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アルカディア学報

No.3

なにをどう研究するか

主幹 喜多村和之

 第1回研究員会議から
 私学高等教育研究所の研究事業を実質的に担っていただく方々として、研究所ではすでに17名の専門研究者や経営者に研究員を委嘱しているが、8月2日の第1回研究員会議には13名の参加を得て、今後の研究計画を中心に活発な意見交換を行った。まず研究所の喜多村和之主幹より、研究所の専任の研究スタッフは現状では主幹1名しかおらず、実質的には他機関に所属する兼務の研究員に全面的に依存するほかないが、専任の研究員がいなくとも研究委託や兼務制で優れた成果を挙げている事例も少なくないことを内外の例を挙げて強調し、今後の協力をお願いしたいとの挨拶があった。
 次いで研究所の研究事業の特色として、以下の諸点が考えられるとの説明が喜多村主幹より行われた。
 ▽研究所における研究はあくまでも研究課題の選択、研究の方法、成果の発表等における自由や、かならずしも特定の団体の主張に縛られないという研究の自由を前提として進められるべきである。
 ▽しかし研究所の研究は広い意味での実践的目的を指向し、可能な限り現場の要求や実態に即した調査・研究・理論の開発を重視したい。
 ▽基礎的・長期的研究を行うことは当然だが、即時的、緊急的な課題の研究・調査や政府や外部団体の意見や政策提言に対する見解の表明、私学団体としての政策形成等にも資することも研究の範囲に含めたい。
 ▽したがって研究成果の報告も、単に専門家にだけしか理解し得ない学術研究だけではなく、一般の大学関係者にも活用されやすいように、簡潔性と明快性をもった研究報告を指向したい。
 次に、今後研究所が行うべき研究課題について各研究員より研究関心を話し合ったが、これは大きくみれば私学政策、管理運営、私学助成の在り方、教育、財務、諸外国の私学等に及んだ。ただしこのなかには学生募集や募金活動、収益活動等々の今日の私学にとって緊要な課題が含まれていないので、次回の研究員会議で検討を続けることにした。また大学評価の問題は私学にとってさしあたって最も重要な研究課題であるので、9月の次回会合に本格的な議論を行うこととした。
 いずれにしても各研究員は自分のかかわる研究について、課題、研究組織、研究期間、予算等について企画し、次回の研究員会議にもちより、今年度の研究所の全体的な研究計画を策定するという段取りとなった。次回研究員会議は9月18日(月)午後2時~5時に予定されている。

最近の高等教育政策と私学

第1回公開研究会から
 この数カ月の間に高等教育関係の報告、審議会等の答申、法令の成立と新機関や制度の発足など、めまぐるしい動きがある。私学高等教育研究所では第1回の公開研究会のテーマとして、国立大学の法人化問題と第三者評価機関の創設を取り上げた。
 国立大学の法人化問題に関しては、すでに国立大学や高等教育関係団体で研究会がしばしば行われている。しかし、この問題は国立大学だけの問題と理解されているためか、私学関係者の関心はかならずしも高くないようである。第三者評価機関については、法人化問題以上に関心が低いようで、評価の対象とされている国立大学関係者からも賛否の議論が活発でないようである。
 研究所がこの問題をテ-マに選んだのは、①国立大学の独法化は、国立だけのコップのなかの嵐にとどまらず、今後の高等教育政策や私学経営にも重大な影響を及ぼすものではないか?、②独法化問題と第三者評価機関の創設はペアの関係にあり、現在は「当面の間」国立大学のみを評価の対象としているが、将来的には公・私立大学をも評価の対象とすることを意図しているものであり、私学にとっても重要な影響を及ぼすのではないか、という2つの疑問からである。
 8月2日夕刻からアルカディア市ヶ谷で開催された公開研究会には、90名を越える参加者があり、私学関係者のみならず国立大学や大学評価関係者まで幅広い参加があり、この問題への関心が次第に広まりつつあることをうかがわせた。
 小出秀文日本私立大学協会事務局長の司会のもとで、まず研究所の喜多村和之主幹が、国立大学の独法化問題がこれまでどのような経緯で進められてきたか、さらに独法化とペアになって創設された大学評価・学位授与機構が私学にとってどういう意味を持ち得るかが説明された。その内容については本紙の『アルカディア学報①②』(平成12年7月26日付および8月2日付)に述べられているので、ご参照いただければ幸いである。
 次いで濱名 篤関西国際大学教授(当研究所研究員)が、「私立大学の立場からみた"国立大学の独立行政法人"問題」と題して、この問題がさまざまな形をとって私学の経営や教学に及ぼす問題点について指摘した。
 濱名氏の主張の骨子については、本紙の『アルカディア学報④』(平成12年8月23日付)に掲載される予定である。
 このテーマをめぐっては、第三者評価の受け取り方、国の機関が評価による資源配分を行うことの是非、大学評価・学位授与機構の性格の理解の仕方等をめぐって、さらには独立行政法人化後の私学経営の在り方や高等教育全体への影響の有無等々について、活発かつ激しい議論の応酬があった。その詳細については、いずれ当研究所の報告等のかたちで公表させていただく予定である。
 第2回目の公開研究会は、以下の要領で開催の予定です。ご参加をお待ちしております。

▽ご案内△【私学高等教育研究所主催・第2回公開研究会】
 ▽日時=平成12年9月18日(月)・午後5時30分~8時
 ▽場所=アルカディア市ヶ谷(5階、穂高・西)
 ▽テーマ=私学政策の在り方を点検・評価する――私学の助成と規制
 ▽問題提起者=①田中敬文・東京学芸大学助教授(当研究所研究員)、②市川昭 午・国立学校財務センター教授(当研究所客員研究員)
 ▽内容=日本の私学行政はいかにあるべきか、従来の私学経常費助成方式はこのま までよいのか――。
 最近、政策の効果を事前に予測し、政策実施の結果を事後および実施過程で客観的 に評価する「政策評価」という考え方が行政改革の一環として実施されようとしています。そこで私学への助成と規制を含めた従来の私学政策の実績はどのように評価さ れ、今後の私学政策はどうあるべきか、高等教育の経済・財政の専門家である2人の論客から、縦横な問題提起をしていただきたいと思います。
 参加者各位から、私学政策の在り方に関して、闊達な討論をしていただきたいと思 います。どなたでもご自由にご参加ください(入場無料)。