在学契約の解除の意志表示がされた場合には返還特約は無効とするなどの判断等が示された。
永田氏は、同連合会の各大学では、これら最高裁判決の趣旨をさらに徹底させ、各大学が受験生に周知させる措置をとるように努めていると説明した。
そのほか、(2)消費者契約法に関連する最近の消費者トラブルの実情とその対応、(3)消費者トラブルの解決に資する取引ルール・規制のあり方としての@入学辞退の意思表示の確認方法、A国立大学の入学手続き期日設定の適正化の要請、などについても意見発表した((2)、(3)は2面に掲載)。
なお、意見発表後には、委員から「@消費者契約法によって入学金、授業料返還について私立大学の姿勢が変わるきっかけになったのではないか、A返還請求資格者には各大学が自主的に判断して返還しているのか」などの質問が出され、永田氏は「@はその通りであり、文部科学省の通知を受けるなど、厳粛に受け止めている。Aは各大学の対応となっており、該当する可能性のある学生を調べてはいるものの、申し出のある学生、意志表示のある学生に対して事実確認をして対応している」などと答えた。