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平成19年2月 第2264号(2月28日)

貴い亥年の恩師

明星大学理事長・いわき明星大学理事長 斎藤和明

 明星学苑は、中学の前身の明星実務学校が創立された大正十二(一九二三)年から、その歴史が始まります。したがって来年は、八五周年を迎えることになります。その明星の創立が亥の年でありました。
 亥年生まれの私は、昭和二十二(一九四七)年に、これも亥年ですが、明星中学校に入学しました。その年、六・三・三制が敷かれます。新制中学が発足したのです。しかし私立の中学では、上級生に四年生、五年生がおりました。皆、おじさんのような、です。男子校でしたから。
 翌年になって、高校が開校され、中学三年生は高校一年になり、四年生は高校二年に、五年生は高校三年に進級します。
 私は、明星での六年を過ごして高校卒業の後、国際基督教大学(ICU)へ進みます。高校時代、ある文章を読み、衝撃を受け、その文章の筆者の研究する英文学を勉強したいと思いました。本屋で、その学者の英文学史、英詩概論やシェイクスピア、ミルトンなどの本を読み漁ります。この先生が教える大学に行きたい。その先生の指導を受けたいと願いました。ですが、先生は教鞭を執られるとともに、学長職もされており、なんと、その大学は東京女子大学。男子学生禁制の場。残念でした。
 私の入学後、実は、先生はICUに移られたのです。狂喜乱舞しました。小さい大学なので先生のすべての講義に参加。学部で、大学院で、論文指導教授になっていただく。奨学生になり、その義務としての先生のお手伝い。卒業後は助手としてもご指導を受け、やがて先生がご退任の後、英文学を受け持つということになったのです。
 思えば、先生に師事できたおかげで文学研究の面白さを知り、どれほど人生が豊かになったことか。また、七年前からの母校・明星学苑での今の仕事に、理事会運営に必要な広い視野、幼稚園から大学までの学苑経営のための感覚と知恵、教育の根本にあるものの理解、学苑で学ぶ幼児から学生までの保護者の、また、学苑を超えて町や国や、いや、全世界の人びとの苦痛を自分自身の苦痛として苦悩する者をいたわる心など、貴重な教訓と訓練と経験がICUで与えられていたような気がするのです。
 その恩師とは斎藤 勇先生。不思議な一致ですが、偶然、先生の姓と私の姓が同じ。先生が福島県出身で、私の本籍も福島県。偶然の糸が何本か縒れています。さらに、先生は亥年生まれだったのです。

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