No.1(2000.6)
図表1 M.トロウによる高等教育システムの段階移行に伴う変化の図式

高等教育システムの段階 エリート型 マス型 ユニバーサル・
アクセス型
全体規模(該当年齢人口に占める大学在籍率) 15%まで 15%〜50%まで 50%以上
該当する社会(例) イギリス・多くの西欧諸国 日本・カナダ・スウェーデン等 アメリカ合衆国
高等教育の機会 少数者の特権 相対的多数者の権利 万人の義務
大学進学の要件 制約的(家柄や才能) 準制約的(一定の制度化された資格) 開放的(個人の選択意思)
高等教育の目的観 人間形成・社会化 知識・技能の伝達 新しい広い経験の提供
高等教育の主要機能 エリート・支配階級の精神や性格の形成 専門分化したエリート養成+社会の指導者層の育成 産業社会に適応しうる全国民の育成
教育課程(カリキュラム) 高度に構造化(鋼構造的) 構造化+弾力化(柔構造的) 非構造的(段階的学習方式の崩壊)
主要な教育方法・手段 個人指導・師弟関係重視のチューター制・ゼミナール制 非個別的な多人数講義+補助的ゼミ,パートタイム型・サンドイッチ型コース 通信・TV・コンピュータ・教育機器等の活用
学生の進学・就学パターン 中等教育修了後ストレートに大学進学,中断なく学習して学位取得,ドロップアウト率低い 中等教育後のノンストレート進学や一時的就学停止(ストップアウト),ドロップアウトの増加 入学のおくれやストップアウト,成人・勤労学生の進学、職業経験者の再入学が激増
高等教育機関の特色 同質性
共通の高い基準をもった大学と専門分化した専門学校
多様性
多様なレベルの水準をもつ高等教育機関,総合制教育機関の増加
極度の多様性
共通の一定水準の喪失,スタンダードそのものの考え方が疑問視される
高等教育機関の規模 学生数2000〜3000人
共通の学問共同体の成立
学生・教職員総数3万〜4万人
共通の学問共同体であるよりは頭脳の都市
学生数は無制限的
共通の学問共同体意識の消滅
社会と大学との境界 明確な区分
閉じられた大学
相対的に希薄化
開かれた大学
境界区分の消滅
大学と社会との一体化
最終的な権力の所在と意思決定の主体 小規模のエリート集団 エリート集団+利益集団+政治集団 一般公衆
学生の選抜原理 中等教育での成績または試験による選抜(能力主義) 能力主義+個人の教育機会の均等化原理 万人のための教育保証+集団としての達成水準の均等化
大学の管理者 アマチュアの大学人の兼任 専任化した大学人+巨大な官僚スタッフ 管理専門職
大学の内部運営形態 長老教授による寡頭支配 長老教授+若手教員や学生参加による“民主的”支配 学内コンセンサスの崩壊?
学外者による支配?
(出典:M.トロウ「高度情報社会の大学」(喜多村和之編訳, 玉川大学出版部, 2000)より抜粋)
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