平成19年1月 第2260号(1月24日)
■新刊紹介
日本の進路 アジアの将来「未来からのシナリオ」 西原春夫 著
このたび、西原春夫氏(元早稲田大学総長)が、「未来からのシナリオ」を副題として、近現代の歴史の深層を抉り、正しい歴史認識に立って「覇道」でなくアジアの「王道文化」に根ざした「積極型平和貢献国家」を目指すべきことを提言した、まさに私たち日本人にとって基本的な歴史認識書であり、今後への基本テキストともなるべき書を刊行した。
構成は、二十一世紀の世界とアジア予測から始まり、グローバリズムとナショナリズム、アジアの中の日本、積極型平和貢献国家へ、道徳、儒教、そして平和、今なすべきこと、の六章から成り、極めて豊富な学殖と鋭い分析、戦中戦後を通じて七〇数年の実体験とグローバルな活躍等に基づく卓越した着想等によって、歴史の深層・真意を掘り起こし、その深い歴史認識に則った現在・未来に向けての提言が展開されている。
明治以後の日本が、十九世紀的国家観に基づく欧米列強の植民地主義強行的国際環境の中で、新たに西洋型の考え方を導入し、後進者としてやむにやまれぬ立場から「追いつけ、追い越せ」の国家目標に至り、歴史的経過も歴史教育もある種のフィルターを通して展開されることになり、真意は明かされないまま、遂に取り返しのつかない世界大戦に突入、そして敗戦・被占領・自主権回復・経済成長と経てきたが、この間にも国際的立場もあってか、またも別のフィルターが掛けられて真意不明の経過が展開されてきた観があるが、そこに光を当て整理分析して正しく認識した上で、「二十一世紀の後半には、アジアを含め世界中どこでも国境が低くなり、それにつれて地域的な超国家組織が段階的に形成されて利害対立の調整役を演ずるようになる」ことを予見し、その中で日本が何を為すべきかを説き、改めてアジアの儒教精神に則った王道理念をベースとした、積極型平和貢献国家形成の必要性が提言されている。
日本の進路 アジアの将来「未来からのシナリオ」、四六版、三〇六頁、定価・本体一八〇〇円(税別)、発行所=講談社、TEL〇三―五三九五―三六二二(販売)。