平成18年12月 第2255号(12月6日)
■創立60周年記念式典・祝賀会を開催
伊吹文科大臣・鳥居私学事業団理事長・森元総理大臣・
白井全私学代表らが祝辞
人材育成・知的創造・社会貢献を決意表明
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る十一月三十日(木)、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷を会場に、同協会創立六〇周年の記念式典・祝賀会を開催した。午後四時三〇分からの記念式典は、加盟校の理事長・学長のほか来賓等約三〇〇名を迎え、開式の辞、国家斉唱、物故者慰霊黙祷のほか、大沼会長の式辞、黒田副会長の六〇周年決意表明、伊吹文明文部科学大臣及び鳥居泰彦日本私立学校振興・共済事業団理事長の来賓祝辞が整然と行われた。なお、会場の関係で、モニターによる別会場も用意された。また、六時から開会された記念祝賀会には、記念式典出席者のほか、約三〇名の文教関係国会議員等、さらに文部科学省、私学関係団体等から約六〇〇名が出席し、ファンファーレを合図に開宴となり、森 喜朗元内閣総理大臣及び全私学代表の白井克彦早稲田大学総長の来賓祝辞が述べられ、橘重義同協会最高顧問の乾杯の音頭で祝宴となり、人生での“還暦”に当たる六〇周年を機に、出席者たちは私学振興の新たな決意を確認した。
記念式典
「霜月の晦、紅葉残りつつも冬仕度のご多忙の中、ご出席感謝致します」との小出秀文事務局長の司会のことばで開会し、同記念事業実行委員長の廣川利男副会長が「私学は、我が国の高等教育の発展に努力し、今日では、学校数・学生数とも高等教育の約七割を担っている。今後とも、加盟校の力を結集して学校法人の設置する私立大学の振興に邁進したい」と開式の辞を述べた。
次に、国歌斉唱が行われ、小林一男国立音楽大学教授が独唱し、出席者たちも唱和した。また、物故者慰霊黙祷では、昭和二十一年十二月七日の同協会創立以来、私学のため、ひいては高等教育、我が国の教育のために尽力された同協会の役員、評議員、職員等に対して感謝の誠を捧げた。
式辞に移り、登壇した大沼会長は、同協会六〇年の来し方を顧るとともに、その間の私学振興のための諸活動の成果を述べた上で、今後の課題、歩む方向などについて語った。
「我が国の高等教育に対する公財政支出の対国内総生産(GDP)比率は〇・四%と極めて低く、欧米諸国の半分にしか過ぎない。にもかかわらず今日まで、先進諸国と伍してこれたのは、私学高等教育の普及、すなわち民間の教育費負担によるものである。また、昭和五十年制定の私立学校振興助成法の下、昭和五十五年に私学への経常的経費への補助金割合が二九・五%となったものの、その後、減少し続け、平成十六年には一〇%そこそこになってしまった。このことと今日の一八歳人口の減少とが私立大学の財政運営に暗い影を落としている。私学が約七割を担う高等教育は、まさに私学が「教育」を先導していると言っても過言ではなく、私立学校振興助成法及び学校法人制度は、諸外国にはない、世界に誇れるシステムであり、私学に対する支援策こそ、強化・拡充されて然るべきである。他方、国立大学の法人化や株式会社立大学等の動向は、公教育体系としての学校法人制度の根幹を揺るがしかねないものと憂慮している」
このほか、同協会の設立した附置私学高等教育研究所、(財)日本高等教育評価機構にも触れ、高等教育の質の向上に寄与すること、さらに、国会で審議中の我が国の教育理念を再構築した教育基本法改正案の早期成立に期待していることなどを述べた。
最後に、加盟三七一大学の責務と役割を果たすため、不断の努力をする決意として『六〇周年決意表明』を披露したいと結んだ。
その決意表明は別掲の通りであり、黒田壽二副会長が力強く読み上げた。
引き続く来賓祝辞では、まず、伊吹文明文部科学大臣(代読・近藤信司文科審議官・文化庁長官)から、「戦後の荒廃の中で教育の振興に努力され、学術研究水準の向上に努めてこられた」と敬意を表すとともに「私学の重要性をうたっている教育基本法改正案の成立に努力し、建学の精神の下で社会に多大な貢献をされる皆さんを支援していきたい。伝統と実績の上に、益々発展されることを祈念したい」と述べた。
続いて、鳥居理事長から「これまで、大学審、中教審等で私立大学の振興については、先程の決意表明の中で述べられた、三項目と符合する内容を議論してきた。一番目は『人間形成』、二番目は『知的生産』、三番目は『文明の継承』とも言える。これらは、明治以来の大学の理念とも同様であり、今後もその使命を追求していかなければならないものである」と語った。そのほか、評価文化の醸成、年金一元化問題など多岐にわたる課題について示唆に富んだ祝辞を述べた。
記念式典は森田嘉一副会長の閉式の辞で終了した。