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特集・連載

高校進路指導室の扉―新しい高大連携・接続に向けて―

本校の進路指導と教育力
高大連携・接続、入試改革などにおける課題

常翔学園中学校・高等学校進路指導部長  白須賀恒彦

 1.コロナ禍での高等学校の状況と新たな課題
 昨年度は先が見通せない中、一斉休校が長くなり授業や部活動など教育活動に少なからず影響が出たが、今年度は現在(8月下旬)まで長期の休校はせずに済んでいる。
ソーシャルディスタンスを取ること、分散登校、教室定員の半分での授業、オンライン授業など新たな課題が山積した。幸いにして本校では5年前から生徒1人1台のiPadを導入しているので、休校中でも授業を進めることができた。
 2.コロナ禍での進路指導の取り組み
 学校法人常翔学園は本校と大阪工業大学、摂南大学、広島国際大学の3大学、そして常翔啓光学園中学校・高等学校を併設している。大学進学説明会、大学体験模擬授業、進路セミナーなどの行事は感染対策を講じて行った。推薦入試などの選考資料となる高校3年対象校内学力テストは、1カ月延期して実施。進研や全統などの模試を活用し、大学入学共通テストの対策を行った。
 面接が実施される総合型選抜や学校推薦型選抜を出願する生徒には、模擬面接を実施している。面接カルテに予想される質問への回答を生徒に記入させ、対面での面接練習を実施していたが、コロナ禍の影響でマスク着用や距離を取るなどの対応が必要になった。更にオンライン面接を実施した大学へは、指定のアプリに合わせて急遽iPadでの対応をする必要があった。コロナ禍における不安から例年になく早期に進路決定を望む生徒が多く、学園内大学の内部進学や指定校推薦に人気が集まった。
 3.高大連携・接続について
 (1)入学前教育について
確かな学力を身につけるため、学習意欲をかき立てるように、本来は小中高大とスムーズなカリキュラムの連携が構築されているべきである。中学や高校時代に大学での学びに触れることで、ミスマッチを防ぎ大学中退を減らすことにつながる。指定校推薦や総合型選抜で早期に大学が決まれば大学での学びに備えた学習にも取り組み、大学生活がスムーズに始められるように過ごしてほしい。大学は入学前課題やオリエンテーション登校を実施しているが、任意参加ではなく、しっかりと取り組ませるシステムが高校・大学ともに連携して必要と考える。例えば、海外への短期語学留学や情報処理のスキルアップなどを大学入学前に実施することは入学後に活かせると思われる。
 (2)調査書の様式の変更について
 本校では調査書作成のシステムをプログラム化しているため、様式変更には予算措置からシステム開発、試運転後の本格運用と時間に追われ、多くの時間とエネルギーそして費用を費やした。
 4.入試改革などについて
 ①「JAPAN e-Portfolio」はなくなったが、新たに「キャリアパスポート」が始まった。生徒が記入(入力)し、教員が管理という点で同じような印象がある。せっかく作成するのであれば、就職指導などで大学でも活用願いたい。
 ②オンラインでのオープンキャンパスが実施された。第1志望の大学は決定していても第2、第3志望校を絞り切れておらず、実際に大学を見ることができないため、受験先を決定できていない生徒がいた。
 5.本校独自の特色
 身につけさせたい力を養う上で、取り組んでいる本校独自の特色を紹介する。総合型選抜への出願にも活用している探究学習であり、15年以上前から取り組んでいるプログラムもある。
 (1)ガリレオプラン探究について
 イノベーションゼミ・物理ゼミ・化学ゼミ・生物ゼミ・数理探究ゼミ・情報科学ゼミ・社会科学ゼミ・人文科学ゼミの8つのゼミに分かれて活動する科学探究授業。ゼミ形式で研究の基礎知識を学んだ後、個人あるいはグループで決めたテーマで研究を行い、文化祭や研究発表会で発表し、最後は論文にまとめる。
 (2)企業探究学習やヤングリーダーズプランについて
 課題解決型学習(PBL)として企業探究学習(高校1年)や「Osaka City Project(同2年)」を実施している。企業や大阪市旭区役所から与えられた課題を掘り下げて考え、理解し、発表することで課題解決力やプレゼンテーション力を養う。
