特集・連載
大学は往く 新しい学園像を求めて
<201>東北文化学園大学
社会貢献できる教養人育成
3学部の分野を超えた学び
来るべき福祉・医療の時代に対応するため、多領域のスペシャリストとの協同で、未来の『輝ける者』を育てる。東北文化学園大学(土屋 滋学長、宮城県仙台市青葉区)は、1999年に開学、医療福祉学部、総合政策学部、科学技術学部の3学部からなる。医療と福祉に貢献する医療人、人間性と創造性を備えた産業人、企画力とリーダーシップを備えた社会人をめざす。それを、3学部の分野を超えた学びやフィールドワークの充実、学生サポートの確立が支える。①TBGUプロジェクトやボランティアを通じて行う地域貢献活動②リハビリ、福祉、看護、公務員、コンピュータ、建築など多方面の資格取得をめざす学び③在学中から就職まで、学生を安心・強力にサポートする就職の強さ―などが特長。「4年間かけて自分を輝かせる何かを探し、見つけ、そして磨き、『輝ける者』に育てて社会に送り出したい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)
未来の「輝ける者」を育てる
キャンパスは、JR仙山線で仙台駅から5つ目の国見駅の目前にある。豊かな自然に恵まれ、充実した施設設備が並ぶ。キャンパス内には系列校の東北文化学園専門学校の校舎が併置されている。
東北文化学園大学は、1978年に仙台市本町に開校した宮城デザイン専門学校が淵源である。84年、東北医療専門学校が開校。85年、東北商科専門学校を継承し、東北情報工学専門学校に名称変更する。
90年、仙台市青葉区国見にキャンパスを移転。東北工科美術専門学校と東北情報工学専門学校を統合し、東北工科情報専門学校に学校名を変更。93年、東北科学技術短期大学(情報工学科、建築設備環境学科)が開学。
99年、東北文化学園大学が開学。03年には大学院を設置するが、一時期、資金難に陥り、05年から再生計画が実施される。10年に医療福祉学部に看護学科、11年に大学院にナースプラクティショナー(N.P.)養成分野を設置。
「診療看護師(N.P.)は、医師の指示のもとに診療と看護の能力を持つ特別に教育された看護師。厚生労働省から、看護師の研修制度で、全21区分の特定行為研修を行う研修機関として指定されました」
11年、東北大学医学部教授だった土屋が学長になり、13年、理事長に就任して理事・評議員が一新されて経営再建が果たされる。16年には、東北地方初となる臨床工学科が科学技術学部に設置された。
「臨床工学科の設置により、医療福祉系の学科専攻は七領域となり、10の国家資格の養成課程を持つ医療福祉を軸にした総合大学に発展しました」
2017年、総合発達研究センター附属国見の杜クリニックが開院。「大学の教育研究資源を活用して発達障害児・者と言語聴覚障害児・者やそのご家族を支援するとともに教育・研究の向上を図ることが目的です」
現在、医療福祉学部、総合政策学部、科学技術学部の3学部に1880人の学生が学ぶ。男女比は男子6、女子4。出身地は、宮城、山形を中心に東北6県が大勢を占める。
土屋は、学長に就任してから教育改革に次々に着手した。ラーニング・コモンズや「TBGUプロジェクト」など、時代のニーズに応える実学を充実させる取り組みを敢行した。
ラーニング・コモンズである教育支援センター(Eサポ)。全学生を対象に、「対話する力(考える力+聴く力+話す力)」を高めるのが目的。自習やグループ学習での利用だけでなく、教員が配置され、勉強の仕方や授業の復習、自己学習、レポートや論文などの書き方など、学生のさまざまなニーズに対応している。
「新聞カフェ」など多彩なセミナーも展開。「カフェ形式で、同級生という横のつながり、そして教員、先輩、同窓生などとの縦のつながりを深め、アクティブな人との交わりの中で成長して行くことを期待しています」
TBGUプロジェクトは、全学共通教育で3科目ある。「TBGUプロジェクトI(輝ける者)」は、東日本大震災をきっかけに、被災地大船渡でベートーヴェンの「交響曲第九番」を歌う復興支援コンサートを実現。「その活動を評価し、本学の特色ある教育の柱の一つとして全学共通プログラムに発展させました」
「TBGUプロジェクト(地域活動・ボランティア)」は、持続的に東日本大震災からの復興を支援していく取り組み。「ボランティア活動を通じて地元の人々と交流し、その中でボランティア活動の意義を理解します」
「TBGUプロジェクトⅢ(人間形成)」は、学部専門教育を理解するための土台作りを目指す。「基礎的学修力の強化を通じて、人間形成の基盤を涵養。文章表現、実践数学、グローバル・コミュニケーションの3コースから2コースを選択して受講します」
このほか、「海外研修」の科目がある。海外の提携校で、体験型教育プログラムを学ぶ。「総合政策学部と科学技術学部では、企業インターンシップに関する科目を置くことで、学外での体験的学修も単位として修得できます」
学部・学科を超えた学び。外国語、情報処理、経済学、社会学などは3学部共通の基礎科目。専門科目についても他学部の履修、単位取得を認めている。「学部間で共通する分野については共通テーマを掲げ、各学部が連携して教育と研究を行っています」
資格取得を重視した学び。医療福祉学部は、9つの専門職(看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士)をめざす学生が多い。
「国家試験対策は、1年次から行っています。職種の独自性を考慮して、PDCAサイクルを改善しながら合格率を上げるよう各学科に指示しています。一方で、医療福祉学部で専門職連携セミナーを開き、自らの専門性を明確にするとともに、他の専門職との相互理解を深める教育を行っています」
就職力。就職率は98.0%(就職者数/就職希望者数、2018年3月卒業生実績)。「就職先は、医療福祉学部は、医療分野が多いですが、介護・福祉分野も。総合政策学部は一般企業が多く、科学技術学部は、インテリア設計士、宅地建物取引主任者などの資格を取って建設分野が多い」
地域貢献活動では、大学におけるボランティア活動の拠点でもある地域連携センターを設置。東日本大震災被災地への息の長い支援を学生に呼びかけている。
今後いつ起こるか分からない災害に備えるガイドブックを制作した未来・心と心を繋げるプロジェクト、仮設住宅を定期的に訪問するNSプロジェクト、被災者の生活支援、健康支援を行う健康支援隊といった活動をしています」
大学のこれから。「多様性ある学生にどう対応していくか、第一は、教育の質を高めることです。初年次からの教育で達成感、自己肯定感を持たせるプログラムで教育の質を向上させたい。また、本学は、発達障害児らを支援する国見の杜クリニックや大学院にナースプラクティショナー養成分野など他大学にないものを持っています。こうした特色を発信して大学のブランド力を高めていきたい」
最後は、TBGUプロジェクトのベートーヴェンの第九交響曲「合唱」の話になった。「昨年の演奏会は、飯森範親氏の指揮による仙台フィルハーモニー管弦楽団との共演でした。岩手大学、東北大学、社会人合唱団有志の方々と共に歌った『合唱』は、深く聴衆の心を捉えました。私たちにはこんなに素晴らしいことが出来るのです。仙台を眺望できる国見の丘で、日本を、世界を俯瞰しながら、広く社会に貢献できる教養人をこれからも育てていきたい」。「『輝ける者』に育てて社会に送り出したい」のフレーズを繰り返した。