特集・連載
大学改革
<下>外国人留学生への就職支援
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、平成十八年十一月十五日から十七日まで、新潟市内のホテルで、平成十八年度就職部課長相当者研修会を開催した。当日は二一二大学から二八二名が参加し、「キャリア教育と社会人基礎力―学び、働き、生きるを考える―」をメインテーマに講演、事例発表、班別討議等が行われた。本紙では、加藤史雄大阪産業大学キャリアセンター長の事例発表「外国人留学生への就職支援」を二回に分けて掲載する。
その一環として、現地での採用状況確認のために、とくに、中国へ進出している日系企業や中国国内で活躍している現地企業の訪問をおこない、ニーズがあるか、その場合の条件など現地情報を収集して学生へ還元しております。そこで、得た情報を留学生就職ガイダンスや日常の窓口対応にて学生へ報告しております。
また、入国管理局や大阪外国人雇用サービスセンターへ出向き、外国人留学生の在留資格変更と職業選択について相談などをおこなっています。
主な相談は、①大学等において習得した専門知識と関連性を有する業務かどうか、②大学・短大卒業の場合、母国語を活かせる業務かどうか(たとえば文系であれば、翻訳、通訳、語学講師などかどうか、学部学科によって異なりますが)、③就労に際し問題がないかなど、具体的事象を例にあげ事前打診をして、事例を含めてサジェッションをいただき、外国人留学生への就職指導に役立てております。その時に必要となります各種書類については、後ほどお話しいたします。
この夏に始めて、外国人留学生対象の就職スキルアップ合宿を実施しました。合宿では、中国、韓国、ベトナム、スリランカの各国二六名の参加者があり、就職活動についての認識セミナーと題して、①日本での就職活動の展開方法、②日本での外国人留学生の就職の現状と問題、③基本的なビジネスマナー・社会常識を身につける、④ビジネス上の基本スキルを身につける ⑤就職活動のための情報収集、⑥エントリーや企業へのアプローチ方法、⑦プレゼンテーション力・コミュニケーション力向上対策などを一泊二日にて実施しました。合宿の最後のまとめとして、個別相談・フリートーキングにて全日程を終えました。手探り状態の中、今年度初めての試みでしたが、参加学生からは、次年度も是非、後輩のためにももう少し期間を長くしてほしいとの実施要望があり、成果があったと自負しております。
外国人留学生には就職指導上のカルテと申しますか、キャリアデザインシートを提出させて、この資料を基に就職指導を今年度からおこなっております。
また、学内でおこなわれる個別・合同企業セミナー、インターンシップや留学生就職ガイダンスなどの学内・学外行事への積極的な参加を呼びかけ、就職に対する意識付けをおこなっております。今年度七名の外国人留学生がインターンシップにて職場体験実習をおこないました。
また、外国人留学生への就職指導の参考資料として、過去に、「留学生の就職支援のあり方についての懇談会」が、大学・企業・労働団体・経営者団体・厚生労働省メンバーで構成され、外国人留学生の就職支援について意見交換がおこなわれました。
この懇談会は以後、連絡協議会へと移行され、求職活動中の外国人留学生と外国人留学生出身で在職中の者、企業に対してそれぞれの「留学生に係る実態調査」がおこなわれ、その時の資料から抜粋しました。この調査結果を参考にガイダンスや日常の指導の中で活用しております。
1、外国人留学生採用の背景
(1)海外からの商品仕入れ
(2)アジア・パシフィック地域への事業展開
(3)海外展開を推進する要因
(4)新たな海外ビジネスをおこなうに際し、出身国の事情を理解した人を必要とした
(5)海外工場の立ち上げ
(6)海外戦略に向けて
(7)広く優秀な人材を募集していくため
(8)優秀な技術者の確保
(9)本人の持つスキル、専門性の活用などがあげられております
2、外国人留学生採用の考え方(外国人留学生をどんな人材と考えているか)
(1)海外展開、国際化の基幹人材
(2)技術・語学などの専門スタッフなど、文系・理系とも共通の考え方として報告されています。
3、外国人留学生採用において重視する点
