平成19年1月 第2260号(1月24日)
■19年度予算案 グローバルCOEなどに重点
既報のとおり、文部科学省の平成十九年度予算案の中から、科学技術創造立国の実現のための予算である科学技術・学術関係三局の予算案のポイントを掲載する(内訳を除くカッコ内は対前年度比較の増減。△印は減)。このたびは、二十一世紀COEプログラムの後継に当たるグローバルCOEプログラムなどに重点的に予算がおかれた。
T 科学技術関係人材の育成、確保、活躍の促進
(1)次代を担う人材への理数教育の充実 一〇八億二七〇〇万円(二一億六〇〇〇万円)
概要:次代を担う科学技術関係人材を養成するため、子どもが科学技術に親しみ、その能力を伸長することができる効果的な環境を提供する。▽理数好きな子どもの裾野の拡大(理科支援員等配置事業【新規】二〇億円、ティーチャーズ・サイエンスキャンプ(理科教員指導力向上研究)【新規】二億円)、▽理数に興味・関心の高い生徒・学生の個性・能力の伸長(スーパーサイエンスハイスクール(一四億四四〇〇万円)、国際科学技術コンテスト支援(二億五〇〇〇万円))
(2)若手、女性、外国人が活躍できる環境の形成 六〇〇億三八○○万円(二九億七三〇〇万円)
概要:世界をリードする質の高い研究者を養成すると共に、若手、女性、外国人など多様な人材が能力を発揮できる創造的、競争的な環境を整備する。▽若手研究者の自立支援(「若手研究(S)」(仮称)の新設(科学研究費補助金)【新規】一三億円、若手研究者の自立的研究環境整備促進(科学技術振興調整費)五〇億円、若手研究者への国際研鑽機会の充実 四億七六〇〇万円、▽女性研究者の活躍促進(女性研究者支援モデル育成(科学技術振興調整費)八億万円、出産・育児による研究中断からの復帰支援(特別研究員事業)二億六二〇〇万円)、▽外国人研究者の活躍促進(六八億二一〇〇万円)
(3)大学における人材育成機能の強化と産学が協働した人材育成 八六二億二八〇〇万円(△五億七五〇〇万円)
概要:大学院教育の抜本的強化や卓越した教育研究拠点の形成、人材養成面での産学連携の強化などにより、社会のニーズに対応した人材養成を行うとともに、博士号取得者等の科学技術関係人材が社会の多様な場において高度な専門性を生かして活躍することを促進する。▽大学における人材育成(大学院教育改革支援プログラム【新規】三五億一〇〇万円、グローバルCOEプログラム【新規】一五七億五八〇〇万円、特別研究員事業(大学院博士課程在籍者)九七億六八〇〇万円)、▽産学が協働した人材育成(サービス・イノベーション人材育成推進プログラム【新規】一億五〇〇〇万円、ものづくり技術者育成支援事業【新規】一億五〇〇〇万円、ものづくり人材のための専門高校・地域産業連携事業【新規】三億七八〇〇万円)、▽博士号取得者等の産業界等での活躍促進(科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業 四億一七〇〇万円)
(4)科学技術に関する理解と意識の醸成
概要:科学者等が分かりやすく親しみやすい形で国民に科学技術を伝え、国民との対話を通じて説明責任と情報発信を強化する活動を推進する。▽地域の科学舎推進事業 八億七〇〇万円、▽独立行政法人国立科学博物館 三二億二二〇〇万円、▽日本科学未来館 二八億五九〇〇万円
U 基礎研究の充実とイノベーション・システムの強化
(1)独創的・先端的基礎研究の推進
@大学・大学共同利用機関等における独創的・先端的基礎研究の推進 九二八億七六〇〇万円(△七億九七〇〇万円)
概要:大学等において研究者の自由な発想に基づく、世界をリードする研究成果を生み出す独創的・先端的な基礎研究を推進する。「スーパーカミオカンデ」によるニュートリノ研究の推進、大強度陽子加速器計画の推進(高エネルギー加速器研究機構)、アルマ計画の推進、「大型ヘリカル装置」による核融合科学研究の推進等。
A世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラムの推進【新規】三五億円
概要:世界に通用するポテンシャルのある分野において、世界トップレベルの研究拠点構築を加速する。
(2)競争的資金の拡充等による研究開発の推進 三六九〇億四〇〇〇万円(一〇六億三二〇〇万円)
概要:研究者の研究費の選択の幅と自由度を拡大し、競争的な研究開発環境の形成に貢献すると共に、イノベーションの源を潤沢化するため、科学研究費補助金等の競争的資金の拡充(間接経費の拡充を含む)を図る。▽競争的資金の拡充(科学研究費補助金 一九一三〇億円、科学技術振興調整費 三六八〇億円、▽研究費の効果的・効率的運用の一層の徹底(府省共通研究開発管理システムの構築・運用 一億三八〇〇万円、研究費の適正な執行に係る指導等を強化するための体制整備【新規】二二〇〇万円)
