平成18年10月 第2248号(10月4日)
■留学生担当者協議会を開催 141大学から185名が参加して協議
(事例発表)外国人留学生の就職支援など
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る九月二十九日(金)、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷を会場に、平成十八年度「留学生担当者協議会」を開催した。同協議会は、同協会の国際交流委員会(担当理事=森田嘉一京都外国語大学理事長・総長)が準備を進めてきたものである。協議事項は、留学生政策の現状、入国・在留審査、留学生の就職支援等についての講演や事例発表で、文部科学省、法務省の担当官等がデータを基に解説した。また、終了後には、情報交換会が七つの入国管理局の管轄ごとに分かれて行われた。なお、協議会には、同協会加盟から一四一大学一八五名が参加して、熱心な協議が進められた。
はじめに、森田担当理事から「教育再生を掲げる安倍内閣が誕生し、留学生に関わる諸問題も含め、教育課題の進展に大いに期待したい。今日、我が国への海外からの留学生は一二万人を超えている。いろいろと問題もあるが、我が国の国力にも貢献するであろう留学生の質の向上も図っていかなければならない。本日は、文科省高等教育局学生支援課の中野正昭留学生交流室長補佐、法務省入国管理局入国在留課の塚原豊隆法務専門官のお二人からの講演、さらに、大阪産業大学の加藤史雄キャリアセンター長に事例発表をお願いした。終了後には情報交換会も設けたので実りある成果を期待している」との挨拶を述べた。
さっそく講演に入り、文科省の中野留学生交流室長補佐から、「留学生政策の現状について」と題した解説があった。
同氏は、初めに、「諸外国との相互理解の増進と人的ネットワークの形成」「途上国等の人材育成・知的国際貢献」等の意義を踏まえた上で、留学生数の現状、渡日前から帰国後までの体系的な支援について解説した。
▽留学生数の現状
留学生一〇万人計画を達成し、平成十七年度には一二万一八一二人となり、そのうち、私費外国人留学生が一一万人を超えていること、出身国・地域別留学生数を見ると、中国八万五九二人、韓国一万五六〇六人、台湾四一三四人などとなっており、この三つの国・地域で留学生全体の八割以上を占めていること、十七年度の在学段階別留学生数は、学部生六万一一五二人(五〇・二%)、大学院生三万二七八人(二四・九%)、専修学校生二万五一九七人(二〇・七%)、短期大学生三〇九一人(二・五%)などとなっており、いずれの段階でも若干の増加傾向にあること、さらに、日本人の海外留学者数にも触れ、主な留学先・留学生数について、米国四万八三五人、中国一万二七六五人、英国五七二九人、オーストラリア三四六二人、フランス二四九〇人、ドイツ二四三八人、台湾一八二五人、カナダ一四六〇人、韓国九三八人等(二〇〇三年度調査)も紹介した。
また、留学生数の増加は歓迎だが、一方で留学生ビザ、就学ビザを持つ者の刑法犯検挙人数が十七年度で留学生一〇九〇人(十二年度五〇一人)、就学生一〇五五人(十二年度六九四人)とそれぞれ約倍増していること、また、在留資格別不法残留者数が十七年度で留学生八一七三人(十一年度五九一四人)、就学生八五〇六人(十一年度一万二九三一人)などで、留学生全体の増加率よりも留学生の刑法犯や不法就労等が増えていることなどを危惧していると語った。
その上で、適切な入学選抜を実施するとともに、在籍管理の徹底を訴えた。
▽渡日前から帰国後までの体系的な支援
まず、各大学において、「何のために留学生を受け入れるのか」を共通認識し全学的なバックアップ体制を確立する必要があること、そして、日本人学生と同様に、インターンシップや就職支援に取り組み、これまでの「母国に帰って活躍してもらう」から、希望者には「日本の企業に就職させる」ことも重要視されていること、さらに、帰国後のフォローアップとして、国費外国人留学生の卒業後のフォローアップの実施についても今年六月に各大学に通知を発出していることなどにも言及した。
続いて、法務省の塚原法務専門官が、「留学生に関わる諸問題と入国・在留審査について」を講演した。
同氏は、出入国管理制度は、「受入れの厳格なチェックをするとともに円滑な受入れを期す」ことを基本的な考え方とした上で、変造旅券に関わる出発地への対策、入国時の指紋・写真チェックの実施予定などの施策を取ること、申請代理人制度・申請取次制度など入管業務に精通した資格者の必要性などを強調した。
そのほか、留学生の入国・在留の現状では、十八年一月一日現在の在留資格別不法残留者数として、短期滞在一三万四三七四人、興業一万五二人、留学七六二八人、就学七三〇七人、研修三三九三人など、また、出身地別不法残留者として韓国四万二〇三人(二〇・八%)、中国三万一〇七四人(一六・〇%)、フィリピン三万七七七人(一五・九%)などを挙げて、留学生に対するより一層の在籍管理の強化を促した。
「留学生は未来からの大使」であり、積極的に受け入れ、我が国の良き理解者を増やしてほしいが、各大学の「在籍管理能力」などに応じた受入れも考えざるを得ないと結んだ。
最後に、大阪産業大学の加藤キャリアセンター長が「外国人留学生への就職支援について」の事例発表を行った。
同大学の留学生数は、大学・短大全体で現在一二九二人(全学生の一二%)おり、その内訳は、中国一一三七人、韓国九二人、台湾一三人、その他五〇人となっており、十年度以後中国からの留学生が大幅な増加傾向にある。また、全国の主要な留学生受入れ大学を多い順にみると、同大学は、東京大学、早稲田大学、立命館アジア太平洋大学に次いで四番目の多さとなっている(日本学生支援機構統計資料より)。
同大学では、現地入試の実施、私費留学生への学費の五〇%免除等の努力を行っているほか、今後、留学生の入口と出口対策について国際交流課等のメンバーを中心とする留学生対策会議等で検討を重ねている。特に、近年は、出口としてのフォローが重要課題であり、留学生の九割以上が日本での就職を希望しているという。
キャリアセンターでは、留学生スキルアップ合宿で日本の就職活動の特色やビジネスマナーなどを同大学の「みさき研修センター」で学ばせる。そして、二月から十一月まで毎月三回実施している学内合同企業セミナーに積極的に参加させたりしている。また、留学生を対象にした就職ガイダンスも年二回実施し、日本での就職状況や留学生を採用している企業の担当者の講演などを聞かせている。その際、キャリアデザインシートを記入させている。
なお、同大学では、Uターン就職を薦めてもおり、アジアに営業拠点、製造拠点、提携拠点を有する日本企業向けに、ニーズに応じた留学生育成のプログラムも計画するなど、就職満足度を高めるための施策を導入している。
終了後の情報交換会には約一〇〇名が参加し、各地の実情に沿った具体例などが参考となったようだ。