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平成18年11月 第2252号(11月1日)

進化・発展する長岡大学の地域連携型教育研究
―地域づくり主体としての大学へ― −4− 

長岡大学学長 原 陽一郎

 長岡大学(原 陽一郎学長)は、学校法人中越学園(設置する学校は、高校野球の甲子園全国大会にたびたび新潟県代表として出場している中越高等学校と本学)が設置する大学であり、長岡短期大学の改組転換により、二〇〇一年四月に開学した。同大学は、開学以来七年目を迎え、長岡短大の「地域に開かれ、地域に貢献する大学」の理念を継承した地域連携・共生活動をより重層的に展開するとともに、その地域連携の成果を教育に組み込んだ平成十八年度「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」(現代GP)に選定された「産学融合型専門人材開発プログラム」を全学的に推進している。

 本学は前記のように、「学生に〈充実感、達成感、満足感〉を約束する大学」をめざしている。その核は、現代GPの長岡方式プログラムにおける、ゼミを核にした、企画力・提案力・人間力の形成をめざす「ビジネス展開能力開発プログラム」にある。このプログラムは、ゼミにおける能力形成と学生自身の自主的活動とのコンプレックスとして、展開される。

 十三、長岡大生の学生像―やや内向きで行動力が弱い―
 平成十七年度に行った全学生対象の「学生生活満足度調査」によれば、本学の学生は〈優しく、内向きで対人関係を気にし、冗談は好きだが、目的意識や実行力が弱い〉という傾向が強い。日頃、教員が感じていることが実証された感がある。また、学生の最大の悩みも、就職・将来の進路にあることも明確になった。他方、本学地域研究センターが関わった平成十七年度「雇用促進調査」(長岡地域の企業と大学・高専・専門学校・高校生を対象、経済産業省から受託)によれば、本学学生は、責任感やチームワークはあるが、礼儀正しさ、実行力、専門知識などでは自信がないとの結果が出た。専門知識(学力)もさることながら、企業が要求する積極性や実行力、礼儀正しさなどの社会人基礎力に問題があることが明らかになった。
 われわれはこれを踏まえて、ゼミを核に、企画力や提案力の実践的能力とともに、人間力に通ずる社会人基礎力の形成に全力を注ごうとの結論を得る。

 十四、あいさつ・マナー運動―マナー部がリード―
 本学では、学生の〈礼儀がなってない、マナーが悪い〉との認識から、平成十五年から、マナー・あいさつ運動を継続的に展開してきた。
 「あいさつ」がしっかりできることは社会人として一番大切な資質である。全学生にキャンパスで教員・職員・来校者に会ったら、「おはようございます!」「こんにちは!」「さようなら!」と自分からあいさつすることをルール化してきた。
 この運動は、昨年度から学生のクラブである「マナー部」がリードし、昼休みには「長岡大生はハキハキあいさつしましょう!」という全館放送が流れる。教員も学生にあいさつを実践し率先垂範の姿勢を見せている。担当講義で、全員起立して「おはようございます」「こんにちは」とあいさつしてから講義を始める教員もいる。
 自発的にあいさつする学生の姿を見て、企業講師として来校する経営者、公開講座で来校する市民等の方々から、「礼儀正しい若者達ですね」というお褒めの声が聞かれるようになっている。「長岡大学はすがすがしい、会社と同じだ」と市等の外部の会議で発言する経営者の方もいるという。また、マナーの面でも、「ごみの捨て置き・投げ捨てをしない、喫煙マナーを守る、正しい言葉遣いをする、電話ではまず自分の名前を名乗る」など、重要な社会人としてのマナーを五〇項目程に整理した「学生のためのマナー集」を平成十六年度に作成し、全学生・教職員に配布し、徹底している。まだ完全とは言えないが、目に見えてよくなっているのが実感できる。本学ご来校の際は、ぜひ、体験いただきたい。

