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平成19年3月 第2266号(3月14日)

飛び入学高大連携 報告書案まとまる 当面は現行制度を活用

 文部科学省の「大学への早期入学及び高等学校・大学間の接続の改善に関する協議会」(座長=丹保憲仁放送大学学長)は、去る三月六日に東京・田町のキャンパス・イノベーションセンターで一〇回目の会合を開き、これまでに協議された論点と、それに対する考え方からなる「報告書案― 一人一人の個性を伸ばす教育を目指して」を取りまとめた。今後は、高等学校関係の各委員から意見を聞いた上で、最終的な取りまとめについては丹保座長に一任された。

 この協議会は、大学への早期入学(飛び入学)制度の適切な運用及びその活用の在り方並びに高等学校と大学との接続において一人一人の能力をより一層伸ばしていくための連携の在り方に関し協議を行うため、平成十七年三月に設置されたもので、これまでに、飛び入学や高大連携に関する事例報告の聴取や各大学に対するアンケート調査、千葉大学先進科学研究教育センターへの視察を行いつつ協議を進めてきた。報告書案の概要は次のとおりである。

 背景・基本的な考え方について
 飛び入学が定着しているとは言い難い状況にあり、また、高校と大学の連携を進めることが強く求められている。ここでは、特定の分野において特に優れた資質を有する者や大学レベルの教育研究に触れる機会を希望する高い能力と強い意欲を持つ者の個性・能力を効果的に伸ばしていくことに主眼を置き、検討を行う。

 1、大学への早期入学(飛び入学)と、高等学校と大学との接続における一人一人の能力を伸ばすための連携(高大連携)の検討の視点について
 飛び入学と高大連携は区別して検討を進め、その上で「一人一人の能力を伸ばす」ための方策について総合的に検討する。

 2、大学への早期入学(飛び入学)制度の適切な運用及びその活用の在り方について
(1)飛び入学の位置付け― 飛び入学は、一人一人の資質の伸長及び学校教育全体としての教育の多様化・弾力化を推進する契機となりうるもので、適切な形での運用・活用が一層図られる必要がある。
(2)これまでの飛び入学の実施状況等― 千葉大四一名、名城大二〇名、会津大一名を受け入れているが、昭和女子大、成城大、エリザベト音楽大では受け入れ実績がない。件数が伸びてこなかった要因として、▽個人・大学・社会にもたらされる効果が明確ではない。▽必ずしも実施する必要がない。▽年齢に基づく「公平性」「平等性」の考え方が強く存在する。▽定められた年齢よりも早く進級・進学するという文化に慣れていない。▽出願の際に推薦を行わない高校がある。▽大学が制度の導入による業務の増加を望まない。▽一般学生と同じ学費で飛び入学生を対象に特別に手厚い教育環境を整備することは、学生への説明責任に耐えられない等が考えられる。
(3)飛び入学制度の活用に向けて―「特に優れた資質」の捉え方について大学・高校相互の連携協力を深め、選抜方法・指導体制の在り方についてより柔軟なものにする。また、飛び入学実施大学においては、▽高校と共同して研究を進める。▽バランスの取れた人格、優れた資質を社会に還元できる人材の育成を目指す。▽指導力の高い教職員の育成に努める。▽アドミッション・ポリシーの中で飛び入学の位置付けの検討を行う等が求められる。
(4)その他―現在の飛び入学制度は十分に評価できる段階まで定着しておらず、社会的認知度も低いため、広く一般の生徒を対象とするような社会的合意は形成されていない。したがって飛び入学に係る年齢要件及び対象者の考え方の見直しには慎重な検討が必要であり、当面、現行制度を踏まえつつ、その積極的活用によって生徒一人一人の能力・適性に応じた教育を進めていくことが適当と考える。

 3、高等学校と大学との接続における一人一人の能力を伸ばすための連携(高大連携)の在り方について
(1)高等学校と大学との接続における一人一人の能力を伸ばすための連携の位置付け―高大連携の取組は、大学入学者選抜のみがクローズアップされるといった偏重に風穴を開け、両者の接続を円滑にするための有効な手段となる。
(2)高等学校と大学の連携の状況―高大連携の実質的な意義についての理解が高校教員・大学教員の間で広がっていない。
(3)一人一人の能力を伸ばすための、高大連携の促進に向けて―高校・大学間で双方向の関係を構築し、大学には、▽特定分野で卓越した能力を持つ高校生に対して大学レベルの教育研究に触れる機会を提供するという視点のほか、▽専門的な事項について強い意欲や関心を持つ高校生に対し高等教育機関が提供する多彩かつ多様な教育に触れる機会を広く提供するという視点、▽高校生のニーズに対応した魅力ある科目の設定や授業展開を図るという視点も重要である。また、国は多様な高大連携の取組を支援するためのプログラムを更に拡充し、高校・大学間の接続環境の改善に努める必要がある。
(4)連携取組促進のための留意点―指導内容・指導体制、個々の生徒の能力・意欲の把握、単位付与等に留意する必要がある。
(5)その他―高大連携には、▽高校生に進路についての目的意識を持ってもらう。▽高校教員・大学教員の有効な研修機会となる。▽地域社会に教育研究成果を還元する等の様々な目的・効果・機能がある。

 4、高等学校と大学との接続において、一人一人の能力を伸ばすための、早期入学・高大連携の振興について
 各高校・大学には、その個性・特色、生徒の能力・意欲等に応じ、飛び入学や高大連携に係る各種取組を適切かつ総合的に活用し、一人一人の能力を伸ばすための教育の推進を期待する。国は、各高校・大学の自主的取組を支援するため、必要な情報提供、財政的支援、その他の環境整備に努めるべきである。

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