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平成19年4月 第2270号(4月18日)

大学経営強化へ向けてシンポ開く 具体的な成功事例等を紹介
  基調講演「社会から期待される大学の役割」

日本私立学校振興・共済事業団(鳥居泰彦理事長)は、去る三月二十八日、東京・芝のメルパルク東京において、「大学経営強化シンポジウム」を開催した。同シンポジウムは、同事業団が文部科学省から委託されている「大学経営強化調査研究委託事業」の報告書発刊に当たり、調査結果を広く公表することを目的として開催するもの。「社会から期待される大学の役割」と題する基調講演のほか、多摩美術大学、福岡工業大学、北海道武蔵女子短期大学の事例発表等があり、大学教職員等関係者が多数参加し、熱心に耳を傾けた。

 国公私立大学、短期大学の経営環境が一層厳しくなる中で、各大学は地域への貢献、教育研究の特色、社会が求めている人材の育成等が十分であるか、早急に自己点検を行い、今まで以上に経営の見直し・改革を行っていく必要がある。このたび、同事業団では、経営基盤強化に向けた成功事例等の調査を実施、「大学経営強化調査研究委託事業専門家会議(柿本静志座長)」を中心に報告書をまとめた。報告書は、@組織体制の強化(経営体制の強化、組織の改革、中長期計画、監査制度の充実等)、A収入の確保(学生募集活動の強化、教育力の強化、その他の収入源の確保)、B支出の抑制(人件費の抑制、経営の節減)からなり、五〇以上の事例が掲載されている。
 シンポジウムでは、まず、前日本経済団体連合会産業技術委員会産学官連携推進部会の山野井昭雄味の素株式会社顧問から、「社会から期待される大学の役割」と題した基調講演があった。山野井氏は、新卒を含む技術系若手人材に関する現状や問題点等を述べるとともに、産業界から見た人材育成のポイントを挙げた。「指示待ち型から主体性のある人材」を掲げ、「産業界からは「こういう人材を育てて欲しい」というだけではなく、一緒に汗をかいてプログラムを作っていきたい」と述べた上で、@インターンシップ制度の充実や産学の人材交流の促進、A予算の流れを変え、博士のプロジェクトリーダーとしての資質を向上させることなどを挙げた。
 次に、成功事例の紹介に、「学生確保とカリキュラム改革」と題して、多摩美術大学の岩倉信弥教授が講演した。
 岩倉氏は、自動車メーカーの本田技研工業時代の経験を活かして、学科独自の五カ年計画や一〇年ビジョンのもと、戦略的なカリキュラム改革や学生募集活動を見直し、入学志願者数を増加させた。また、ブランド向上のため、予備校巡りや出前授業を行ったり、卒業生と学生の交流の場を作ったりしている。岩倉氏は、「本田で学んだことはモノづくりの思想。これを学生に伝えていきたい」と述べた。
 続いて、福岡工業大学の大谷忠彦常務理事・事務局長が、「経営計画と予算の連携強化による施策実現性向上」と題して講演した。
 同大学では、五か年の経営計画(マスタープラン:MP)や各セクションの単年度事業計画(アクションプログラム:AP)を策定し、MPでは「全員参画と合意形成に重点」「組織・総合力を重視」を、APでは「各セクションの自主・自律的行動を重視」を掲げ、PDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)サイクルによって、計画を効率よく実行している。また、経営計画と予算の関連強化によって、教育的、財務的施策の実現性を向上させている。例えば、特別予算では、マスタープランやアクションプログラムを資金面で計数化した臨時的予算を含めている。最後に、今後の課題として、MP・AP・予算制度システムの外部評価や情報公開などを挙げた。
 最後に、「学生募集と就職支援」と題して、北海道武蔵女子短期大学の永井秀樹事務局長から講演があった。
 同短期大学では、「社会人として必要な基礎能力を身につける」という教育理念の下、教養教育重視の教育を実施し、高等学校や地域、企業から得た信頼を学生募集と就職支援に結び付けている事例を紹介した。また、同大学では特に力を入れている点として@企業での採用後の評価維持(会社での戦力になっている)、A企業からの評判維持(内定の蹴飛ばし防止、早期退職防止)、B就職支援の中心は、個人対象(個人面談、模擬面接)、C受講料無料の就職対策総合講座の実施(学生・保護者の負担軽減)、D企業からの学校推薦制度の維持、E卒業生の未就職者登録→卒業後(四〜六月)に既卒者就職を挙げた。
 最後に、私学経営相談センターの西井泰彦センター長が閉会の挨拶をして終了となった。

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