平成19年2月 第2264号(2月28日)
■空気を綺麗にする自動車など イノベーション25の中間とりまとめ
政府は去る二月二十六日、「二〇二五年までに日本が目指すべきイノベーションの姿」をまとめた「イノベーション25」の中間とりまとめを公表した。日本は今後、地球温暖化問題等の諸課題に対応しなければならないが、その原動力として「イノベーション」が重要視されている。このたびは、国民から広く募集した「二〇二五年の日本」における様々なアイディアが提案され、実現のための基本戦略や早急に取り組むべき政策課題なども盛り込まれた。
イノベーションとは、単に技術革新だけではなく、これまでのモノ、仕組みなどに対して、全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすことを指す。
日本や世界にとって、人口増加、地球温暖化・気候変動などの共通課題を克服しつつ、経済成長をもたらすには、イノベーションこそがカギである、という認識が広まっている。日本においても「出る杭」は伸ばしながら、想像性豊かな発想が生まれやすい環境を整えるなどの仕組みづくりと人づくりが重要である。
また、日本のクリーンエネルギーやグリーン技術は世界で最も進んでいることから、特に環境を経済成長と国際貢献のエンジンにしていくことも重要である。
こうしたイノベーションを推進していく四つの基本戦略は次の通りである。
一、科学技術・社会・人材のイノベーションの一体的な推進:イノベーションが連続して起こるよう、様々な壁を取り払って科学技術の芽を作り出し、最終製品・システムにまで育てる「科学技術イノベーション」、イノベーションを誘発しやすい環境を作り出す「社会イノベーション」、イノベーションを生み出す人を作り出す「人材イノベーション」を一体的に推進していく。
二、国民一人ひとりの意識改革:今後は、@組織主義から個人能力発揮主義へ、A内向きの競争から世界との競争と協調へ、B自前主義から開放・協働主義へ、C失敗を許さない社会から失敗を活かす社会へ、D石橋を叩いて渡る文化からスピードを重視する文化へ、E同じ価値を持つ者の集まりから異との出会い、融合機会の増へ、と意識変革しなければならない。
三、オープンでユニバーサルなシステム構築:効率的な研究開発と市場化等が求められることから、官民共に、自らの強みを伸ばして世界と競争すると共に、弱いところは他者と連携する「オープン」な取組を積極的に展開すべきである。
また、皆が利用してその上で新たなイノベーションを実現できるユニバーサルなインフラの構築を行い、それをイノベーションを目指す多くの企業・組織・個人にオープンにし、利用してもらうことを目指すべきである。
四、日本と世界の生活者の視点に立脚した戦略作り:国の政策や企業の事業計画作りにあたっては、生活者の視点に立脚するべきである。さらに、地球環境問題に代表されるように、世界を意識した戦略作りを行うべきである。
また、早急に取り組むべき政策課題の一つに大学改革を挙げている。世界の大学は、国際間での大学連携、グローバル企業との産学連携、留学生・社会人・学生の競争・連携拠点として、ダイナミックに変革を遂げている中、日本の大学も競争に巻き込まれている。
日本の大学も世界にオープンになり、多くの外国人が学び、切磋琢磨することで、新たな活力を創造する場として再生し、活力ある多様な人材を多く生み出す場となるべきである。大学改革における検討課題としては、@大学院、学部各レベルでの国際化の推進、A大学の教育、研究、両面にわたる国際競争力の強化、B文系・理系区分の見直し、C大学入試におけるAO入試の更なる活用、D競争的資金配分の見直しを含む研究機能の強化、E社会人教育の強化を含む教育機能の強化など。
なお、国民や科学者から募集した二〇二五年のイノベーションについて、その一部を提示した。
○カプセル一錠で寝ながら健康診断:マイクロカプセルを就寝前に飲むと、朝には全ての健康状態が判っているなど、常時健康診断が可能となる。
○走れば走るほど空気を綺麗にする自動車:人工光合成技術の利用等により、CO2をエネルギー源として走る車が実現する。
○ヘッドホンひとつであらゆる国の人とコミュニケーション:人工知能、音声認識技術の高度化等による高度自動翻訳機能を備えたヘッドホンで、日本語と外国語との壁がなくなり、あらゆる国の人とのコミュニケーションが広がる。
○ロボットが月旅行:ロボットを月面に送り、観測作業を行わせ、無事地球に帰還させる。
高市早苗イノベーション担当大臣は、記者会見の中で、「国民のコンセンサスを得るべく積極的にPRを展開し、官民一体となって取り組んでいきたい」と訴えた。今後は、五月末に向けて政策のロードマップ作り等長期の戦略指針の検討を進めていく予定である。