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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<197>尚絅大学
“学生が学びの主体”で育成
きめ細かな少人数教育 資格・免許の取得を重視

「智と徳を兼ね備え社会に貢献し得る女性の育成」が建学の精神である。尚絅大学(森 正人学長、熊本市中央区九品寺)は、1888年に創設された濟々黌附属女学校が淵源だ。爾来、130年にわたり女性の高等教育機関として、多くの卒業生が、社会のさまざまの分野で活躍している。現在は、大学、短期大学部、高校、中学校及び、附属こども園を擁する熊本県唯一の女子総合学園に発展。尚絅大学に現代文化学部(文化言語学部を2018年4月に改組転換)、生活科学部、短期大学部に総合生活学科、食物栄養学科、幼児教育学科がある。友達や先生と「一緒に学べる」きめ細かな少人数制や各種資格・免許の取得を目指すなどキャリア支援が特長。「学生を学びの主体として育成し、あわせて心を磨く教育に力を入れて、生涯にわたって研鑽を重ね、人間性を尊重し社会に貢献する女性の育成を目指し、21世紀に活躍する人材を育てています」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。 (文中敬称略)

学校名は中国の古「典衣錦尚絅」から

 学園・学校名の「尚絅」は、中国の古典『中庸』の一節「衣錦尚絅」(錦を衣て絅を尚ふ)にある。学長の森が説明する。「錦を着た場合はその上から薄物をかけ、きらびやかな模様を表に出さないようにするという君子の道のあり方です。表面を飾らず内面の充実に努めるという、人としての心構え、あり方が含意されています」
 尚絅大学は、明治21年に佐々友房とその同志により創設された濟々黌附属女学校に遡る。3年後の1891年、尚絅女学校と改称され、濟々黌から独立する。96年、私立尚絅高等女学校と改称する。
 戦後の1952年、熊本女子短期大学(家政科)が開学した。68年、熊本女子短期大学幼児教育科を清水校地(現武蔵ヶ丘キャンパス)に設置。69年、熊本女子短期大学附属幼稚園が開園した。
 75年、尚絅大学が、文学部(国文学科・英文学科)の1学部で開学。同時に、熊本女子短期大学を尚絅短期大学と改称。88年5月、尚絅学園創立100周年記念式典を挙行した。
 2006年、尚絅大学に生活科学部(栄養科学科)と文化言語学部(文化言語学科)を設置、文学部を募集停止。尚絅短期大学を尚絅大学短期大学部、幼児教育科を幼児教育学科と改称、総合生活学科、食物栄養学科を設置した。
 2016年4月、熊本地震に見舞われた。「建物は耐震補強していたので被害も限られた。学生全員が無事だったのが何よりでした。学生たちは、被災地で炊き出しなどボランティア活動を展開、この経験は社会に出てからの支えになると思います」
 2018年、尚絅大学は、文化言語学部(文化言語学科)を現代文化学部(文化コミュニケーション学科)に改編する改革を断行した。「高度情報化とグローバル化の進む社会の要請に応え、地域で必要とされる人材育成がねらいです」
 現代文化学部(文化コミュニケーション学科)は、情報メディア文化、観光文化、日本・東アジア社会文化、文芸文化の4領域がある。「2年次に4領域から主専攻と副専攻を選択します。語学や観光、ビジネスの資格取得も重視しています」
 現在、尚絅大学は、現代文化学部(文化言語学部)のほか、生活科学部に496人、尚絅大学短期大学部(総合生活学科、食物栄養学科、幼児教育学科)に518人の学生が学ぶ。
 生活科学部(栄養科学科)は、管理栄養士に必要な高度な専門的知識・技能を育成。「適切な態度・倫理観、さらにそれらを背景としたコミュニケーション力を育成するために、実験・実習・演習を体系的に配置しています」
 短大部(総合生活学科)は、医療事務・情報ビジネス、福祉ウェルネス、生活デザインの3領域を履修。「インターンシップ体験や課外活動、ボランティア実習や卒業演習を通して、地域社会で貢献できる女性を育成します」
 短大部(食物栄養学科)は、「食と栄養と健康」をキーワードに、幅広い知識・技術・能力を身につけた実践力のある栄養士を育成。「2年次の校外実習は、キャリア教育の一環として位置づけ、学生の能動的学修を充実させています」
 短大部(幼児教育学科)は、幼稚園教諭、保育士を養成。「個性ある幼稚園教諭や保育士を養成するために学生がそれぞれ専門分野を深く学ぶピーク制を導入し、保育者としての知識や技能を深めるため、附属こども園などで2年間で10週間の実習を行います」
 少人数教育の実践。「学生が学びの主体です。学生は広く読み、問い、調べ、みずから考える姿勢の確立を図りつつ専門的な知識と技能を修得。みずから学修する姿勢こそが卒業後の実践を確かなものにするとの観点から、きめ細かく指導しています」
 昨年、学修支援センターを設置した。「専門教育にスムーズに移行できるように初年次、リメディアル教育に取り組んでいます。高校のベテラン教員らの指導で学修成果は上がっています。学生の履修相談にも応じています」

