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平成18年8月 第2241号(8月2日)

競争的研究資金の協議会開催 学内支援体制の整備等が急務

教育研究の充実目指し 科研費など申請倍増を

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る七月二十一日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷において平成十八年度「競争的研究資金制度に関する協議会(通算第二回)」を開催した。協議内容は、文部科学省の科学研究費補助金(以下、科研費)の概要、(独)科学技術振興機構(JST)の競争的資金の概要のほか、大学における科研費の申請事務と学内支援体制の取組み等の事例発表、さらに、科研費の元審査委員からの“採択される申請書の書き方”や科研費に関するルール等についての解説などで、会場には昨年度より多い二一〇大学から約三〇〇名が出席するなど関心の強さを伺わせた。

 開会にあたり、同協会の小出秀文事務局長は、「今日、私立大学は学校数・学生数において高等教育の約七五%を担い、その発展に大いなる寄与をしているにもかかわらず、私立大学への教育研究資金は国立大学に比べて十分とは言い難い。今後さらに、私立大学の人文・社会系も含めた多様な分野での教育研究力を発揮して、調和ある高等教育の発展を目指すべく、財源を確保することが急務である」などと開会の挨拶とともに同協議会開催の趣旨、競争的研究資金制度の現状と重要性を述べた上で、「私立大学の申請倍増を」との願いを訴えた。
 協議に入り、はじめに、「科研費の概要について〜私立大学の教育研究活動の活性化を目指して〜」と題し、文部科学省研究振興局学術研究助成課の袖山禎之企画室長が解説した。
 同氏は、はじめに「科研費制度の概要」について説明するとともに、第三期科学技術基本計画における科研費の位置付け(平成十八年度の科学技術関係予算三兆五七三三億円のうち、研究者の自由な発想に基づく研究予算が一兆四二二三億円で、その中に科研費(十八年度は一八九五億円)が二十一世紀COEプログラム等とともにくくられている)、科研費予算額の年度ごとの増加の推移、科研費の翌年度への繰越の弾力化などについて詳細に説明した。
 なお、近ごろ科研費等の不正使用が起こっていることから、各研究機関の補助金の管理の在り方に言及し、注意を促した。
 次に、「科学技術振興機構(JST)における競争的資金の概要について」をJST戦略的創造事業本部研究企画調整室の森本茂雄調査役と同本部技術展開部の中村 徹革新技術課長の二人が解説した。
 森本氏は、新技術創出のための戦略的創造推進事業として、CREST型、さきがけ型、ERATO型、ICORP型の四つの研究型について、研究費・研究期間・公募対象などを説明した。
 引き続いて、中村氏は、新技術の実用化を促進する産学連携事業について、産学共同シーズイノベーション事業、独創的シーズ展開事業、地域イノベーション創出総合支援事業などについて、事業の趣旨・研究費・研究期間・採択予定数・募集の詳細を説明した。
 休憩の後には、「申請事務と学内支援体制の取組み等について」の事例発表に移り、まず、帝塚山大学の事例として、同大学の中川寿崇事務局長・キャリアセンター長が発表した。
 同氏は、補助金に関わる学内の支援体制について次のように紹介。
  (1)組織=学校法人と大学のそれぞれに業務推進委員会を組織。主な任務は調査・研究・情報収集・企画・提言・立案のほか、申請業務に精通した教職員の養成・配置、研究会の開催など。また、間接経費規程を制定(本年度)した。さらに、大学に研究支援ワーキンググループを発足(本年度より)させた。活動内容は、研究支援の理念及び構想の整理、外部資金関連情報と支援システムの検討、研究支援事業の策定と提言。
  (2)情報収集=文科省の予算配分等の分析(他省庁分も)、インターネットによる補助金情報の収集、過去の申請内容・採択内容の分析、同協会の研修会等のテーマにも目配り。
  (3)情報提供=毎月末までの各種補助金情報を毎月の協議会で報告→学部長会議→教授会→提示コーナー→関係ファイルで閲覧、事務担当者(主に教育研究支援室長)が受付文書やインターネット情報に基づき情報提供し、教員の研究テーマに沿って申請依頼も。科研費については、各教員へ申請案内を配布し、説明会を二回開く。事務担当者からも個別に教員に申請依頼。
  (4)その他=平成十七年度から、学内研究資金応募の採択者に科研費申請を義務づけた。また、学内共同研究資金の採択者(一名)には学術研究振興資金の申請を義務づけた。
 そのほか、事務的サポートについても紹介した。
 次に、東京理科大学の事例として、瀬尾 巖同大学執行役・科学技術交流センター長が「研究における外部資金導入の取組み等」を発表した。
 同氏は、まず、地域振興への貢献、公平性・透明性といった産学官連携のポリシーを語った上で、科研費をはじめ受託研究・共同研究など、外部資金獲得状況を説明した。
 次に、外部資金獲得のために、各省庁ごとの公的競争的資金配分機関をリストアップし、TLO支援(公募スケジュール情報の提供、プロジェクトの企画・提案、申請手続き等)を説明した。
 続いて、「科研費元審査委員からの視点について」と題し、麗澤大学の小野宏哉副学長・教授が講演した。
 同氏は、科研費の審査体制を踏まえた上で、「見やすい書き方」として、(1)体裁が整えられている、(2)具体的な情報が明確に書き込まれている、(3)判断に迷う場合に適切な情報がWeb等に開示されているなどを挙げ、「どんな観点で評価するのか」では、(1)魅力的な課題、(2)優れた計画、(3)資金の必要性、(4)適切な支出計画、(5)計画の信頼性であると述べ、「申請書の書き方」では、(1)理解されるように、(2)見やすく美しく、(3)狙いを具体的に、(4)実績に見合う、(5)余白は問題ではない。説明すべきことを重複せずに書く、など、申請書作成に向けて具体的にアドバイスした。
 協議会の最後には、(独)日本学術振興会研究事業部の岡本和久研究助成課長が、「科研費に関するルールと留意点について」の解説を行い全日程を終了した。

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