加盟大学専用サイト

特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<205>就実大学
実践的で創造的な人材育成
教育目標は「実地有用」 就職力と地域貢献力誇る

「去華就実(華を去り実に就く)」が建学の精神で、校名の由来でもある。就実大学(片岡洋行学長、岡山市中区西川原)は、1904年に創設された私立岡山実科女学校が淵源で、1953年に就実短期大学が設立され、79年に4年制の就実女子大学が開学。2003年に就実大学への名称変更、学部、学科の増設、男女共学化が図られた。現在、就実大学は人文科学部、教育学部、薬学部、経営学部の四学部からなる。①知的好奇心を刺激する実践的な教育カリキュラム②地域社会からの厚い信頼で脈々と受け継がれる「就職の就実」③「知の拠点」として地域の教育・医療・経済活動への貢献などが特長。「本学の教育目標は『実地有用』」ですが、その時代に必要とする知識・技能や実学を修めることで、当面している場面状況に応じて的確に判断し、行動できる実践的で創造的な人材育成を目指しています」と語る学長に、学園の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)

建学の精神は「去華就実」

キャンパスは、JR山陽本線・赤穂線で岡山駅から一駅の「西川原・就実」駅のすぐ前にある。系列校に就実こども園、就実小学校、就実中学校・高等学校、就実短期大学があるが、中高以外は、同じ敷地にある。 
学長の片岡が、建学の精神「去華就実」を説明する。「この言葉には、外見の華やかさに心奪われるのではなく、内面の豊かさや知性、社会に貢献できる実践的な能力などをまず身に付けること、といういつの世にも通じる高い志が込められています。すなわち、表面的な知識だけを身に付けても、内面を磨かなければ、真に社会で役立つ人間にはなれないということです」
1904年、私立岡山実科女学校を創設。11年、私立実科女学校を就実高等女学校に改称。42年、岡山実科女学校廃止、就実高等女学校を岡山県就実高等女学校に校名変更。
戦後の1947年、岡山県就実中学校、48年、岡山県就実高等学校を設置。53年、就実短期大学(家政科)開学。79年、就実女子大学として開学。文学部日本文学科、英米文学科設置。85年、文学部に史学科増設。
99年、就実女子大学大学院(男女共学)設置。2003年、就実女子大学を就実大学に校名変更。文学部を人文科学部に名称変更。男女共学の薬学部(生物薬学科、医療薬学科)を増設。
04年、人文科学部を男女共学に。06年、薬学部を6年制に移行、生物薬学科と医療薬学科を薬学科の1学科に。07年、人文科学部に初等教育学科を増設。
11年、教育学部(初等教育学科、教育心理学科)を増設。14年、経営学部経営学科を増設。「教育学部は、教員不足に対応し、経営学部は、社会科学系の学部を設置して総合大学を目指しました」
現在、人文科学部、教育学部、薬学部、経営学部の4学部に2736人(短大は389人)の学生が学ぶ。男女比は男子31.5%、女子68.5%、出身地は岡山県内が71.9%で、広島、香川と続く。
各学部の学び。教育目標である『実地有用』を実践する。人文科学部(表現文化学科、実践英語学科、総合歴史学科)。「書物を読むだけでなく、美術館や博物館などと連携、本物の文化や歴史に触れて価値を見出し、自分で考え、自分で実践する力を養うことを重視しています」
教育学部(初等教育学科、教育心理学科)。『教え導く、支えケアする』をモットーに、地域の小中学校や特別支援学校への連携協力、公営塾などでの学習ボランティア活動を通して、教員になるための資質を磨いています」
薬学部(薬学科)。化学に強い薬剤師養成に力を入れる。「独自に開発した構造式カードゲームで特色ある教育を展開しています。難しい授業もとっつきやすく、楽しく学べるので学生の評判もいいですね。4年前から実施していますが、成績も上がっています」。医療現場での早期体験学習も充実し、新卒の薬剤師国家試験合格率も高い。
経営学部(経営学科)。事前学習、研修、発表という課題解決型のインターンシップに力を入れる。『地域に学び、地域で働く』をモットーに、リージョナルコースでは、2年次後期から県内50以上の企業・団体での四か月間の長期インターンシップが必修です。また、グローバルコースでは、海外留学プログラムがあります」。出井伸之元ソニー社長ら特任教授も充実している。
知的好奇心を刺激する実践的な授業。「専門科目も大事ですが、もっと大事なのは教養科目や初年次教育だと思います。複雑化した社会においては、コミュニケーション力、チームワーク力、社会人基礎力を身に付けてほしいと考えています」
そこで、初年次教育に力を入れる。本年度から始まった「スタートアップ就実」(1年次の前期15回)という授業では、1年生全員が学部の垣根を取り払ったクラス編成で学ぶ。建学の精神を実践するためにはどうするか、大学生活やキャリア・ライフデザインについて、アクティブラーニングやグループワークを通じて考えさせる。
「学生は、毎回課題に対して学内ランでレポートを提出します。半年経過しましたが、授業が面白いと出席率もよく、学生に必要な学びのスキルアップにつながっています」
脈々と受け継がれる「就職の就実」の歴史。全学科にクラス担任制を導入し、個別指導。低年次から学生生活や生き方に関する講座も開設し、各自のキャリア発達を促すプログラムがある。「キャリアデザイン論を単位化し、総合教養教育に位置付け、2年次から履修できます」
1年次から個別指導
就職率(2017年度)は、教育学部、薬学部、経営学部は100%、人文科学部は95.7%。「キャリアセンターが中心となって、学生一人ひとりが希望の職業に就けるよう、社会人として順調にスタートできるよう、1年次から各種講座やキャリアカウンセラーによる個別指導を通じてサポートしています」
教育学部の初等教育学科は、保育士、幼稚園教諭、小学校教諭、特別支援学校教諭を目指す。「教職支援センターが、過去の問題や実技試験、本番同様の面接指導などきめ細かく指導、教員採用試験合格者も増えています」。教育心理学科では、国家資格の公認心理師の養成を始めた。
「真の国際人」を育成
グローバル化にも尽力する。広い視野を持った真の国際人を育成するため、海外留学をサポート。英語圏11校、中国3校、台湾1校、韓国5校、タイ1校、ベトナム1校、インドネシア1校の協定大学と提携し、語学力の向上や海外研修を支援する。
「研修には数週間の短期研修をはじめ、6~7か月研修で12~24単位が認定される長期研修があります。研修先はアメリカ、イギリス、オーストラリア、中国、韓国、カナダから選べます」
大学のこれから。「これまで、全教職員がベクトルを合わせて取り組む教学ガバナンスの強化、学生の成長に繋がる教育力の向上、学生の生活実態調査による学びの環境改善など、『対話と協調、有言実行』で改革を行ってきました」と述べた後に続けた。
他大学と差別化図る
「2040年には、18歳人口は88万人に減少、大学進学者は約51万人と予想されています。対応策として留学生の確保、社会人の学び直しや大学連携・統合などが言われていますが、学生募集が厳しくなるのは必至です。本学は学園創立120年となる7年後を見据えて中長期ビジョンを策定中ですが、ニーズのあるところ、独自の強みがあるところ(大学)には学生は集まります。他大学と差別化し、ブランド力を伸ばしていきたい」
自律・主体的に学修を
最後に、学生にエールを送った。「表面的な知識だけを身に付けても、内面的な人間力や行動力、実践力を磨かなければ、真に社会で役立つ人間にはなれません。自律的・主体的に学修し、探究する経験を学生生活の中で体得することで建学の精神を身に付け、夢の実現に向けて新しい道を切り拓いてほしい」