(1)文系では、①日本語能力、②仕事に関する考え方、意欲、③外国語能力を含む専門技術など
(2)理系では、①外国語能力を含む専門技術、②仕事に対する考え方、意欲、③日本語能力などとなっています
4、外国人留学生の募集・採用について(募集経路・媒体)
(1)自社ホームページ
(2)就職情報誌、就職情報サイト
(3)独立行政法人日本学生支援機構
(4)大学の就職部(キャリアセンターなど)、教員など
(5)民間の就職面接会
(6)外国人雇用サービスセンターなど
5、就職活動中の留学生、留学生出身で在職中の者からのアドバイス
(1)はっきりとした目標を持つことが大事
(2)日本語の正しい使い方を修得すること
(3)諦めない。説明会やセミナーに積極的に参加すること
(4)就職したい業種の情報をしっかり調べること
(5)将来のために自分がやりたいことを良く考えること
(6)母国語には関係なく、英語をしっかり身につけたほうが良い
(7)日本での就職活動はエントリーから面接までが外国人留学生にとって、新鮮で複雑なことばかりなので、日本人学生の先輩にノウハウをしっかり聞くこと
(8)単に日本に滞在し続けるための就職でなく、本当に自分のための就職になってほしい
などが、当時の意見交換で確認されたようで、この内容を参考にしながら、外国人留学生の就職指導をおこなっております。
外国人留学生だけの就職データについては、最近、ようやく統計資料として整理ができるようになりました。今春三月卒業の外国人留学生は、就職や進学をすることができました。参考までに、外国人留学生の就職状況は、就職希望者に対して、大学で八九・四%、短期大学部で八九・九%の決定率になっています。しかし、卒業者で見ると、大学二八・五%、短期大学部二九・一%とまだまだ厳しい状況にあります。
外国人留学生はキャリアセンターへの報告義務がないと認識しているのか、報告が少なく、実態として報告はないものの就職をしているようで、報告があればもう少し決定数字が上がるのではないかと確信しております。
就職決定者は、留学ビザから就労ビザへの変更申請が必要となり、これら手続きについての指導もしております。卒業予定の外国人留学生で、日本での就職を希望する学生は、「卒業見込み証明書」または「修了見込み証明書」が提出可能なら、毎年十二月一日以降に在留資格変更許可申請をすることができます。この件については、それぞれの該当する入管で確認をしてください。
技術に係る提出資料は希望する在留資格によって提出書類が異なるため、入管での確認が必要となります。
主な提出書類は、①本人の旅券(パスポート)・・・提示、②本人の外国人登録証明書・・・提示、③卒業(修了)証明書または卒業(修了)見込み証明書・・・原本、④招へい機関の商業・法人登記簿謄本・・・原本、⑤招へい機関の損益計算書・・・写し、⑥招へい機関の事業内容を明らかにする資料(会社概要など)、⑦卒業証明書または活動に係る科目を専攻した期間に係る証明書および職歴を証する文書、⑧活動内容、期間、地位及び報酬を証する証明書、⑨その他。
許可になると、入管より本人へ審査結果がハガキで通知され、許可証印の際には、卒業証明書などの確認がされます。その場合は、先ほど説明しました書類の原本や写しが必要となるようです。
就職未決定外国人留学生が卒業後、引き続き日本国内にて就職活動をおこなう場合は、入管への手続きが必要となります。その場合、①就職活動をしている、なおかつ、②大学による推薦がある時は、「短期滞在」への在留資格変更が許可され、さらに一回の在留期間更新が認められ、最長一八〇日間滞在することが可能となります。また、個別の申請に基づき、週二八時間以内の資格外活動の許可が与えられます。その場合の大学推薦は、本学の場合、国際交流課が窓口となり、課長が推薦書を発行していますが、このあたりの事務手続きに関しては疑問の残るところです。
最後になりましたが、本学キャリアセンターは総勢一九名(うち、就職ディベロッパー三名)のスタッフが学生への対応をしております。私たちの役目は、キャリアセンターの充実を図り、学生一人ひとりの「就職満足度」を向上させることであり、そのためには、教育職員と一丸となり日々支援プログラムの改良に努めております。(おわり)