平成19年1月 第2257号(1月1日) 2007年新春特別号
■2007年―年頭所感
創立60周年の決意を具現化する
新年明けましておめでとうございます。
今年は丁亥(ひのとゐ)、私学にとっては一段と厳しい状況下ですが、干支のように猪突盲進とならないよう、それぞれの大学が目指す方向に全学一丸となって猛進したいものです。
さて、昨年末、中央教育審議会では、大学全入時代という二〇〇七年からのユニバーサル化に向けて、多様な学生に対する学部教育、いわゆる学士課程教育をどう構築していくかの審議を継続して行っています。今月で同審議会委員の任期が終了しますが、この審議は次の第四期に引き継ぐことになっています。
単に学部教育ということではなく、「学士課程教育」として、主に次の三項目について議論されます。入り口の、@アドミッション・ポリシー(入学者選抜や初年次教育)をどうするのか。次に、入学した学生に対する、Aカリキュラム・ポリシー(教育の中身)をどう決めるのか。更に、卒業時の、Bディプロマ・ポリシー(学修の評価や学位の授与)をどう規定するのかなど、多岐にわたる審議が行われることになっています。
具体的には、@では、大学の個性や特色、またはA、Bを踏まえた客観的基準を明確化すること、学力試験や高等学校での履修科目指定等の適切な実施などということになります。Aでは、教養教育科目の減少や四年間の一貫した学士課程教育の在り方やキャリア教育、資格課程の位置付け、更に、教育方法についても単位制の実質化に向けた改善などが含まれています。CBでは、学生に身に付けさせるべき学修成果の明確化、国際的通用性の観点からの学士課程教育の枠組みづくりに伴う出口管理のほか、社会との関係における大学の自主性・自律性の在り方などに焦点が当てられます。
これらの改革を推進する一方で、昨今の国立大学の法人化に伴う諸動向や構造改革特区で認められた株式会社立大学に係る規制緩和等は、大学等の教育体系を一層複雑なものにしています。このことは、自主性・公共性・永続性を担保して公教育を担う私立学校を設置する学校法人制度にとって、由々しき問題となっています。
われわれ私学人は、戦後つくられた、この学校法人制度がこれまでに果たしてきた役割の有為性を、広く行政機関や社会に問い直さなければなりません。
昨年十一月三十日に開催した本協会の創立六〇周年記念式典において、私は加盟大学の総意としての、建学の精神に基づく人間教育の推進、大学教育の在り方、地域をはじめとした社会の活性化への貢献に関する決意表明を読み上げました。
各大学は今後、具体的にどう対応していくのかを考えなければなりません。そうすることによって勝ち残る道も開けてくるはずなのです。特に、全国に展開する本協会の加盟大学は、それぞれの地域で「地域から敬愛される大学」「地域と連携の図れる大学」となるように特色を活かし、オンリーワンを目指したいところです。そのためには、力を合わせて新しい方策を模索していくことも必要になってくると思われます。
「チャンスは準備された心に味方する」とのパスツールの言葉を胸に刻み、がんばる所存ですので、よろしくお願い申し上げます。