Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成18年8月 第2241号(8月2日)

日本の研究開発費は私大負担大 第5版科学技術指標の改訂版

 大学における研究開発費の政府負担は、欧米等に比べて少ない―科学技術政策研究所では、我が国の科学技術活動を客観的・定量的データに基づき体系的に分析する科学技術指標を公表しているが、このたび、第五版(平成十六年度版)に基づく二〇〇六年改訂版を公表した。同資料は、第五版の更新版として、新たに得られたデータをもとに図表を更新すると共に、解説を修正したもの。この中の科学技術における大学等の役割の概要は次のとおり。

 まず、我が国の総研究開発費における、大学の研究開発費使用割合は、欧米や中国・韓国と比較して高いものの、一九九〇年頃まで長期的に低下した。この低下は、主として日本全体の研究開発費に占める産業部門の研究開発費の割合が増大したためである。すなわち、この時期においては、産業部門の役割が増大し、大学の役割が相対的に縮小している。大学の割合は一九九〇年代前半に一旦増加したが、その後は横ばいに推移している。
 日本の大学等における研究開発費の使用額は、二〇〇四年において三兆二七四〇億円で、日本全体の研究開発費の一九・三%に相当する。その推移を見ると、一九九八年までは直線的な増加傾向が基調であるが、一九九九年以降、日本の大学の研究開発費使用額はほとんど増加していない。他の国に関しては、米国とEUの増加が著しく、特にドイツ、フランス、イギリスが堅調に増加している。中国も着実に増加している。
 次に、研究開発費の負担構造については、日本以外の国では、大学の研究開発費の大部分が政府によって負担されているが、日本の場合、大学自体の負担の割合が七カ国のなかで例外的に大きい(二兆七八〇九億円)。日本の大学の負担分は、ほとんど全てが私立大学の研究開発費の自己負担分である。私立大学の財源には、政府から私立大学が受け取っている私学助成等が含まれるものの、その割合は大きくなく、従って、日本は他の国に比較して、大学の研究開発に対する政府の支援額が小さいということができる。
 日本の大学等の研究開発費(内部使用額)の組織別使用割合は、一九九〇年代初頭まで国立大学の割合がゆるやかに減少、私立大学の割合の増加傾向が続いたが、一九九一年頃からは国立大学の割合は多少変動しつつも四割強ほどで横ばいとなっている。二〇〇四年度の割合は、国立大学が四一・八%、公立大学が五・八%、私立大学が五二・五%であった。大学等の内部使用研究開発費に関して費用別の内訳を見ると、人件費が多く二兆一五八六億円(二〇〇四年度)で、全体の六五・九%を占めていた。
 我が国の大学等の研究者数(本務者及び兼務者)は、二〇〇五年三月末時点で、二九万一一四七人であるが、そのうちの三四・一%に当たる九万九四〇〇人が博士号取得者である。なお、大学等の研究者には、大学院博士課程在籍者七万九四七人が含まれるので、それを除いた研究者に占める博士号取得者の割合は四五・一%となる。大学の設立主体別に見ると、博士号取得者が研究者全体に占める割合は、国立大学が三八・〇%と最も大きく、私立大学が三〇・九%、公立大学が三〇・七%と続いている。
 大学が外部から受け入れた研究開発費は、一九九二年度までは、政府からの受け入れ研究開発費の割合が減り、民間の資金の割合が一貫して増加していたが、一九九三年度から一九九七年度までは、政府からの受け入れ研究開発費が増加傾向にあった。二〇〇〇年度以降は再び民間の資金の割合が増加傾向にあり、一九九九年度に二一・五%であった民間からの受け入れ研究費は、二〇〇四年度には二三・七%となっている。
 次に、大学が企業等より受け入れた研究開発費の推移は、一九九二年度まで著しく増加した後、一九九〇年代半ばに横ばいとなり、一九九九年度以降、再度、著しい増加を示している。しかし、二〇〇四年度の金額(八三六億円)は、同年度における大学等の内部使用研究開発費の二・六%に過ぎない。国・公・私立大学の区分別に見ると、企業等産業部門から受け入れた研究開発費は国立の金額が最も多かった。

Page Top