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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<210>東京医療学院大学
社会が期待する医療従事者育成
リハビリと看護2学科  人に優しく、社会に貢献

「人に優しく、社会に貢献できる人材の育成」が建学の精神である。東京医療学院大学(佐久間康夫学長、東京都多摩市)は、2012年、保健医療学部リハビリテーション学科の一学部一学科で開学したフレッシュな大学。ひとりひとりの患者と向き合い、その人の心に寄り添う「仁愛」、医療従事者として社会が抱える問題解決のための「知識」、人体や障がいの成り立ちを学び、治療や回復のための具体的な「技術」の3つを教育理念として掲げている。2016年、看護学科を開設、コミュニケーション能力と課題解決能力に優れた看護師と助産師の育成を目指す。各教員からアドバイスを受けられるオフィスアワーの設置など教員との距離が近い。医療系という特長を生かした地域貢献活動も活発だ。「重点的に配置した教員による手厚い指導により、入学時の意欲を具体化し、4年間でさらに発展させて、これからの社会が期待している医療従事者を育てたい」という学長に学園の歩み、学び、これからなどを聞いた。
(文中敬称略)

教育理念は仁愛・知識・技術

 東京医療学院大学は、1950年に創立者の平川荘作が東京都中央区八丁堀に開設した東京マッサージ師養成所が淵源だ。77年、専修学校として認定、79年、校名を東京鍼灸マッサージ学校、89年、東京医療福祉専門学校と改称。
2002年、新たに専門学校東京医療学院(理学療法学科・作業療法学科)を開設。東京医療学院大学と2つの専門学校は、「人に優しく、社会に貢献できる人材の育成」を唱える学校法人常陽学園が運営する。
東京医療学院大学は、2012年、保健医療学部リハビリテーション学科(理学療法学専攻・作業療法学専攻)の1学部1学科2専攻で開学。「長年、専門学校で培った理学療法や作業療法を4年制大学で深めようと開設しました」
16年、保健医療学部・看護学科を新設した。「日本医大多摩永山病院など地域にある大学などで看護師が足りないという地域の要請もあって設置。チーム医療の現場で求められる経験を学生時代から養うことが一つの目標です」
現在、保健医療学部リハビリテーション学科に454入、保健医療学部看護学科(二学年)に169人の計623人の学生が学ぶ。男女比はほぼ同率。
学長の佐久間は1971年、横浜市立大医学部卒、同大学院で医学博士。専門は、生殖生理学,神経内分泌学,行動神経科学。群馬大、米ロックフェラー大、新潟大、弘前大で助教授・教授職を務め、92年、日本医大教授に就任。2012年、日本医大名誉教授となり、同年、東京医療学院大学長に就任した。
佐久間が大学について語る。「本学の強みは、充実した基礎医学教育と実習、地域の拠点病院の全面的な協力による臨床・臨場実習です。少子高齢者が深刻化している現在の日本。医療保健福祉の人材育成は社会の急務とされていますが、まだまだ高齢化のスピードに追いついていません。求められているのは、優しい心と確かな腕をもった人材です。コミュニケーション力のある、人との触れ合いを大切にできる医療従事者を育てていきたい」
各学科の学び。保健医療学部リハビリテーション学科。国家資格取得はもちろん、テーピング理論などを通してスポーツ業界で活躍できる。スポーツ傷害予防、リハビリ治療といったリハビリテーションの特別講義もある。
「リハビリテーション関連病院などに就職する学生以外にも、スポーツ選手を支えるトレーナーの道に進む卒業生も増えています。プロスポーツでは、アスリートやスポーツ選手を支える理学療法士、作業療法士が活躍し始めました」
同科理学療法学専攻。理学療法士は、「病気やけがで障がいを持った方々の社会復帰を手伝いたい」、「地域にお住いの高齢者の健康長寿に寄与したい」、「動作の円滑さというものを客観的に捉えたい」という志を持った学生が学ぶ。
