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特集・連載

高校進路指導室の扉―新しい高大連携・接続に向けて―

ICTを活用した進路指導
~コロナ禍でも変わらない情報伝達の実現に向けて~

常翔啓光学園中学校・高等学校進路指導部長  川端健介

 2020年4月7日に緊急事態宣言が発令され、本校は困惑状態となった。すぐに緊急職員会議の連続で、今後の対応を協議した。
 生徒との連絡媒体としてMicrosoft Teamsを導入し、授業をMicrosoft Streamのアプリを利用した動画配信、質問はチャットを利用して通常の時間割どおりで実施することとした。また、模擬試験は、分散登校時に高校3年を優先に、教室での受験を実施したり、自宅受験させたりと工夫をした。このような日常の業務の中で、進路指導部としての方向性を先に決定していった。本校には元来進路指導の方針があり、『生徒自身が自らの進路を主体的に考え、実現に向けて行動できるよう、将来の目標について考える機会をできるだけ提供する。
 そして、目標とする進路実現を目指す生徒を中心に、全生徒の志望校合格を最大限サポートする』というもの。その方針のもと「コロナ禍だからこそ、高校3年は、最後(3月)まで頑張ろう」「保護者の協力も得て大学受験回数を増やそう」と具体的な目標を立てた。年内に早く進学先を決めたい高校3年の生徒がたくさんいるとの情報もある中で一般選抜入試まで頑張るように指導していくこととし、高校3年の教員にも協力をお願いした。また、本校では、指定校推薦・学園内大学連携型推薦(大阪工業大・摂南大・広島国際大)の推薦枠があり、情報や手続き方法を生徒・保護者へしっかりと周知しなくてはならなかった。しかし、コロナ禍で、保護者を学校に呼べない状態であり、保護者集会が実施できない状況であった。
 例年の取り組みを時系列で書き上げると(1)4月進路ガイダンス(保護者・生徒)(2)4月関西8私大ガイダンス(保護者)(3)6月学園内大学ガイダンス(保護者・生徒)(4)6月国公立大学ガイダンス(保護者・生徒)(5)7月入試英語対策セミナー(生徒)とあり、これらのガイダンスをどう実施するかを考えることとなった。方向性は、もちろん全てを実施するということに決めた。
 とにかく実施形態を変えてでも情報を提供することを考え、(1)動画を作成し、今春の合格実績から大学入試方式(学校推薦型選抜・総合型選抜入試)の説明と進路指導目標である『最後まで頑張ろう・受験の機会を増やそう』というメッセージを高校3年の保護者に配信した。(2)についは、関西8私大(関関同立・産近甲龍)からの高校派遣がかなわず残念ながら中止となった。(3)6月学園内大学ガイダンスでは、保護者には動画をMicrosoft Teamsにて配信し、Microsoft Formsというアプリを利用して、アンケート調査を実施した。動画を家庭で視聴したかどうか、指定校推薦、学園内大学連携型推薦を考えているかどうか、対面式と家庭での動画視聴どちらが良いか、を実際の保護者の声を聞くことにした。通常なら保護者集会を実施し、例年高校3年の約60%の保護者が出席するが、動画配信では再生回数を参加人数とすると対面式同様、約60%の保護者が視聴した。動画配信と対面式とどちらが良いかという質問には、動画配信の方が良いという意見が多かったものの、対面式では自分の知りたいことを質問できるので良いという意見もあった。分散登校の中、広くて換気のよい体育館を利用して生徒には学園内大学連携型推薦や指定校推薦などのガイダンスを実施した。やはり生徒の顔を見て話しをすることは、われわれ教員が安心できると実感。これを機に(4)6月国公立大学ガイダンス(5)7月入試英語対策セミナーは対面式で実施しようと決心した。国公立大学ガイダンスでは、近隣の2校の大学が対面式で実施し、生徒にとても好評であった。また、入試英語対策セミナーには関西の私大11大学と広島国際大(オンライン参加)の合わせて12大学の参加があった。英語の重要性について学び、各大学の問題傾向を理解するきっかけになった。生徒にとっては有益な情報となったと思う。
 昨年度の進路行事に関しては、対面式とオンライン形式とのハイブリッド形式で実施し、例年と同様の情報を生徒たちへ与えられたと思う。
 また、次に教員の進路に対する共通認識と情報の共有が大変難しく、私は、次の3点を重要視した。
①教員の生徒対象進路ガイダンスへの参加、②進路シラバスの確認、③教員対象の出願指導研究会の実施(学校推薦型・一般選抜・国公立大学出願の年3回)。
 まずは、生徒が知っている最低限の情報は共通認識として教員が知っておくことは重要なことである。その内容を踏まえて進路シラバスを特に担任の先生方へ周知した。そして、年内推薦の出願校は、まず、10月に進路指導部長が担任と面談し、生徒面談・三者面談を通じて出願校を決定した。一般選抜入試も同様に決定し、年内で進路先を決定する生徒が増えないよう、第1志望校合格まで頑張れるような指導を心掛けるよう担任とも話し、生徒面談を行った。最後は、国公立大学出願校を決める高校3年担任団と進路指導部、また高校2年担任団も入れた出願校決定の会議を実施した。大学入学共通テストの自己採点後、3日間かけて出願校を皆で決めた。その後、三者面談を通して生徒へ伝え、担任と相談しながら出願するという流れである。その会議で重要視することは、生徒の志望分野。つまりどんな学部学科に興味があり、4年間どのような学びをしたいかを優先し出願校を検討する。
 今年度特に、近畿圏以外の国公立大学も視野に入れて考えていた生徒が例年より多いと感じた。各大学のオープンキャンパスもWeb(オンライン)で開催されることが多く、全国の大学とも簡単につながり、身近に感じていたのかもしれない。また、新型コロナウイルスの影響で都市部より地方の大学の方がより良い環境で勉強できるのではという考えもあったのかもしれない。その結果、国公立大学への出願者数が大きく伸びた。
 昨年度、コロナ禍で多くのことを考えさせられた。特に進路行事については、例年どおり実施しているが本当に必要なことかどうか、対面式においての説明が生徒に浸透しているかどうかなどを考えさせられた。
 昨年1年間を通して気付いたことで、今年度から取り入れたことは、(1)ICTを活用した各HR教室での進路ガイダンスの実施(2)全国の大学へのオンラインでのガイダンス参加依頼、この2点を取り入れた。その結果、今年度は、全国の国公立大学から10大学も参加した国公立ガイダンスを実施することができた。生徒にとってさまざまな大学があり、学びがあることを知るきっかけになったと思う。
 ICTを取り入れたことで本校の進路指導は、全国の大学に視野を広げ、自分の学びたいことの選択肢を増やして可能性を広げる指導ができるようになった。新型コロナウイルスの影響で、できなかったことも多いが、その中でもよい気付きが生まれたとも考えられる。今後、少しでも生徒たちが主体的に学び、進路を決定する機会をたくさん作ってあげたい。