加盟大学専用サイト

アルカディア学報

No.587

グラフで見る私大の動向と私学振興の課題

主幹  西井 泰彦

一. 入学志願動向
 私学事業団では、「学校法人基礎調査」に基づき、私立大学の入学志願動向を調査して、集計結果を公表している。その中から、学生数の動向を示す重要な指標である志願者数と定員の充足状況等を取り上げてみたい。図1は志願倍率、図2は入学定員充足率の推移をまとめている。
 1992年度には18才人口が205万人のピークに達した。379校の私立大学の35万6000人の入学定員に対して、442万人の志願者が受験し、41万9000人が入学者した。志願倍率は12.4倍で、入学定員充足率は118%となった。そのうち推薦入学者の割合は31%であった。
 この後、2015年度になると、18歳人口は4割ほど減少し120万人となった。578校に増えた私立大学の入学定員46万4000人に対しては7.6倍の351万人の志願者があり、48万7000人が入学した。入学者の増加率は16%である。入学者のうち推薦入学の割合は45%に上昇した。志願者数には重複受験の人数も含まれるが、約90万人近く減少している。入学検定料だけでも300億円以上の減収となった。
 入学定員充足率は118%から105%に大きく下降した。この定員充足率は、全ての大学の入学定員と入学者数を合計して算出した平均値(加重平均値)である。一方、単純平均値は、各大学の定員充足率を平均したもので、大学ごとの学生数規模の影響を受けず、小規模校の状況が大きく反映される。この値は、2006年度から100%を切って90%台前半に大きく下降している。
 以上から、現在の私立大学においては、入学定員を上回る入学者数となっており、トータルでは定員超過の状況にあること、また、中小規模校などの定員割れが進んでいることが考えられる。
 私立大学を更に学生規模別、地域別、学部系統別に区分して集計すると次の特徴がある。
 規模別で見ると、800人以上の入学定員を有する大学の区分では定員超過である。それ以下の中小規模の大学の集計値は定員未満となっている。
 地域別では、東京を中心とする大都市圏の大学の集計値は定員超過となっている。つまり地方や大都市近郊の大学や中小規模の大学の状態が悪くなっている。

二. 定員割れの増加
   二極化の状況を認識するために、大学全体の入学定員充足率が100%を下回っている大学の割合を示すと、図3のとおりとなる。1999年から2001年度にかけて2割から3割程度に増加し、百数十校が定員割れとなった。その後2006年から2009年にかけて4割から5割近くに増加し、定員割れ大学は200校を越えた。最近では4割台で前後しており、二百数十校で定員を充足していない。
 学校数は最近ではあまり増えてはいない。これは、定員未充足の学部学科の定員縮小・募集停止、学生が集まりやすい学部等への改組や新設などの対応が進んでいる結果である。
 トータルの加重平均では定員超過となっていながら個別に見ると、定員未充足校が4割近くも存在する状態は決して望ましい状態ではない。定員超過も定員割れのいずれも良好な教育条件ではなく、私立大学の健全な経営状態とは言えない。

三. 定員超過の抑制
 昨年、地方創生の観点から、補助金の欠格条件と設置認可の取扱いにおける定員管理の厳格化が通知された。
 私立大学等経常費補助金の配分上では、大学の収容定員を勘案して、4000人、8000人を区切りとして、不交付となる学部等の基準を、1.3倍、1.2倍、1.1倍と段階的に強化するなどの取扱いが実施される。
(つづく)