「最近では、理学療法士に選手の傷害予防、競技パフォーマンス向上のために選手教育、指導の依頼がきます。スポーツ分野は、競技種目が多彩で、将来オリンピック、パラリンピック関連スポーツなど活躍の場は広がるでしょう」
同科作業療法学専攻。作業療法は、対象者の心の琴線にふれながら、さまざまな作業を仲立ちに、人と環境に働きかける。作業療法でいう作業は、対象者個人や地域社会にとって価値や目的を持つ、日々の活動を指す。
「作業療法は日常生活から社会生活まで、『暮らしやすさ』を取り戻すための支援を行っています。主役である対象者や家族、多くの他職種のスタッフとチームを組み、保健、医療、福祉、地域、教育などの分野で支援を進めています」
保健医療学部看護学科は、看護師国家試験受験資格、助産師国家試験受験資格を取得することが可能。長く医療現場と連携を取ってきた学園のノウハウを活かし、医療の魅力を伝え、医療従事者のスペシャリストを育てる。
看護学科のカリキュラムの特徴は、看護への動機づけとして入学間もない時期に病院見学実習を組み入れている。4年間を通して「看護の専門職性の発展の基盤」というゼミ形式の科目群を段階的に位置づけている。
「看護師には患者さんの心の奥に秘めている苦悩を感じとることができる豊かな感性が必要です。人を大切に思う心は、それに応えようと自分自身の心がときめいて発する言葉となって相手の心に伝わるのです。そのためには、まず人に関心があること、そして人が好きであることがとても重要です」
「看護学科では、コミュニケーション論やコミュニケーション見学実習で一人ひとりに合った看護を生み出す力を養います。このように、医療従事者に最も必要な倫理観やコミュニケーション能力を養うカリキュラムを用意しています」
教員と学生の近い距離
教員・学生の距離が近い環境。「オフィスアワーは、週1日、昼休みに何でも気軽に相談できるよう、教員が研究室で待機している時間がある。「予約なしに訪ねることができます。教員と多く関わることで、専門知識などをより吸収し、将来活躍できる医療従事者をめざせます」
国家試験対策。理学療法士・作業療法士の国家試験は、時代に合わせて出題の傾向が変わっているという。「多くの学校が取り入れている一般的な国家試験対策を行いながら、新しい出題にも対応できるよう、早い学年から準備を進めています」
活発な地域貢献活動
地域貢献活動。同大を運営する常陽学園は、多摩市と地域社会の連結協力に関する協定を結んだ。「人材育成や教育・文化、福祉の向上や街づくり、地域づくり、防災に関する事業などを展開しています」
リハビリテーション学科は、1年次「ボランティア入門」の授業がある。「地域の高齢者施設や保育園でのボランティア活動を行い、「人の役に立つことの素晴らしさ」を実感してその後の学びに活かしています」
就職支援。キャリアセンターは、医療従事者として"自分にふさわしい就職"が円滑に進むよう支援を行っている。「3年生から就職支援セミナーを実施し、職業人になる意味を深めながら、履歴書の書き方や面接の練習など実務的な経験ができる機会を設けています」
「理学療法士、作業療法士とも1700人から1800人の求人を頂いています。このように恵まれた就職状況の中で、一人ひとりの学生が安心して、医療人として活躍できる一歩を踏み出すことを願って支援しています」
大学のこれから。「AI(人工知能)が叫ばれていますが、障がい者や高齢者の援助は、AIではできません。人間の手足、人間の心が対処しなければなりません。障がい者や高齢者が『クオリティーライフ(中身を重んじる質の高い生活)』をまっとうするため、学生には動機付けをして取り組ませたい。また、待遇面の改善を国などに働きかけるなどして学生を支援していきたい」
クリニック開設したい
最後は、飛びっきりの笑顔で話した。「保健医療学部に大学院(修士)をつくり教育研究面をさらに高めたい。それと、地域の方々にも利用できる小さなクリニックをつくりたい」。学長の顔がお医者さんの顔になった。