平成18年10月 第2250号(10月18日)
■福井工業大学
古民家の修復作業終了 小原ECOプロジェクト
福井工業大学(三宅正宣学長)の工学部建設工学科建築学専攻の吉田純一教授とその研究室の学生等が参加するのが福井県北部の山村の活性化事業「小原ECOプロジェクト」。このたび、その一環である、古民家の修復作業が終了した。
同プロジェクトは、福井県勝山市北谷町小原地区の自然や歴史文化を生かし、地域の再生、活性化を図るもので、同地区区民や小原生産森林組合員が主体となって、これまでに山道整備等の活動を行ってきた。
吉田教授は、平成十五年に勝山市から、同市の建造物の調査依頼を受けたのをきっかけに、白山麓文化に強い影響を受ける同地域の民家の造り等の研究を始めた。土壁で塗りこめられた特徴ある造りの家々や、豊かな自然環境に溶け込む集落景観に強く関心を持ったが、四、五〇軒の家の中で常駐しているのは現在はわずか二軒のみ。このままでは廃村になってしまう。何とか守り伝えていきたいとの思いから、研究室の大学院生や学生とともに、小原ECOプロジェクトに協力することとなった。
このたびの古民家修復作業は、昨年の豪雪による家屋の破損を受けて行われた。学生たちは、吉田教授の知人の大工棟梁の指導を受けながら、夏休みを通して作業を行い、伝統的木造建築の技術を直に学ぶとともに、小原地区の空き家に宿泊しながら共同生活、山村生活を体験した。さらに様々な地域の人々との交流を通して社会性や協調性など幅広い体験ができたという。
作業は八月初めに開始、九月半ばに終了した。水道・電気・トイレ等はまだ未整備なものの、十一月初めには建物を使用してのシンポジウムの開催が決まった。また、将来的には、地元のNPOが利用したり、山村生活体験の場として都市部の人々の宿泊等セミナーハウスとしての利用も検討している。
もっとも、作業にかける予算はなく、木材などは近隣の家から譲り受け、それを棟梁が木づくりして利用するなど、苦労も多かった。また、傾斜地に立っているため、木材の持ち運びも重労働であった。しかし、学生たちは、「自分たちが修復している家が、どんどん形になっていくことが一番うれしい」と熱心に取り組んだ。
吉田教授は、「建築を勉強する上で、実際の建物を見たり、触れる体験はきわめて大切である。将来的には、大学の講義とプロジェクトの実体験学習をリンクさせていきたい」と語っている。
ちなみに来年度以降も小原の古民家修復を継続していく予定である。