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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<194>新潟薬科大学
生命と健康の科学的探究目指す
薬学と応用生命科学部   就職力と地域貢献を誇る

くすり、食品・バイオ・環境分野のプロフェッショナルを育成。新潟薬科大学(寺田 弘学長、新潟市秋葉区)は、新潟県で唯一の薬学部を有する生命科学系総合大学。40年にわたり「くすりと健康」のスペシャリストを育ててきた薬学部と、「食品・バイオ・環境」分野に関する最先端の教育・研究を行う応用生命科学部の2学部からなる。二つの学部は、「健康」というキーワードで結ばれ、生命と健康の科学的な探求を目指す。少人数教育を活かしたアドバイザー制度や苦手科目を個別指導する学修サポート室など手厚い学生支援。低学年次から始まる徹底したキャリア教育による就職力を誇る。「くすりと健康の専門家と、食・バイオ・環境の専門家の育成を通して、人類の健康増進と生活の質(QOL)」の向上に貢献していきたい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。(文中敬称略)

建学の精神は「実学一体」

新潟薬科大学は、1977年、薬学部のみの単科大学として新潟市(現:西区)に開学。86年、薬用植物園五頭分園を阿賀野市に設置。91年、大学院薬学研究科修士課程、95年、同博士課程を開設。
2002年、応用生命科学部を新潟県新津市(現:新潟市秋葉区)に新設。「バイオの時代が叫ばれ、新潟市が進める新潟バイオリサーチパーク構想のコア施設として開設しました」。
薬学部も04年から段階的に新津市に移転、06年に完全移転。現在は両学部機能全てが新津キャンパスに集約されている。同キャンパスの隣接地には、リサーチパークを運営する「新潟市バイオリサーチセンター」本所兼研究所がある。
06年、薬学部が6年制へ移行。06年、高度薬剤師教育研究センター、07年、産官学連携推進センターを設置。10年、高大連携と保健・医療・福祉専門職による連携教育を統括する教育連携推進センターを設置。
15年、応用生命科学部に生命産業創造学科を新設。「主に文系志望学生を対象とした学科で、農業、食、環境(生命産業)における企画・開発・経営に優れた専門人材(プロデューサー)を育成するのがねらいです」。同年、JR新津駅東口に新津駅東キャンパス(愛称:新津まちなかキャンパス)を設置。
現在、2学部に1611人の学生が学ぶ。学生の出身地は、地元新潟県を中心に、隣接県、東日本の比率が高い。男女比は、薬学部は、ほぼ同数、応用生命科学部は男子65%、女子35%となっている。
学長の寺田が大学の理念を語る。「生命の尊厳に基づき、薬学及び生命科学両分野を連携させた教育と研究を通して高い専門性と豊かな人間性を有する人材を育成。人々の健康の増進、環境の保全、国際交流や地域社会の発展に貢献していきたい。地域貢献では、『実学一体』で寄与していきます」
学部の学び。薬学部薬学科。「臨床現場で即戦力となる薬剤師と、医療人としての自覚を持って将来の生命科学分野をリードしていく第一線の研究者を育成します。開学から40年。これまで約4500人の薬剤師を輩出してきました」
六つの特色ある薬学教育を施す。①入学前教育=高校生に「医療・薬学講座」を開催②ICT活用教育=同大HPから授業の録音ファイルや講義資料を確認できる③薬剤師生涯教育=現役の薬剤師に、先進的な内容の講座などを提供。④多職種連携教育=医療専門職を目指す他校の学生と、チーム医療の重要性を学ぶ⑤社会連携教育=近隣住民を対象とした「健康・自立セミナー」を実施⑥アドバンスト教育=学生参加型や課題解決型などの学習方法で、人間性と社会性を備えた薬剤師を目指す。
応用生命科学部。「研究・教育を通して、実践力をもって将来に活路を見いだせる人材を育成します。ボランティア活動の単位化も進めていく予定です」。応用生命科学科と生命産業創造学科の2学科。
応用生命科学科は、理系で、食品科学、バイオ、環境科学、理科教職の4コース。「生命科学の知識を深める実践的な講義や実習で、食品・バイオ・環境分野の最先端の研究に取り組んでいます」
理科教職コースでは、今年、2期生を輩出した。「教員希望者11人全員が4月から教壇に立っています。本年からは中学、高校理科一種免許の他に小学校の教諭免許も取得可能となりました」
生命産業創造学科は、文系で、食品、農業、環境分野において、フィールドワーク(実践)と専門的な知識(理論)を習得する。「海外語学研修を必須化し、世界的な視野を持ち、地域に貢献できる人材の育成をめざしています」
教育研究面では、同大の「健康を支援する地域産物のブランド化のコアとなる大学~地域農産物ブランディングプロジェクト~」が文科省の平成29年度私立大学ブランディング事業に選定された。
「薬学部が新潟特有の薬草を利用する漢方・生薬プロジェクトを、応用生命科学部が新しい品種の六条大麦を使ったプロジェクトを、それぞれ立ち上げ、健康を支援する地域産物のブランド化に向けて研究開発に取り組んでいます」
アドバイザー制度について。「勉学上の疑問や問題点、生活面での悩みを気軽に相談できる制度。1年次から3年次の学生は、数名ずつのグループに編成、専任教員1名がアドバイザーに就きます。学生と教員との良好な関係づくりを重視しています」
就職力。薬学部の就職率は100%(2017年3月卒業生実績)「1~4年次は、基本となる薬剤師業務や医薬業界の紹介、卒業生による薬剤師職種別セミナーなどを実施。5、6年次は、病院や薬局などの企業の人事担当者を招き就職企業説明会を実施します」
応用生命科学部は、98.1%(同)。「低学年から少人数のキャリア教育を実施。3年次には、多くの就職セミナーを通して就職活動に対する心構え、SPI対策、模擬面接など実践的な指導を行っています」
地域貢献。産官学連携推進センターを中心に全国の企業や地域社会との連携を深める様々なプロジェクトを推進する。新潟市秋葉区とは、産官学連携による「商店街の活性化」などまちなか活性化活動を積極的に推進している。
生命産業創造学科の「地域活性化フィールドワーク演習」は、地域連携に結びついている。「地域全体を学びの場ととらえ、大学の外に出て社会と接し、大学で学んだ知識を使って体験しながら学んでいます」
金升酒造(株)と六条大麦の新品種「ゆきみ六条」を使って焼酎を開発。「越後麦焼酎 六条」のブランドで販売。「風味がよく、とても飲みやすいと好評です」。さらに、農福連携により「ゆきみ六条」を使ったクッキーやケーキの商品開発も実現させた。
大学のこれから。「これからも、新潟県唯一の薬学部と応用生命科学部とが密接に協力しながらライフサイエンスを発展させるというユニークな特徴を生かしながら地域社会と連携していきたい。病気を治し、健康を維持し強化させる意義深い人類共通の願いを実現するために、研究面も強化し、研究成果は、大学内に留めずに、新設の生命産業創造学科によって事業化も検討したい」
同大は、学校法人新潟科学技術学園が運営、傘下に新潟工業短期大学と新潟医療技術専門学校がある。この統合も視野に入れている。
「2、3年以内に3校を統合、1法人1大学にしたい。統合化によって、学校運営の効率化、経営基盤の強化と『生命』をキーワードとする教育研究上の相乗効果を高め、実学一体による地域貢献に邁進したい」。建学の精神である『実学一体』を強調するのだった。