平成19年3月 第2266号(3月14日)
■“社会人基礎力”重視9割
経産省 企業の「求める人材像」調査
九割以上の企業が、新卒社員の採用プロセスや入社後の人材育成において「社会人基礎力」を重視―経済産業省はこのたび、「企業の求める人材像」のアンケート調査の結果を公表した。概要は次の通り。
同省では、昨年、仕事を行っていく上で必要とされる「社会人基礎力」と、それらに求められる一二の能力要素を発表している。「前に踏み出す力(主体性、働きかけ力、実行力)」、「考え抜く力(課題発見力、計画力、創造力)」、「チームで働く力(発信力、傾聴力、柔軟性、情況把握力、規律性、ストレスコントロール力)」の三つを基本的な能力と定義している。このたびの調査は、昨年十月に三七〇〇社の人事部に対して企業が職場で求める能力に関して実施、有効回答数は六八四サンプルであった。
まず、ほぼ全ての企業が、新卒社員の採用プロセスや入社後の人材育成において「社会人基礎力」を重視していることがわかった。その中でも、「前に踏み出す力」は企業規模に関わらないが、中堅・中小企業では「チームで働く力」を求める傾向が強かった。求める人材像について、企業規模に関わらず、「主体性」、「実行力」、「課題発見力」、「計画力」、「情況把握力」が高い割合で求められている。
また、企業規模に関わらず二九歳までの若手社員に「前に踏み出す力」、「考え抜く力」について不足が見られた。能力要素では、企業規模に関わらず、「主体性」、「課題発見力」、「創造力」の不足が指摘されている。中堅・中小企業では、「計画力」、「柔軟性」、「情況把握力」について、特に不足感が強かった。
企業が強く求めている能力であるにも関わらず、若手社員に不足が目立つ能力は、企業規模に関わらず、「主体性」、「課題発見力」。また、東証一部上場企業においては、「働きかけ力」、「創造力」についても、同様に不足が見られた。
職種別の分析では、@事務・管理系、A企画系、B営業系、C技術・研究系、D販売・サービス系、E専門系、F金融系、Gクリエイティブ系、HIT系の九つに分類し、それぞれ求められる社会人基礎力等について公表している。
【事務・管理系】
「考え抜く力」が最も求められ、全職種平均を上回るのは「チームで働く力」であった。また、三つの基礎力の不足の度合いが全職種平均を上回っており、「考え抜く力」が最も目立っている。能力要素では、「課題発見力」、「計画力」、「規律性」等が、全職種平均に比較して高く求められている。そのうち、「課題発見力」の不足が目立っている。
【企画系】
「考え抜く力」が最も求められ、「前に踏み出す力」とともに全職種平均を上回っている。また、「考え抜く力」の不足が最も目立っているが、すべての能力において不足の度合が全職種平均を下回っている。能力要素では、「創造力」、「主体性」、「課題発見力」等が、全職種平均に比較して高く求められている。そのうち、「創造性」、「発信力」等の不足が目立った。
【営業系】
「前に踏み出す力」が最も求められ、「チームで働く力」とともに全職種平均を上回っている。一方、「考え抜く力」の不足が最も目立ち、「前に踏み出す力」とともに全職種平均を上回っている。能力要素では、「実行力」、「主体性」、「情況把握力」等が、全職種平均に比較して高く求められている。そのうち、「働きかけ力」、「実行力」、「情況把握力」等のニーズが高い。
【技術・研究系】
「考え抜く力」が最も求められ、「前に踏み出す力」とともに全職種平均を上回っている。一方、「前に踏み出す力」の不足が目立ち、「チームで働く力」とともに全職種平均を上回っている。能力要素では、「実行力」、「課題発見力」、「創造力」等が、全職種平均に比較して高い。そのうち、「主体性」、「創造力」等の不足が目立っている。
【販売・サービス系】
「前に踏み出す力」が最も求められ、全職種平均を上回るのは「チームで働く力」であった。また、不足する基礎力は、三つすべてにおいて全職種平均を上回っており、特に「考え抜く力」の不足が目立っている。能力要素別では、「柔軟性」、「傾聴力」、「発信力」等が全職種平均に比較して高く求められている。そのうち、「働きかける力」、「情況把握力」等が不足している。
【専門系】
「考え抜く力」が最も求められている。不足する基礎力は「考え抜く力」で、全職種平均を上回るのは「チームで働く力」。能力要素別では、「課題発見力」が求められている。
【金融系】
「考え抜く力」が最も求められ、「チームで働く力」とともに全職種平均を上回っている。また、「考え抜く力」が不足しているものの、すべての能力において、不足の度合が全職種を下回っている。能力要素では、「計画力」、「課題発見力」、「情況把握力」等が、高く求められている。そのうち、「情況把握力」の不足が見られた。
【クリエイティブ系】
「考え抜く力」が最も求められ、三つの能力のうち唯一全職種平均を上回っている。「前に踏み出す力」の不足が目立っているが、全職種平均を上回るのは、「チームで働く力」。能力要素では、「創造力」、「柔軟性」が、高く求められ、そのうち、「柔軟性」の不足が目立っている。
【IT系】
「考え抜く力」が求められ、唯一全職種平均を上回っている。また、「前に踏み出す力」は、「チームで働く力」とともに、不足の度合が高い。能力要素では、「課題発見力」、「情況把握力」、「創造力」などが、全職種平均に比較して高く求められる。そのうち、「状況把握」、「ストレスコントロール力」の不足が目立っている。