平成18年9月 第2247号(9月27日)
■マーケティングリサーチャーを養成せよ
グローカル・エデュケーション・サポートが連続講座
一八歳人口の減少による学生確保や、認証評価のための自己評価報告書の作成の必要性から、大学においてもマーケット・リサーチを専門的に行う職員の養成が急務となっている。NPO法人グローカル・エデュケーション・サポート(山本 溥理事長)では、このような背景のもと、去る九月六日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷において、大学のマーケットリサーチャー養成を行う「大学リサーチャー養成講座第一回マーケティング・リサーチ講座」を開催した。ほぼ満席の会場で、参加者は熱心に講演に耳を傾けた。
同講座は全四回となっており、具体的には、
(1) マーケティング戦略のプロセスやリサーチの位置づけと役割、
(2) リサーチの任務と計画立案や調査手法の選択・実施・報告書の作成など、
(3) 訂正調査の手法とグループインタビューの実施など、
(4) 大学におけるマーケティング・リサーチの実際という流れの中で、実践的にマーケティング・リサーチ手法を習得していく。また、各回に大学経営の第一人者からの講演があり、業界全体の理解も深める。
このたびの第一回では、まず、高山裕司日本高等教育評価機構研究開発部長より、「大学マーケティング戦略のプロセス」と題して講演が行われた。
高山氏は、まず、一八歳人口のマーケットサイズや文部科学行政のこれまでの変化に触れ、大学マーケティングの必要性を強調した。マーケティングの第一人者、フィリップ・コトラーによれば、大学マーケティングには、
(1) 教育機関の使命達成、
(2) 大学関係者の満足度の改善、
(3) 資源獲得の改善、
(4) マーケティング活動の効率改善、
の四つのメリットがあるという。また、マーケティング・リサーチの結果、自大学が、特徴が類似する大学と相対して、どのようなポジションにいるのかを把握することで取るべき戦略も変わってくる。更に、マーケティング・リサーチを推進していくに当たり、組織改革と意識改革が必要で、大学職員が能動的・自律的・革新的に行動する「プロフェッショナル化」のためのSDを推進することがポイントだと解説した。
最後に、「今後減少する一八歳人口を奪い合うマーケットではなく、例えば、大きなマーケットサイズが見込まれるシニア等の新規市場を目指す戦略が重要である」などと述べた。
続いて、「アメリカの大学の学生確保戦略と大学ガバナビリティー」と題して、福井 有学校法人大手前学園理事長より、講演があった。福井理事長は、まず、「アメリカでは定員といった概念はないと言っていい。マーケット志向とエンロールメントマネジメントが重視され、そもそも学生の構造が、日本と全く異なる」と述べ、日米の大学数や入学者数、アメリカにおけるコミュニティ・カレッジの進学率、学生の年齢などを紹介した。また、マーケティングの4P(プロダクツ(商品)、プライス(価格)、プロモーション(販売促進)、プレイス(立地))のうち、差別化できるのはプロダクツとプロモーションであり、プロダクツ=教育においてフレッシュマンセミナーや社会人プログラム、キャリア教育を戦略的に行い、プロモーション=情報発信において情報誌やWeb、オープンキャンパス等をいかに組合わせていくかが重要である。また、評価においては、数値化・比較化・情報公開が必須であるが、日本ではまだまだ未成熟である。大学の組織の構造、手続き及び意思決定のプロセスの質の改善を行い、全学的に改革を進めなければならないと強調した。
最後に、「マーケティング戦略立案におけるマーケティング・リサーチの位置づけと役割」と題して、近藤泰樹立教大学広報渉外部副部長が講演、近藤氏は具体的なマーケティングの手法について紹介した。まず、マーケティングとは、市場ニーズと自社シーズを組み合わせることで、リサーチとは、人の気持ちや声を謙虚に聴くことだと述べた。リサーチの流れは、アンケートなど定量調査から仮説を考え、インタビューなど定性調査でその仮説を検証するものと説明した。また、リサーチにおいては、マーケティングの「課題」(例えば、受験動向を知りたいなど)と「対象」(例えば、高校生、保護者、教員など)と「目的」(例えば、学生確保など)の整合性を合わせる事が必要であり、リサーチャーに必要なのは、人間の心理を洞察することである。近藤氏は、立教大学の具体的事例を交えながら、マーケティングの具体的な手順を詳細に解説していった。
第二回は、十一月一日・二日、静岡・浜松のグランドホテル浜松において、具体的な調査手法について、実習を取り入れながら行われる。