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平成18年10月 第2250号(10月18日)

進化・発展する長岡大学の教育研究
  ―地域づくり主体としての大学へ― −2−

長岡大学学長 原 陽一郎

 長岡大学の教育プログラムは、本年度「現代GP」に選定された。「産学融合型専門人材開発プログラム・長岡方式」(以下、「長岡方式」と略称)と名付けた本学教育プログラムは、まさに「実践的総合キャリア教育」に相応しい取組と自負している。

五、時代をリードする大学を目指して
  長岡大学の設立の目的は「地域社会に貢献し得る人材の育成、すなわち幅広い職業人の育成」である。大学間の競争が激しくなる中で、長岡大学が“時代をリードする大学”として勝ち残るには、その目的を徹底して追求する以外にはない。
  私たち教職員はこのような問題意識から出発して、地域貢献・連携活動の蓄積を活かして、教育プログラムの革新を行うことを決めた。今から四年ほど前のことである。
  私たちは今日の若者の職業人としての問題点や長岡を中心とする地域の人材ニーズなどの現実を踏まえて議論を深め、この目的を達成するための戦略的重点を「職業人としての基礎力作り」と「職業に直結する実践的な専門学習」の二点に置くこととした。
  一方で、私たちは大学のバリュー・コンセプトとして学生に対して「毎日の大学生活で充実感を、能力アップを確認して達成感を、そして、四年間を振り返って満足感を」実感させることを学生に約束した。ほとんどの学生が就職を目指している本学の学生にとって、究極の満足感は卒業時に満足できる就職先が決まっていることである。
  こうした基本的な考えのぶつかり合いの中から「長岡方式」は生まれてきた。そして、平成十七年度から本格実施に移した。二年目の今年から来年にかけて細部の仕上げが行われる。

六、三つの柱
  「長岡方式」は長岡大学の教育のすべてであると言ってよい。教養・語学科目も、学生の自主活動、クラブ活動も含まれる。教職員と学生、あるいは学生同士の交流も重要な要素である。その中で、三つのプログラムが中核をなしている。
  「ビジネス展開能力開発プログラム」は、企画力、提案力、人間力を鍛えることを目標に四年間必修の少人数ゼミナールで、マンツーマン的な指導が行われる。学生は毎年、各自の目標設定を行い自己評価して能力向上を確かめる。四年次学生は仕上げとして、連携企業の現場の実際の課題を取り上げて専門学習の成果を活かして調査、検討を行い、卒業提案を作成する。
  「資格対応型専門教育プログラム」は、専門学習の中核プログラムで、その学習目標をコースごとに選んだ実践的な職業資格試験合格レベルとして、目標に対応して専門科目を過不足なく配置し、科目間の内容も調整する。
  「産学連携実践型キャリア開発プログラム」は、連携企業の専門実務家が加わる各コースの「連携FDチーム」が体験・実習型および実践学習型の産学連携科目の学習目標と学習内容を定め、連携企業の参加によってビジネス現場に直結した教育を行う。
  産学連携科目には、ユニークで実験的なものがいくつかある。「起業家塾」「企業経営研究」などはその代表的なものである。

七、科学的アプローチと組織能力が基盤、目標マネジメント、連携企業、教育開発がキー
  長岡大学が築きつつあるコア・コンピタンスの第一は科学的・戦略的アプローチ。第二は自律分散型の組織能力。科学的とは、客観的データに基づく論理思考の重視、戦略的とは、目標の設定と最善の手段の適合である。教育も研究も社会貢献も科学的・戦略的に考え、教職員各自の考えと個性を活かしながら組織を挙げて目標達成を目指す。この二つがなければ、「長岡方式」は成り立たない。
  その基盤の上に乗った三つの重要なファクターが「長岡方式」を支えている。第一は適切な目標を立ててそれを着実に達成していく「目標マネジメント」。学生の能力開発と学習も、「長岡方式」の展開も、教職員の意識改革も、長岡大学のすべての活動に目標マネジメントを適用する。第二は連携FDチームに参加して産学連携実践型キャリア開発プログラムとゼミナールの卒業提案を成り立たせる「連携企業」。現在、連携企業には新潟県内の有力企業一四社が名を連ねている。第三が全学を挙げての「教育法開発」活動である。とくに能力開発を主眼とするゼミナールの指導方法は学生の実態に合わせた開発が必要である。(つづく)

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