平成19年1月 第2259号(1月17日)
■中国工程院副院長 旭日干博士が来訪
中国・内蒙古自治区研究員1期生
平成十八年十月、中国の内蒙古大学学長から中央の中国工程院副院長の要職に栄進された旭日干(シュルガン)博士は、学会・国際会議出席のため来日していたが、多忙な日程の中、去る一月十二日、日本私立大学協会を訪問した。
同博士は、中国・内蒙古自治区政府からの要請によって始まった同協会との研究員受入れ協議に基づく第一期生として、昭和五十七年四月に来日した。
受入れた日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)から筑波の畜産試験場に出向し、昭和五十九年三月、同博士は、当時至難の研究とされていた『山羊の体外受精』を見事に成功させ、一躍世界の注目を集めた。無事に出産した山羊の試験管ベビーを抱いた旭日干研究員(当時)の写真が世界を駆け巡ったことは記憶に新しい。
この研究成果によって獣医学博士の学位を取得されて帰国した同博士に対し、内蒙古自治区政府は直ちに内蒙古大学に実験動物研究センターを新築して、主任教授として迎えた。その後次々と発表される研究成果により“内蒙古に旭日干博士在り”とその声価が高まり、中国において蒙古族を代表する「民族英雄学者」の称号を得ている。
さらに、内蒙古大学学長に就任した後、中国に新設された「中国工程院院士」に、蒙古族からただ一人選任されたほどである。そして、定年後も“余人を以って替え難い”とのことで学長職を歴任していたが、昨秋、中央の「中国工程院副院長」に栄進し、今後は北京で中国国家としての高い立場から中国の学術発展に尽力されることになった。
この度は、(独)農業・食品産業技術総合研究機構(堀江 武理事長)の畜産草地研究所の招聘で来日し、京都で開催された国際繁殖学会で、中国の現状を発表するとともに、筑波の同研究所で開かれた国際シンポジウム「二〇〇七年動物バイオテクノロジー筑波会議」(一五か国参加)においても「体細胞クローン技術の進展」と題して、中国の事情について講演した。
中国工程院については、日本ではあまりよく知られてはいないが、そのステータスは極めて高く、今回の来日に当っては、中国大使館の高官が正式にその対応をしていた。
同博士の日本私立大学協会への訪問は約一〇年ぶりであったが、小出秀文事務局長が温かく迎え、さらに同協会のOBで元内蒙古・新疆学術交流委員会幹事の都竹武年雄氏も同席して、和やかに懇談した。