 十五、ゼミを核としたマンツーマン指導―目標マネジメントと個人指導―
 ゼミを核にしたビジネス展開能力の開発は、@知識力向上、A目標マネジメント、B生活指導の三つの機能から展開されている。
 @の知識力については、一年次は高校との接続教育(数学と国語)、二年次は文章力錬成、三〜四年次は専門研究による卒業提案作成(企画力、提案力形成)という流れになっている。卒業提案には、連携企業からの提案・指導が加わるが、これは来年度から始まる。 Aの目標マネジメントは、一年次から「自己発展チェック表」(読む、話す、学ぶ等)の項目毎に学生が自分の達成目標を記入し、ゼミで一〜二か月ごとにチェックし、自分の成長・発展を確認するシステムである。昨年度から実施に移しているが、まだ、十分な成果が上がっているとは言えず、制度化をめざした検討・改善が必要な段階にある。
 さらに、Bの生活指導であるが、「マンツーマン指導」と名付け、学生のマナー向上、学習態度の向上、進路の明確化、日常生活や生き方への総合的なアドバイスを行う。ゼミ担当教員は、毎月一回、ゼミの時間以外にゼミ員学生と面談し、講義出席状況、進路・就職活動等について確認し、助言を与える。面談内容等は「マンツーマン指導カルテ」に記入し、学生指導や就職指導に役立てる。今年度から開始しているが、今後、検討が必要であろう(ゼミ学生が多い場合はやりきれない等)。

 十六、学生の自主的活動―地域との交流からオピニオン活動へ―
 本学の学生は、多様なクラブ活動の展開とともに(ユニバーシアード大会に出場した水泳選手も出ている)、学生自治組織である「学友会」を組織し、地域コミュニティと密接に結びつき様々な交流活動も行っている。平成十一年の開学以来、毎年八月一日に開催される「長岡まつり・前夜祭」の御輿渡御に、大学が立地するエリア(悠久町)の町内会有志の組織である悠久会とともに参加し、また、毎年九月に開催される悠久町の祭りや栖吉小学校のPTA主催の多様な行事などにも参画している。一方、毎年十月末に実施している本学の大学祭である「悠久祭」には、右記町内会や小学校の生徒およびPTAが模擬店を出店するなど、相互の交流はますます密となっており、とりわけ「悠久祭」は学生のイベントに止まらず、地域の秋祭りとしての様相を呈するに至っている。
 最近の活動で特筆すべきは、平成十七年十月の「悠久祭二〇〇五」において、悠久祭実行委員会の学生が主催して、「学生による地震復興シンポジウム」が開催されたことである。平成十六年十月二十三日に発生した新潟県中越地震から一周年を迎えるなかで、長岡地域においては行政機関をはじめとして様々な主体によるシンポジウムが開催された。これらのパネリストは行政や産業界のリーダー・学識経験者がほとんどであったのに対し、この学生シンポは趣きを異にした。多くのシンポジウムで等閑に付されていた大学生等の若者や実際に被災しながらも地域の復旧および復興のために率先垂範して尽力している地域の人々をパネリストとした。阪神・淡路大震災以来活動している関西学院大学ボランティアセンターの学生三名と、先頭に立って地域の復興を推進している市民(長岡市議会議員および栖吉小学校PTA会長)を招き、阪神・淡路大震災の教訓、現場での問題点や今後への展望などを立ち入ってディスカッションすることができた。とくに、本学学生のコンビニでのアルバイト時間中に体験した地震への対応とその教訓は、迫真の発言であった。このシンポジウムの反響は予想以上であり、地元の新聞やNHKテレビなどにも大きく取り上げられるところとなった。

 十七、学生・教員・地域の新たな連携活動へ
 この震災復興シンポジウムにはゼミ教員の支援・関与もあったが、今年の「悠久祭」(十月二十八〜二十九日)では、さらに一歩進化した新たな連携活動が見られるであろう。
 一つは「学園都市としてのまちづくりシンポジウム」であり、もう一つは「ベンチャー模擬店」である。双方の企画ともに、現代GP予算からの助成(広報・審査等のみに使用可)が予定されている。前者は学生の観点から、三大学が存在する長岡地域を学園都市として活性化しようとの地域への呼びかけであり、後者の模擬店は、学生自らビジネスプランを作成しその成果を競うという起業家塾の応用プロジェクトである。パネリストや審査員は地域の経営者・有識者・市民を予定。
 これらプロジェクトの成否は不明ではあるが、学生の自主的活動を尊重しつつ、教育の観点を新たに組み込んだ取組みであり、学生・教員・地域の新たな連携活動への一歩を印すことを期待したい。さらにこうした活動を媒介に、ゼミでの諸活動とも相乗して、学生が積極性・実行力を身につけ、ビジネス展開能力の形成にも役立てることも期待したい。(おわり)

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