平成19年2月 第2263号(2月21日)
■3分類から5分類へ 「敬語の指針」を答申
文化審議会(阿刀田 高会長)の第四二回総会が去る二月二日、東京都内で開催され、「敬語の指針」が阿刀田会長から伊吹文明文部科学大臣に答申された。同答申は平成十七年三月に文部科学大臣から「敬語に関する具体的な指針の作成について」が諮問され、同審議会国語分科会にて審議を行っていたもの。
指針では、敬語の分類をこれまでの三分類から五分類とし、実際に使う場合の疑問や問題点について、三六の例を挙げて解説している。
「敬語の指針」の概要は次のとおり。
指針の性格
敬語が必要だと感じているけれども、現実の運用に際しては困難を感じている人たちが多い。そのような人たちを主たる対象として、社会教育や学校教育など様々な分野で作成される敬語の「よりどころ」の基盤、すなわち、〈よりどころのよりどころ〉として、敬語の基本的な考え方や具体的な使い方を示すもの。
第一章 敬語についての考え方
1、基本的な認識
○敬語の重要性は、次の点にある。
@相手や周囲の人と自分との間の関係を表現するものであり、社会生活の中で、人と人がコミュニケーションを円滑に行い、確かな人間関係を築いていくために不可欠な働きを持つ。
A相手や周囲の人、その場の状況についての、言葉を用いる人の気持ち(「敬い」「へりくだり」「改まった気持ち」など)を表現する言語表現として、重要な役割を果たす。
○敬語は、人と人との「相互尊重」の気持ちを基盤とすべきものである。
○敬語の使い方については、次の二つの事柄を大切にする必要がある。
@敬語は、自らの気持ちに即して主体的に言葉遣いを選ぶ「自己表現」として使用するものである。
A「自己表現」として敬語を使用する場合でも、敬語の明らかな誤用や過不足は避けることを心掛ける。
2、留意すべき事項
(1)方言の中の敬語の多様性
全国共通語の敬語と並ぶものとして、将来にわたって大切にしていくことが必要である。
(2)世代や性による敬語意識の多様性
敬語の使い方の違いには、その敬語についての理解や認識の違いが反映していることを考慮するとともに、他者の異なる言葉遣いをその人の「自己表現」として受け止めることが大切である。
(3)いわゆる「マニュアル敬語」
場面ごとに過度に画一的な敬語使用を示す内容とならないよう注意する必要がある。ただし、マニュアル自体は敬語に習熟していない人にとっては有効である。
(4)新しい伝達媒体における敬語の在り方
社会の各方面で、それぞれの目的や状況に即した工夫や提案がなされることを期待する。ここでも「相互尊重」と「自己表現」が原則である。
(5)敬語についての教育
人が社会生活において敬語を活用できるようになる過程では、学校教育や社会教育での学習と指導が重要な役割を果たす。
第二章 敬語の仕組み
1、敬語の種類と働き
○敬語は、次の五種類に分けて考えることができる。
尊敬語―「いらっしゃる・おっしゃる」型〜相手側又は第三者の行為・ものごと・状態などについて、その人物を立てて述べるもの。
謙譲語T―「伺う・申し上げる」型〜自分側から相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて、その向かう先の人物を立てて述べるもの。
謙譲語U(丁重語)―「参る・申す」型〜自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。
丁寧語―「です・ます」型〜話や文章の相手に対して丁寧に述べるもの。
美化語―「お酒・お料理」型〜ものごとを、美化して述べるもの。
2、従来の三種類との関係
○敬語は「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の三種類に分けて説明されることが多い。ここでの五種類は、従来の三種類に基づいて、現在の敬語の使い方をより深く理解するために、三種類のうち、「謙譲語」を「謙譲語T」と「謙譲語U」に、また「丁寧語」を「丁寧語」と「美化語」に分けたものである。
第三章 敬語の具体的な使い方
敬語の具体的な使い方に関する様々な疑問や問題点に対して、どのように使えばよいのか、また、どのように考えればよいのかを、以下のような三つの節に分けて問答形式で解説していく(問いは、全部で三六問)。
(1)敬語を使うときの基本的な考え方(六問)
(問いの例)―敬語は、人間を上下に位置付けようとするものであり、現代社会には、なじまないようにも思う。どう考えれば良いのだろうか。
(2)敬語の適切な選び方(一二問)
(問いの例)―駅のアナウンスで「御乗車できません。」と言っているが、この敬語の形は適切なのだろうか。
(3)具体的な場面での敬語の使い方(一八問)
(問いの例)―保護者からの電話で、同僚の田中教諭の不在を伝えるときに、「田中先生はおりません。」と伝えたが、それで良かったのだろうか。それとも「田中はおりません。」と伝えた方が良かったのだろうか。