(3)イノベーションを生み出すシステムの強化
@基礎研究からの技術シーズの創出 五二九億八六〇〇万円(二〇億四五〇〇万円)
概要:基礎研究からイノベーションの種となる技術シーズを創出するため、優れた研究課題のポテンシャルを見極め、より効果的に研究開発を進める仕組みを充実する。▽戦略的創造研究推進事業 四七三億八六〇〇万円、先端融合領域イノベーション創出拠点の形成(科学技術振興調整費)五六億円
A産学官連携の本格化と加速 三二四億八二〇〇万円(一三億一三〇〇万円)
概要:産学官連携・知的財産戦略は、独自の基礎研究成果から絶えざるイノベーション創出を実現していくための重要な手段であり、その持続的・発展的な展開に向けて本格化と加速を図る。▽国際的な産学官連携の推進体制の整備等(大学知的財産本部整備事業)二九億五五〇〇万円、▽技術移転支援センター事業の推進 二六億四二〇〇万円、▽大学等の研究成果を基にした本格的な共同研究等の推進(潜在的なシーズを産業界の視点により顕在化し、産学が共同して行うフィージビリティスタディや本格的な研究開発をマッチングファンド形式で推進する 一八億円、革新的な研究開発型ベンチャーを活用した企業化開発を推進する【新規】一億五〇〇〇万円)
B地域イノベーションの強化 二五二億七一〇〇万円(五億九八〇〇万円)
概要:地域の大学等公的研究機関を核に、産業ニーズ等を踏まえた新技術シーズを生み出すための産学官共同研究を実施し、新技術・新産業の創出等を図る。「地域クラスターの形成」の支援 一三五億一八〇〇万円、▽地域イノベーション創出総合支援事業(九四億一一〇〇万円)
C科学技術振興のための基盤の強化 五四五億四七〇〇万円(一〇五億三一〇〇万円)
概要:先端的な研究施設・設備・機器、研究情報基盤や知的基盤等の整備や効果的な利用を促進する。▽先端研究施設共用イノベーション創出事業の推進【新規】三一億八〇〇〇万円、▽先端計測分析技術・機器開発プロジェクトの推進 一〇三億八六〇〇万円、▽特定先端大型研究施設の整備・共用の推進 二五一億五四〇〇万円、▽研究開発に関する情報化の推進 四八億三六〇〇万円
V 国家基幹技術など戦略重点科学技術への重点投資
(1)分野別研究開発の戦略的推進
@ライフサイエンス 六八七億五八〇〇万円(三億八五〇〇万円)、A情報通信 五四五億三一〇〇万円(二五億四九〇〇万円)、B環境 七七〇億二〇〇万円(一一七億四三〇〇万円)、Cナノテクノロジー・材料 三三三億一六〇〇万円(四〇億九六〇〇万円)、D原子力 二六二〇億九五〇〇万円(△四二億七二〇〇万円)、E宇宙・航空 一八四〇億二〇〇万円(三六億九四〇〇万円)、F南極観測・海洋地球科学技術 五一九億八〇〇万円(五二億六二〇〇万円)、G地震・防災 一九二億二五〇〇万円(△一二億八六〇〇万円)、Hものづくり技術 五五億一一〇〇万円(六億六〇〇〇万円)、I新興・融合分野 二九八億一五〇〇万円(五四億六六〇〇万円)
(2)国家基幹技術への集中投資
@宇宙輸送システム 三七八億五九〇〇万円(一二三億二〇〇〇万円)、A海洋地球観測探査システム 二一一億九七〇〇万円(六六億円)、B高速増殖炉サイクル技術 二九六億七八〇〇万円(五五億五二〇〇万円)、C次世代スーパーコンピュータ 七七億三六〇〇万円(四一億八九〇〇万円)、DX線自由電子レーザーの開発・共用 七四億七三〇〇万円(五一億六七〇〇万円)
(3)安全・安心に資する科学技術の推進 一六九億五八〇〇万円(△八億三二〇〇万円)
概要:安全・安心な社会の構築に資する科学技術の研究開発等を推進する。▽安全・安心に資する科学技術の推進【新規】四億五〇〇万円、▽個々の脅威に対する対策技術の研究開発等 一六五億四四〇〇万円
(4)経済活性化のための研究開発プロジェクトの推進 六二二億六九〇〇万円(二〇二億二八〇〇万円)
概要:大学等での研究開発の成果や産学官の技術力の活用等により、実用化を視野に入れた研究開発プロジェクト等を戦略的に推進する。▽キーテクノロジー研究開発の推進 一五九億六七〇〇万円、▽リーディングプロジェクトの推進 一四六億二二〇〇万円、▽世界最高性能の研究設備の整備 一五二億一〇〇〇万円、▽宇宙・航空分野における産業化・利用の推進 九九億二三〇〇万円
W国際活動の戦略的推進
(1)科学技術の国際活動の強化に向けた取組 一六九億五二〇〇万円(二億五六〇〇万円)
概要:科学技術・学術分野の国際活動への取り組み強化と優秀な外国人研究者の定着促進や若手研究者の海外での活躍・研鑽機会の拡大を推進する。▽外国人研究者定着促進支援【新規】三〇〇〇万円、▽戦略的国際科学技術協力推進事業 一〇億円、▽若手研究者への国際研鑽機会の充実 四億七六〇〇万円、▽アジア諸国との協力 二六億二三〇〇万円