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平成18年8月 第2242号(8月9日)

人事制度改革の実践
〜教員評価システムの具体的な取り組みを考える〜 ―2―

明海大学学長 倉 翔

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)では、平成十七年十月五日から七日まで、大阪市・大阪ガーデンパレスにて、平成十七年度事務局長相当者研修会を開催した。研修会は、「アドミニストレーター」をテーマに講演と班別研修等が行われ、そのなかで「人事制度改革の実践〜教員評価システムの具体的な取り組みを考える〜」と題して、倉 翔明海大学学長からご講演をいただいた。本紙ではこのなかから「明海大学における人事制度改革の取り組み」について掲載する。

  それからまた、全体の組み換えをしました。一番上のA教育活動ですが、二五%。これは改善した方です。B研究活動が二〇%ですので、逆転させたということは確かです。
 というのは、最初は、一〇%で始めたのを、二五%にしました。教育活動は、なかなか捉えられない。まして、授業評価アンケートは教員評価に取り入れないという約束で実施したわけですから、とても教育評価のところにウエイトを置けないということで、一〇%でした。
 それを二五%にする。やはり、大学の役割機能を教育にシフトするということでしたら、これは二五%に持っていける。研究活動の%よりも、少なくとも上回るべきだということです。それからもう一つ、左表の下の方に休講があります。これは、最初は勤務状況のところにあったものを教育活動に移しました
 それから今度は次のB研究活動は二〇%。これは変わらずです。その外部資金の受け入れは、はじめ、D社会活動でした。それをB研究活動の方に持ってきた。これはもう、外部資金の受け入れは、今日のアクレディテーションに関しても、非常に大きなポイントになっています。とにかく私が明海大学に移ってきた一〇年前、歯学部関係については、科研費をはじめとする外部資金の導入に、熱心に取り組んでいた。しかし文科系では、三学部で、一人か二人くらいしか手を挙げません。とにかくバットを振ろうとしないのです。申請しない。要するに、バットを振らなきゃホームランは出ないというのが私のモットーです。バットを振らないどころか、ベンチにも入ろうとしない。そうしますと今度は、学長はどうですかと。これではいけないとのことで、副学長時代に、国際学術研究を三年間頂戴いたしました。文科系ではそれなりの金額を頑張れば取れると、俺はバットを振ったよということです。そういったことがきっかけになって、文科系は、今年の例で言いますと、もう二桁になっています。それはやはり成果が出てきた。今は、どこの大学でも皆バットを振っていますし、トータルは同じですから打率は減っています。バットを振らなければホームランは出ない。これだけです。
 それからC学内業務活動は、これは一五%であったのを二〇%にしました。同時に、学内行事にどれだけ参加したか。これはもともとA教育活動にあったものをCへ持ってきました。
 D社会活動。これはやはり、第三の機能としての社会貢献伝々ということがありますので、色々考えなくてはならない。しかし、このために大学を留守にされてばかりいては困りますので、これは一五%を五%に減らしたということです。社会貢献、あるいはそういった公の仕事に参加する。これも大学人の一つの使命ではなかろうかということで、それはそれで考えてみる。しかしながら、五%に絞り込んだということです。
 E勤務状況。これはきちんと勤務してもらわないと困ります。けれども、全体のバランス等々を考えまして、三五%から二〇%にしました。元々、E勤務状況にあった休講の数を、教育活動の方に配置換えをしました。
 最後のX補正のところは五%から一〇%にしました。この時も理事会の方から、学部長の予断と偏見を、そんなに重視していいのかと色々お叱りを受けました。私は、近くにいる者ほど、具体的な活動の様子をキャッチできるのだと説明をしました。