 (3)ICT教育への取り組み
 生徒1人1台iPadを持ち、オンライン授業や生徒対応などさまざまな場面で活用している。
 (4)グローバル教育について
 グローバル社会で活躍できる人材を育てることを目的として、英語力だけでなく異なる価値観を持つ人とのコミュニケーション力や国際社会への興味関心を育て、チャレンジ精神・主体性といった幅広い能力を身につける教育を行っている。生きた英語を身につけるため次のプログラムを実施。また、これらの成果を図るため、本校では英検2級取得奨励に加えて、GTECの全員受験を実施し、英語力定着の指標としている。
 ①海外研修旅行(高校2年)について
 コースによって異なるが渡航先はアイルランド、カナダ、マレーシア、シンガポールなどである。現地大学生との交流・文化体験などを通して、グローバルな世界を体感し、グローバル規模で探究を深める。
 ②海外研修プログラム(学年不問の希望者)について
セブ島語学研修、シドニー語学研修、グローバルチャレンジプログラムイン ニューヨークの3つを用意している。
 ③海外留学について
 短期留学(ターム留学)からカナダ(バンクーバー)またはニュージーランドへの1年間の長期留学までを取り揃えている。
 ④オンライン英会話について
 英語4技能を身につけるため、iPadを用いたマンツーマンのオンライン英会話、ネイティブスピーカーを講師に招いて論理的思考力、プレゼンテーション力などを高める「Basic English Camp(高校1年)」、「Global Leaders Camp(同2年)」などを実施している。
 (5)新コースについて
 2022年4月、本校の中学校に「スーパーJコース」が誕生する。最難関国立大学や医学部医学科への進学を目標とした新しいコースである。この新設する「スーパーJコース」の募集活動を開始した。入学した生徒を高校2年からは「スーパーコース」として卒業までに目標達成に導いていく。本校は①難関大学現役合格に対応した学習プログラムで大学への進学を目指す学校②STEAM教育・ICT教育・グローバル教育を実施する特色教育の先進校③学園内に大学を設置するスケールメリットの大学併設校、という3つの要素を併せ持つハイブリッド校である。キャリアプログラム「常翔STEAM」とは科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、リベラルアーツ(Liberal Arts)、数学(Mathematics)の5つの学問領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念で、学問領域を横断して指導する枠組みのことである。中学校に「スーパーJコース」を作ることにより、今まで以上に最難関の大学への進学指導を行い、知識技能だけでなく、グローバル時代を生き抜くためのコンピテンシーを養っていく。大切なことは生きる力を身につけること。本校での教育力が問われる。
 6.私立大学への要望
 (1)指定校通知の書式の統一
 これは本校だけでなく多くの高校の進路指導部の共通の望みである。指定校推薦通知の各大学の書式がばらばらで、見落としがないようにしっかり点検しないといけない。毎年140校くらい来るので、進路指導部でこの点検がかなりの負担である。高校への通知は統一した書式にしてほしい。その方法としては、高校側で統一した書式を提案して、大学に歩み寄ってもらう形が良いのではないか。高等学校進路指導研究会でそういった場を設けられたらと考えている。
 (2)指定校推薦枠の早期通知について
 前年度までの情報で指定校推薦枠を目指している生徒がいるため、早期に指定校推薦枠を通知してほしい。指定校枠の減少や新たな条件追加などの急な変更は、生徒の希望の断念につながる場合がある。
 (3)その他
 公募制の推薦書の簡素化については記載事項を精査し、調査書との連動を図ってほしい。また、学校長から推薦書を送付している場合は、受験者の合否結果を高校に通知してほしい。文科省の学校基本調査の報告のため、4月末までに入学者の情報が欲しい。
 最後に、本校の教育を受けた生徒は大学でも一歩前に出られる人材となっているという自負がある。進学先の大学で研究室やゼミなどで更に高等教育を受け、社会で活躍でき、そして貢献ができる人材になってほしいと願っている。