就職率は短大含め100%

 就職率は、短大含めて100%(平成28年度)。就職先は、地元が8割。従来の就職課と連携し、全学的な就職支援体制とキャリア教育プログラムを確立するため就職進路支援センターを設置した。職員だけでなく教員が一緒になって就職支援をするとともに、外に向けて本学の学生の良さを伝えている。
 「学生一人ひとりの目標に合わせた就職・進路指導を実施しています。地元企業との就職懇談会を開催するなど地元企業への就職をバックアップ。卒業生の活躍も大きな支援となっています」
 地域貢献は、地域連携推進センターを中心に尚絅子育て研究センター、同食育研究センター、同ボランティア支援センターが担う。研究成果を広く社会に発信するとともに学外の諸機関との連携を推進し、地域社会への貢献を続けている。「子どもたちの食事の実態を調査して、これに基づいた食育プログラムをつくることなどを目指して活動を行っています」
 また、尚絅ボランティア支援センターでは、学生のボランティア活動を支援することを通じて社会に貢献できる人材の育成に努める。「地域とともにある大学として、さらに地域との連携に力を注ぎたい」

グローバル化に傾注

 グローバル化対応も積極的だ。韓国と台湾の二つの大学と交換留学を行っている。「熊本県と姉妹都市の台湾の高雄の大学、そしてマレーシアの大学と交流協定を結ぶ予定。東アジアとの交流をさらに深めていきたい」
 学生のクラブ・サークル活動。「文化やスポーツを通じて仲間と過ごすのは貴重です。書道部が、卒業生と一緒になって展覧会を開くなど積極的です。フラダンスのサークルは、福祉施設への慰問などボランティアで頑張っています」
 大学のこれから。「尚絅学園の長期ビジョンと中長期行動計画」の制定から5年が経過。大学から高校、中学校、こども園まで一貫性のある教育を行っていく必要があり、平成28年度に「全学グランドデザイン」を策定した。
 「人類の長い歴史の中で女性は大きな役割を果たしてきましたが、複雑で変化の激しい現代社会ではとりわけ女性の参画が期待されています。女性の活躍の基礎には高度な教育が必要です。少子化時代を迎え、建学の精神、「尚絅」の教育理念および学校の使命の下、大学では、これに合わせて入学者受け入れ方針、教育課程編成、学位授与の方針の見直しも進めています」

教養科目組み換えへ

 具体的には?「教養教育の組み換えを検討しています。地域社会への知識、関心を持ってもらおうと『熊本学』の授業や茶道など伝統文化を取り入れたい。地域貢献では、こちらから提供するだけでなく、地域から課題を頂いて、学生も参加して研究等を経験させたい。学生の職業意識を高めて社会に送り出したい」
 こう結んだ。「大学の活動を地域の方々に知っていただくことも大事なことです。地域に支えられる大学として、地域がどんな人材を求めているか、地域社会にさらに貢献できる大学を目指したい」