 もう一つのポイントは、A教育活動の中の、教育業績です。教育業績の中に、授業評価も総合評価の一環として繰り入れたということです。『資料3』が、今、扱っている教育業績書です。ポイントの一つは、「実務家教員についての特記事項」。実務家教員をかなり積極的にインバイトしています。しかし、実務経験がありますというだけで、大学のファカルティとしてどうなのか。やはりそこのところに、もう一つ何か必要です。そのつながりをどう説明できるかです。
 それから一番下に、「学生による授業評価に基づく、授業方法等の改善の実績・工夫等」という欄があります。これは、わざとスペースを広くしております。(編集の都合で、狭くしました)たくさん書いてくださいとこういうことです。授業評価アンケートをもとに、どれだけインプルービング・ユニバーシティ・ティーチングの実績を示したかを、自分で申告してくださいということです。やはり、自分で申告していただくということは、大切だと思います。
 この『資料2』と『資料3』は、あわせて、教育活動を重視していくこと、その中で、学生による授業評価アンケートを、教育評価の中に組み込んでいったという一つのシステムを示させていただいたものです。
 (四)、「教員評価」を昇任人事に反映(二〇〇三年度〜)
  教員評価は、期末手当の査定に使う。それだけにしか使っていなかったというのが、如何なものかということで二年が経過しました。二〇〇三年の時点で、今度は教員評価をプロモーションの人事に反映させる。直結よりも反映させるということです。
 (五)、教育褒賞制度の導入(二〇〇三年度〜)
  それから、教育褒償制度の導入。二〇〇三年です。ティーチャー・オブ・ザ・イヤーを設けています。毎年、特に若手の先生からティーチングに貢献のあった方、各学部一人を選んでいただいて表彰し、人事記録に記載し、そして研究費に少額ですが、二〇万円を上乗せさせていただくということで、エンカレッジする。それなりに機能していると思います。
  しかし、ここで問題になるのは、ティーチャー・オブ・ザ・イヤーを決めるには、学生の投票によるべきだという意見がありました。それはそれで耳を傾けるべきご意見だけれども、果たしてそれが可能なのか。妥当性は、一体どの程度担保できるのか。今のところは、これも学部長に一任しています。けれども、学部長が単独で決めるのではなく、学部内の人事専門委員会などを動員して、理由をつけて学長のところへ持ってまいります。ティーチングの研究のために二〇万円お使いくださいというようなことでエンカレッジする、ということです。
 (六)、「授業評価アンケート」の改善(二〇〇四・五年度)
  授業評価というのは、これもやはりやり方を色々改善しなければならない。当然です。
  結果の公表も含めて検討中でございます。
 (七)、「教員評価」の再改善
  それから今現在ですが、教員評価はちょうど二〇〇三年から二年経っておりますので、もう一度見直しの時期だということで、九月の教授会で改善の時期になったと申しました。先生方のご意見を、学部長を通して出していただくことになっています。学部長が、そのまま持ってくるかもしれませんし、集約して持ってくるかもしれません。出てきたものは、各学部の教授会で報告すると同時に、その意見のここの部分はこのように改善に反映させていただいたということで、見直しを考えているわけです。
 (八)、FD・SD活動の推進
  FD・SD活動の推進には、両者の統合という言葉をぜひ入れておいていただきたいと思います。
 3、今後の課題
  最後に、今後の課題ということで、九つ挙げましたが、当たり前のことと言えば当たり前のことです。
 (一)、授業評価、教員評価を進化させる。これは、学生による授業評価アンケートと、それから教員評価を進化させ改善する努力を絶えず進めましょうということです。(財)日本高等教育評価機構による認証評価も、評価するものが評価されるわけですから、認証評価機関それ自体がやはり、社会的な評価を受け、それに耐えなくてはなりません。合理性、客観性、透明性を、もっと確保していこうということです。
 (二)、教員評価と処遇の関係を一層合理化する。昇任人事、待遇などの関係を合理的にする。ケースバイケースというのは、ある意味では場当たり的だと。そのあたりをどう説明できるか。説明責任とも関係すると思います。合理的でないと説明できない。(つづく)

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